本作がより深みのある作品になったのも、北山を演じる渡辺さんが若手メンバーをしっかり支えてくれたからこそ。視聴者の皆さんにもそれは伝わっているのではないでしょうか。
物語の終盤。渡辺さんにこれまでのことを振り返ってもらいました。
- ――撮影は3カ月間、ほぼ休むことなく続きましたが。
- 「こんな密度の濃い3カ月を過ごしたのは初めてです。本当に、ドラマでここまでの“濃さ”は初の経験ですね。撮影が始まった当初は、何だか先が全然見えなくて。それは中盤までずっとそうでした(笑)。ストーリーも先が全然読めなかったですからね」
- ――ここに来て、北山の逮捕、という展開には驚きました。
- 「皆さんには、北山がいない『たんぽぽ農場』のシーンをぜひ見ていただきたいですね。監督から聞いたんですが、北山がいないことで、普通なら北山が言うような締めのセリフを子供たちの誰かしらが言わなくちゃいけなくて、そこは結構大変だったらしいんです。でもね、そこで今まで以上にリーダーシップを取ろうとする子がいたり、どうにかシーンをうまくまとめようと努力する子がいたり、この3カ月間でみんなかなり大人になっていたそうです。僕はなるべく現場に顔を出さないようにしていたので、第9週がどんな風に仕上がっているのか、放送をすごく楽しみにしています」
- ――撮影が始まった当初、「子供たちと“ガチ”で芝居が出来ることが楽しみ」と語っていましたが、いかがでした?
- 「前にも話しましたが、彼らの役者としてのポテンシャルの高さはすぐに分かったので、本当に“役者同士”として作品を作っていけました。演じる役がそれぞれに問題を抱え、気持ち的にヘビーになることもあったと思うんです。もし僕がみんなのことを“子役”として見ていたら、何かしらのアドバイスをしたり、気遣ってしまったりしたかもしれませんが、みんな“役者”でしたから。どんなシーンでも『ここはこうしようぜ、ああしようぜ』と相談しあい、時には『それは出来ません』なんて言われたこともありましたよ(笑)。それから、みんなとは明るいシーンを撮るときが本当に楽しかったです。プロデューサーからも『重いテーマを描いている作品だから、明るい場面や楽しい場面は思いきり明るく演じて下さい』と言われたので、もうノリノリで(笑)。アドリブ満載で演じたんです」
- ――北山という人物に対して今はどんな感想を持っていますか?
- 「“先生”というポジションでないところで子供たちと接しているから、すごく子供たちと目線が近いんですよね。それは新鮮であり、楽しかったです。北山は間違ったことをしている、と思えばそれをしっかり伝える人物ですが、自分自身も何かにつけ迷うし、揺れもします。有里から『お父さんの子供たちを更生させようとする方法は間違っているんじゃない?』と言われ、自分でも心の片隅で『そうかもしれない』と思っているから動揺したり。その人間味は演じ甲斐がありました」
- ――重いテーマを扱った本作に出演した感想を改めてお聞かせください。
- 「実際にニュースでも連日のように子供が当事者になってしまう痛ましい事件が伝えられていますが、そういうタイミングに制作サイドはまっこう勝負で難しいテーマに挑んだと思います。今は昼の枠の作品だからこそ出来たこと、伝えられたことがあったんじゃないかと思っています。子供たちを含め、登場人物一人ひとりが抱えている問題についても、2カ月という短い放送期間でもかなり踏み込んで描けたんじゃないでしょうか」
- ――では、北山を演じたからこそ、思っていることは何かありますか?
- 「これは途中で気づいたことなんですけど、生きていく上で一つひとつの壁を乗り越えていかなきゃいけない、ということは誰でも同じじゃないでしょうか。僕が社会問題で言えることなんて本当にないですけど、犯罪を犯してしまった子も、家族の問題で家庭に戻れない子も、普通に日々を生きている人も、さほど変わらない気がするんです。だって“普通に生きる”といっても大変なことっていっぱいありますよ。そのことに気づけると、人を偏見の目で見ることも減っていくんじゃないのかな…」
- ――でも“先入観”を取り払うことって難しいですよね。
- 「そうなんですけど、僕は自分に振り返ってみると、一緒のような気がしたんです。おかげさまで自分自身も家族も幸せに暮らしてはいますけど、それでもこれまでの人生、いろいろありましたよ。どんな人でも深さの違いはあっても“傷”ってあると思うんですよね。そういうことが分かると人は他人に優しくなれると思うんです。目線をちょっと変えるだけで、きっと世界って変わっていくものだと思います」
- ――撮影はハードだったと思いますが、昼ドラに出演しての感想を聞かせて下さい。
- 「やっぱりかなりの量を撮っていかなければならないから、例えばその週で“キモ”になるような重要な場面を撮っても余韻に浸る時間なんてないんですよね。それはなかなかきつかったですよ。ただ、手を抜くことは一切なかったです。それは僕だけでなく、他のメンバーもスタッフも。やろうと思えば、早く撮影を終わらせることっていくらでも可能ですけど、良い物を視聴者の皆さんに届けたい、と思ったら、当然時間はかかるわけですよ。そこが踏ん張れるかどうかの問題で、この作品ではちゃんと踏ん張れたと思っています。本当にやって良かったですよ。こういう作品ならまた頑張りたいですね」
- ――農業シーンの思い出も聞かせて下さい。
- 「今年は暑さが厳しかったですからね。日焼けもかなり(笑)。てっちゃん(榊原徹士)なんかもかなり焼けましたよね。でも今回は畑という場所にかなり助けられたと思います。実家が兼業農家なので、畑仕事の苦労は分っているつもりですけど、畑で撮影をしていると、周りの畑で本当に作業されている方もいらっしゃったんです。音声さんの都合上、本番のときは作業を中断してもらい、それが申し訳なくて。畑といえば、あまりに日差しが強力で、立ち上がるたびクラッときたことが1度だけありました。てっちゃんとの二人のシーンでしたが、彼も僕と同じだったそうですよ(笑)。あれはきつかったな~」
- ――最後にその榊原さんや、連ドラ初主演だった広瀬アリスさんら若手に、渡辺さんからメッセージをいただけますか。
- 「“一緒に頑張ろうぜ”ってことだけですね。一度や二度、失敗することもあるでしょうが逃げずに続けて欲しいし、頑張ろうという気持ちも持ち続けて欲しいと思います。でもまあ、それはどんな仕事でも同じですよね」




