二百十六、
2012/1/13
言葉の変化
2012年が始まりました。今年も新しい言葉や表現がいろいろ登場することでしょう。
新たに登場する言葉のうち「流行語」と呼ばれるものは、ゆく川のうたかたのように現れては消えてゆきますが、いつ誰が使い始めたのか定かではないけれど、いつの間にか社会に定着してしまった、という言葉も少なくありません。
04年11月の小欄62話で「口どけ」について<「雪解け」「霜解け」のように口がとけてしまいそうだが、やがて人々の語彙に加わり、辞書にも採用されそう>と書きました。実際にその後もCMや料理リポートで頻繁に使われて、多くの人の語彙となったようです。手元にある辞書では、06年版大辞林に【食べ物の溶けるような口当たり】と出ていました。
「口当たり」といえば、これも料理リポートが使い始めた「食感」も、いつの間にか定着してしまいました。「ショッカン」で辞書をみると、92年版新明解では「食間」「触感」「食管」のみですが、05年版広辞苑(第五版)には「食感」がありました。番組でリポーターが「この食感が最高!」などと言うのをよく耳にします。この勢いでは伝統的な「口当たり」は淘汰されてしまうかも知れません。
「夜ご飯」という言い方をよく聞きます。家庭の「夕食」をさす言葉は「晩ご飯」だった筈ですが、「バン」という濁音を野暮ったいと感じるのでしょうか。「夜ご飯」という人が増えました。そもそも、「晩」は【寝るまでの夜のはじめ】であるのに対して、「夜」は【日没から日の出まで】ですから、「夕食」の意味ならやはり「晩ご飯」ではないでしょうか。「夜食」との区別も必要です。男性は「晩めし」と言ったりもしますが、これが「夜めし」ではサマになりません。
もうひとつ、料理に関して気になるのは数え方です。「この店自慢の一品」などを「イッピン」という人が結構います。聞いただけでは「逸品」と間違えそうです。料理の品数は「ヒトシナ・フタシナ…」と数えて欲しいですね。
誤用であっても新味があってつい使ってしまう言葉は、社会にゆっくりと浸透していきます。それが「言葉の変化」なのでしょうが、そのために伝統的な言葉を失うのはもったいないことです。新しい言葉には、今年も慎重に対応しようと考えています。