新幹線に無料で乗れる国会議員の“特権”を悪用し、岐阜県の元参院議員の男が現職の国会議員になりすまして、新幹線のグリーン券をだまし取ったとして逮捕されました。その杜撰な手口と呆れた動機とは…。

(リポート)
「元国会議員の男が任意同行を求められたのは、名古屋駅の新幹線のホーム上でした」

 8日、愛知県警に逮捕された元参院議員の山下八洲夫容疑者(79)。東海道新幹線のグリーン席のチケット2枚をだまし取ったなどの疑いが持たれていますが、その手口はあまりに杜撰なものでした。

 警察によりますと、事件があったのは4月27日。JR東京駅の窓口を訪れた山下容疑者は、申込書とともに通称「JR無料パス」といわれる国会議員の鉄道乗車証を提示。

 しかし鉄道乗車証は、自分が国会議員時代に与えられた、とっくに有効期限が切れたもの。さらに申込書には、自民党の現職国会議員の名前を勝手に記入していたといいます。

 捜査関係者によりますと、この時“国会議員バッジ”のようなものも身に着けていたという山下容疑者。なぜ犯行が発覚したのでしょうか。

 山下容疑者は、東京=名古屋間の往復切符を申請したものの、実際に手渡されたのは2枚とも名古屋行きのチケット。

 誤りに気づいたJR東海が、申込書に書かれた現職の国会議員側に謝罪の連絡をしたことで、事件が発覚しました。

 2010年までに衆院議員を4期、参院議員を2期務め、現在は立憲民主党岐阜県連の常任顧問を務めていた山下容疑者。調べに対して容疑を認めた上で、その動機についてこう供述しています。

<山下容疑者>
「議員時代のことが忘れられなかった」

 長年国会議員を務め、地元でも影響力があったという山下容疑者の逮捕。

 立憲民主党岐阜県連は急きょ会見を開きました。

立憲民主党・岐阜県連の渡辺嘉山代表:
「どんな経緯であれ、とても許すことができない不正なこと。心から皆さんにお詫びを申し上げたいと存じます。それ以上に、悔しくて悔しくてたまらない」

 岐阜県連は、山下容疑者を常任顧問から解任するとともに、立憲民主党を除籍とする処分を決めました。

 捜査関係者によりますと、調べに対し「今回が初めてではない」と供述している山下容疑者。

 警察は、以前から犯行を繰り返していたとみて余罪を調べています。