古本前衆議院議員は14日、31日投開票の衆院選に出馬しないことを表明しました。

 古本さんの選挙区は「愛知11区」で、トヨタ自動車のおひざ元・豊田市とその隣のみよし市が選挙区となっています。有権者数は9月1日現在で、およそ38万5000人となっています。

 愛知11区は小選挙区制度が始まった1996年以降、8回行われた衆院選挙で、自民党は一度も勝ったことがない選挙区です。

 その相手は民主党などいずれも全トヨタ労連の支援を受けた候補者でした。これまでに伊藤英成さんと古本さんの2人がいますが、自民党を相手に少なくとも約3万票以上の差をつけて圧勝しています。

“連合の中核”自民との対立避ける…全トヨタ労連が支援し愛知11区で6回連続当選の古本氏 衆院選出馬せず

 古本さん自身もトヨタ自動車出身で、連続6期で勝利してきたベテラン議員で、次の衆院選に向けても準備を進めてきました。

 そんな中での解散当日の不出馬表明に、関係者からは驚きの声もあがりました。

 労組の手厚い支持を得て、かつては「民主王国」とも呼ばれた愛知県ですが、政治の地殻変動が表れました。労組は自民党とは相容れず、旧民主党系を支援するものというこれまでの図式が変わった象徴的な出来事と言えます。

 古本さんは全トヨタ労連の組織内議員、組織内候補者という立場の方で、いわば組織の”代弁者”です。

 全トヨタ労連をはじめ大きな労働組合になると、企業内の労使交渉だけでは解決できない大きな課題、例えば働き方改革のため労働基準法の改正に取り組むなどの役割を担う人として、組織の中から候補者を立てて議員を送り出しています。

 今回の不出馬に驚きの声があがったのは、労組の判断もあった点にあります。

 9月1日に、全トヨタ労連の鶴岡光行会長が愛知県の大村知事にカーボンニュートラルに向けた要望書を手渡した際には、古本さんや立憲民主、国民民主の議員のほかに、自民、公明の議員も同席していました。

 全トヨタ労連は、これまで旧民主党系の政党と深い関係にありましたが、最重要課題ともいえるカーボンニュートラルに向けた取り組みは、超党派で進めたいという労組の強い意志が表れています。

 これは、野党だけに頼っていてもダメだ、与党との連携を強化すべきだと考えを改めたということで、自分たちのテリトリーである愛知11区で自民党の候補予定者がいるなら、敢えて古本さんを送り出して対立するのはやめようとなったわけです。

 立憲民主党をはじめとした旧民主系の支持基盤の労組、その中でも傘下におよそ36万人の組合員を抱えるとされる全トヨタ労連が『自民との対立をやめた』というのは、他の選挙区の活動にも大きく影響するとみられます。

 愛知11区に限らず、組合員や関係者は愛知県内を中心に広く住んでいます。

 トヨタ系の労組の選挙活動は、かつては組合員に投票に行ったかどうかを確認するため投票済み証を提出させるなど、きっちりと行うことで知られています。

 それが、もし投票行動に縛りをかけなくなるようなことがあれば、旧民主系の候補者にとっては手痛い打撃になりそうです。