12 林丹丹さん(櫛山さくら役)

――撮影当初は、いつもヘトヘトでした(笑)

  さくらは幼くてまだ何もわからない頃にお母さんと引き離され、3歳まで実の両親からの愛情を受けていない分、成長してからも心のどこかに寂しさと不安があったのだと思います。明るく無邪気な一面もあれば、自分に自信が持てずに卑下し、苦しむ一面もあったのだと思います。さくらの喜怒哀楽が激しい性格は実際の現実の私とはオーバーラップしないので、完全にさくらを演じきる部分で表現しようかと悩みました。そんな時に監督から、『がっちり役作りをするというよりも13歳の少女のストレートな感情をそのままだしらいいよ。』とアドバイスいただいて、プロデューサーさんからも、『一つ一つのシーンで一番強調すべき感情を前面に出すことが大切かな』とアドバイスいただきました。それがとても参考になっています。
 撮影が始まってからは、ヒステリックを起こし、泣き叫んだり、でも次の瞬間にはテンション高くはしゃいだり…、そんな起伏の激しいさくらに、私はいつもパワーを使い果たしていました(笑)
 特に初日は感情をむき出しにするシーンが多くて、これが連日続いた時の体力の配分を考えなくては・・・と少し思ったりもしました。けれど、さくらの素直な気持ちを視聴者の方々に伝えたくて、自分では精一杯、演じたつもりです。 撮影の中盤ぐらいになって考えたのは、さくらが心に傷を持ったまま一人の大人の女性へと成長する姿、その変化する演技です。ただ話し方や仕草が女性らしくなったのではなく、さくらの13歳の時の個性を生かしながら演じたかったので、監督ともたくさん会話をさせていただきながら演じ、とても経験になりました。成人してからでも監督が、『ここは感情を出し切って』とか『もっと気持ちの強さを強調して』と、さくららしさを出すためのアドバイスをいただいたおかげで、だんだん迷わずに演じることができるようになりました。

――お父さんが初恋

  ドラマでは描かれていない13歳から20歳までの7年間、さくらは父との別れがとても辛かったので、その記憶を封印して、辛い部分を隠して明るく振舞ってきたと思うんです。でもさくらを支えてきたのは、彼女の心の大部分を占めていたお父さんとの思い出だったはずです。さくらにとってのお父さんは、頼れる父親でもあり、それ以上に憧れの存在で、恋心を抱いていました。目の前で起きたお父さんと明美さんとの心中は、さくらにとって一つの大きな恋の終わりだったんじゃないのでしょうか。思春期に、大好きな人を失うという壮絶な体験をしているので、さくらは心の隅に影と寂しさを持って育ったんだと思います。だから大き くなって周りの男性の意識を引こうとしたのはそれを埋めたかったというのもがあるのではないでしょうか。しかし、お父さんの生き写しのような宅間さんが現れた時、大きな衝撃を受けて、そして本能的に向かっていったんだと思います。

――初めての挑戦

  私にとって13歳から20代までの長いスパンを演じるのは、今回が初めてのことですのでお話を聞いた時は、驚き私で上手く演じられるのかなぁ、と不安にもなりました。けれども、おさげのカツラを付け、中学生の制服を着た自分を鏡で見ると、一気に気持ちも若返りました!
  母親と好きな人を巡って張り合うところや母親に傷つくことを言っていて、現実ではあまり考えられません。セリフ自体に力があるので、力まずに演じました。その方が、さくらが宅間さんに対するまっすぐさにインパクトが出ると思いました。観て下さっている方々にそれが伝わると嬉しいです。
  脚本の中島丈博先生の作品の中では、以前に『牡丹と薔薇』を拝見しました。そのストーリーも毎回大きく展開していくもので、当時中学生で私には、少し理解できない部分もありましたが、しかし今は、はっきりとしたセリフや激しいストーリは、人間の本質を表現しているのではないか、と私なりに解釈しています。こうした人間の率直な感情は、普段生活していては出さないですが、本当は人が胸の内に秘めている部分だと思います。そんなまっすぐ気持ちは、時に激しく、壮絶な行動に出るかもしれないけれど、そこに人間らしさや魅力があるんだということを、今回、中島先生の作品に出演させていただいて気づかされました。とても ありがたいことですし、私は『さくら心中』という作品の、登場人物の一つ一つのキャラクターが自分に正直に生きているのところが大好きです。さくらを演じさせていただいて自分の中で役者としての幅が広がればいいなあ、と思っています。 

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