今回、小説「ゆっくり歩け、空を見ろ」(そのまんま東 著/新潮社・刊)をドラマ化。原作は、そのまんま東氏が自分の生い立ちを赤裸々に描いた“自分史”です。しかし、それは単なる自叙伝ではなくファンタジックな寓話形式をとっています。
愛人の子として生まれ、8歳の時に実父と生き別れ、母の再婚に伴って養父に育てられた主人公が、自分の不始末で起こしてしまったスキャンダルの渦中に巻き込まれ失意のどん底に落ち込んだ時、ふと、33年前に生き別れた実父に逢いたくなります。そして、その生き死にさえ定かではない父を訪ねて旅に出ます。それはまさしく“自分探し”の旅でもあるのです。
南九州の美しい風土の中で、自分の忌まわしい記憶と楽しかった少年時代の想い出とが交互に錯綜していきます。
昭和39年、英夫7歳。実父は、週末以外は家にいた。週末だけは本妻のもとに帰っていたらしい。不動産業を営んでいて地方都市の名士であり虚勢を張って生きてきた実父。やがて、家族を見捨てて家を出ていってしまう。
英夫は、そんな実父の北村英次に対する憎悪の念をいだいていた。そして、なりふり構わず、幼い子供たちを育てる事に夢中だった女丈夫な母。そもそも母はなぜあんな男と生活を共にしたのか。なぜあんな男の子供を生んだのか…。
スキャンダルから行き場を失い、失意の中で実父探しの旅に出た主人公。彼は、幼いころに自分たち家族を捨てた実父の記憶をたぐる中で、幼い子供たちをかかえながら、日々たくましく生きぬいた、母との濃密な時間を思い返します。
そして彼の周りで懸命に生きるたくさんの人々も…。
このドラマは、彼を突然出現した“サプライズのヒーロー”として描くのではなく、自分の存在理由を実証するために努力を重ねて、ついには知事の座を勝ち取った、大衆の中の一人の人間のヒューマンドラマとして描きます。

