【インタビュー】Vol.2 早川恭子役-富田靖子さん

6月17日 更新

――クランクインの時、現場に富田さんがいらっしゃった瞬間に「あっ、恭子さんだ!」と思いました。その恭子さんの役作りについて教えてください。
 まず、衣装合わせの時に、初めて律役の高杉さんにお会いしまして。先に私が衣装合わせをしている時に、いくつかの候補の中から(律からのプレゼントの)勝負スカーフをどうしようという話になって。自分の中で「これがいいな」っていうのはあったんですけど、ドラマの中で度々出てくるものなので、律に選んでもらおうということになりました。
 そうしたら、今ドラマの中で使っている落ち着いたかんじのものを選んでくれて。「律は、これを選ぶ子なんだ」と、私はそこから律と恭子の関係を作っていきました。 

――高杉さんが、顔合わせの日に、富田さんと故郷の福岡の話で盛り上がって、そこで家族の空気感が出来たとおっしゃっていました。やはりそれは距離感を縮めることを意識されて?
 特に意識はなく、たまたま高杉さんと私が同じ故郷だったという、それだけだったんですけど。「福岡にはこんないい男がいたんだ!」とビックリして。九州男児というイメージを高杉さんからは受けていなかったので、「ええっ!今は、こんないい男がいるの?」って、テンションが上がったんです(笑) 「福岡県人会に、あなたも入らなくちゃ!」と言っておきました。
――スタジオ撮影の初日に、早川家のセットの中、キッチンでエプロンを掛ける位置を探されている富田さんの姿を目撃しました。それも恭子さんなら、どう動くかを考えてのことですか?
 この先、芝居に必要なことを確認したんだと思います。蛇口はどことか、クッションはどんな大きさなのかとか、これから無意識にやるであろうことの確認をしたら、「家ではエプロンどこにしまうんだろうな?」と疑問に思ったんですね。私はエプロンを外に出すのがあまり好きではないので、ぐちゃぐちゃっと畳んで入れちゃうんですけど、監督は「見える位置に掛ける」とおっしゃったので、その位置の確認を。その家のやり方とか、なんでもないどうでもいいことを、だいたい初日にこそこそっとやってみるんです。自分の中で芝居を作るにあたり、台本読む時に絵が出てくるので、蛇口の握り具合いとか、何かを掛けるとか、クッションとかソファーの質感とか…そういう感触が残っていると、台本が読みやすいんですよ。
――そうやって積み上げて作っていった“恭子さん”は、どんな人物になりましたか?
 恭子は「たまにはカラオケ行って、大きい声出すのもいいんじゃない?」という感じの女性ですね。芯が強いし優しいけど、抱え込みがちで、いつそれがどうなるのか少し危ういところもあるから、もし私が恭子の友達だったら「カラオケ行こうよ!」って誘うと思います。会社の中では、ヒマワリみたいな存在で、「一緒に行こうよ」と言ってくれそうな春奈(中島陽子)がいたので、「なるほど、同僚にはちゃんとこういう方がいるんだな」と思いました。

――シリアスなシーンも多いですが、現場の様子はいかがですか?
 実は、ドラマの中で衝撃的なシーンであればあるほど、撮影前にみんなでゲラゲラ笑っています。だいたい、うちの弟の嫁・みつ子さん(芳本美代子)がね、火に油をバーンとかけてくるから。それを、「どんだけ油注ぐんだ!」っていいながらワッハッハと笑って、みんなでみつ子さんにツッコミをしてから芝居をしています。グッと入り込むというより、みなさん上手に切り替えができるので、大笑いした後に泣く芝居をやってみたりと不思議な空間ではあります。本当の家族ではないですが、より家族に近い関係性をお互いに作れているので、そういうことができるようになったんですね。本当にみつ子さんの存在は大きいです。彼女のおかげで、鈴井家・早川家は笑いが絶えないし、みんなも本音が言えるんです。
――富田さんが実際に母親になられて、母親役への意識は変わられましたか?
 日常のこと、例えば洗濯物をどう畳むとか、どの食材をどう切るとか、そういうことが監督と口頭での簡単な打ち合わせでできるということが利点ですね。そういうところで自分の家族と暮らしてきた何年間かが役に立っていると思います。

――撮影でお忙しい中でも、家事をやられているそうで。
 やらない時は「食べに行ってくださーい」とか言ってやらないんですけど(笑) やれる時はできるだけやるようにしていますね。やれば手の抜きどころが分かるし、何にどのくらいかかるかも計算できるので。今は、時短レシピもいっぱいありますから。
――共演されての高杉真宙さんの印象は?
 なんかほめ過ぎるのも恥ずかしいし、ほめないのもウソだし、難しいな~(笑) このドラマの主役をやるということは、みんなが絶対的に「彼はすごい」ということが分かっているからお話がいったんだと思います。それを、一緒に仕事をしていくうちに、私も「なるほど!すごいんだ」と実感しています。これはもうどうしようもないことなんですけど、“生まれ持ったもの”っていうのがあって、そこはかなわなくて。とにかく、「すごいものを持っちゃってんだよね!」ということです。この先、いろんなステキな俳優さんと出会って、もっともっと伸びていく人だと感じています。今、私が言えるのはここまで(笑)

――最後に、この作品を通じて伝えたいことと、視聴者の方にメッセージを。
 家族の愛情や優しさ、当たり前のことを当たり前に伝えられたらいいですね。見終わった後に、見てくださった方がほんのり笑顔になる作品となることを心から願っています。

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