――九兵衛は気難しいものの、実は暖かい心を持っているという人物ですが、その゛偏屈゛な役柄を演じられたご感想は?
うーん、偏屈ねえ…。初めのうちは九兵衛をやっていると、自分の性格がどんどん偏屈なイヤな男になってきて、ホント我ながらイヤになっちゃいましたよ(笑)
でも『大女将』に諭されたり、『奈緒子』の真心にふれたりしてほっと気持ちが楽になりました。実は自分がほっとしたのではなく、九兵衛が楽になっていたのですね。気持ちが楽になると、とても爽快で実に豪快な気分になりました。そこら辺が、さすが九兵衛さんの大物たるゆえんだったんですかねえ。
――樋浦さんが考える九兵衛像や、役作りに関して気を付けたことなどがあればお聞かせください。
陶芸家って、美術家とか芸術家っていうより職人さんっていうイメージが強いです。その点、僕にはうってつけかなと思いましたね。気難しい性格なんかはそれこそ芝居のしどころだし。
ただし、人間国宝にはまいりました。偉い人だよね。さてどうしたら良いのかな?自分とはほど遠いし。というより天と地ほど違いそうだし。なによりも威厳かなと…。
でもこれは最初から杉村監督に助けて頂けましたね。自信を持て…と。
――撮影中の印象深いエピソードについてお聞かせください。
『漬け物やのばば』役の左時枝さんとは、デビューしたての頃、お互いの青春時代に共演が有りました。『ばば』との思い出話は、芝居を超えてなんだか甘酸っぱいものでした。
皆さん本当に楽しげな一座で、ゲストの僕としては羨ましいかぎりでしたよ。撮影日に羽田さんの誕生日が有って立ち会えたりして、とても幸せでした。
――ご自身が出演されている中で、今回もっとも“お気に入り”のシーンは?またその理由もお聞かせ下さい。
1シーンというのは難しい、2シーンありますね。1つは茶碗を割られて、大女将達に謝られ、怒りそして落ち込むシーン。もう1つは金継を施した茶碗を大女将に示され、諭されるシーンです。まあ、当たり前ですがストーリーの山場でしたから…。自分じゃ気持ち良く出来たつもりですし…。
役者としては、自分が演じる人物になって感情を大いにうごかせる時が実に楽しいですね。
――最後に、番組をご覧の皆さまへメッセージをお願いします。
最近は映画や海外ドラマの“日本語吹替え”等の仕事が多く、久しぶりのスタジオドラマへの出演でした。お客様そっちのけで楽しんじゃった気が致します。これは謝らなきゃいけませんね…。すみません。でも、皆様も大いに楽しんで下さいね。