東日本大震災から11年が経ちます。名古屋市港区の「名古屋港ガーデンふ頭」を訪れる人たちを取材すると、11年前のあの日を教訓にする人々の姿がありました。

■名古屋港周辺の津波の高さは最大3mに…近い未来に発生する予測の「南海トラフ巨大地震」

 水族館をはじめ、展望室や南極観測船などがある人気の観光スポット「名古屋港ガーデンふ頭」は、地元の人にとって憩いの場です。

【画像20枚で見る】押し寄せる津波は最大3m…南海トラフ巨大地震に備える名古屋港近くの人々

地元の男性(62):
「コロナで幼稚園が休園になったので面倒をみています。船が来ると喜んでいますよ」

地元の女性(30):
「水族館(子供が)生まれて初めて。楽しかったね」

別の地元の男性(66):
「毎日同じところだけど、毎日違った感じ。感動しながら歩いています」

 2022年1月に、国は「南海トラフ巨大地震」の発生確率が「40年以内に90%程度」という新たな情報を公表。名古屋港周辺で発生する津波の高さは最大およそ3mとされています。

■向かいのマンションの9階にある知人宅への避難を想定…東日本大震災を境に防災意識が変わった男性

 午前9時。ガーデンふ頭の東側にある公園では、犬と散歩する人の姿がありました。渡部三十男さん(78)は、約40年前から港の近くに住んでいます。防災について聞くと…。

渡部さん:
「津波警報が出たら、絶対(海辺に)行かない。どう生き延びるかは、日頃からシミュレーションしとかないかん」

 渡部さんは、ガーデンふ頭から北に1.5km離れた一軒家で、奥さんと暮らしています。津波の「日頃のシミュレーション」について聞きました。

渡部さん:
「ここ(自宅向かいのマンション)の9階で、友達がおるもんで。俺がもし仕事でおらんときは、奥さんだけエディ(愛犬)を連れていくように」

渡部さんの妻(66):
「ワンちゃんもいるし、主人は年齢が年齢だから走っていくこともできないし。たぶん車も浸水して動かなくなるから、やっぱり近くでないと不安」

津波が起きたら、向かいの知人宅のマンションへ避難を想定。避難リュックには、乾パンやマスクなど14点。

そして犬用にも、タオルや毛布、3種類の非常食を準備しています。11年前のあの日を境に津波への意識が変わりました。

■屋上に避難するための階段も新設…東日本大震災を境に“津波を想定した避難訓練”を始めた幼稚園

 午前11時半。ガーデンふ頭の船着き場では、幼稚園の園児たちが、大きな船をバックに写真を撮っていました。

 ガーデンふ頭から北に1.5kmのところにある「慶和幼稚園」には、3歳から6歳までの園児およそ190人が通っています。この日、海抜マイナス0.4m地点にある幼稚園では、月に一度の避難訓練が行われていました。園児たちは、緊急地震速報の警報音が鳴ると一斉に机の下に身を隠します。

そして、防災頭巾をかぶって建物の外へ。

幼稚園の教諭:
「津波が来るかもしれません。今から上に移動します」

点呼をとって、高さ約9mの屋上へ。東日本大震災のあと、津波を想定した避難訓練を始めました。

幼稚園の教諭:
「地震が来たあとに、波が海の方からさぶーんときます。高い所に逃げます」

屋上では、イラストを使って園児たちに津波の恐ろしさを伝えます。この幼稚園では、東日本大震災の後に、屋上に避難できるように階段を取り付けました。

幼稚園の理事長の男性:
「園の避難訓練の形も変わった。(以前は)津波への意識が低かった。たまに地震があると思うんですが、あのときの記憶が出てくるので、意識を高く持ち続けることはできている」

11年前の震災に学ぶ教訓です。

■「社会全体でも意識が薄れている気がする」…東日本大震災の発生時は8歳だった男性

 ガーデンふ頭では、名古屋港管理組合の職員らが、高さ2.5mの防潮扉の確認をしていました。防潮扉は、街への浸水を防ぐために名古屋港全体に33か所設置されています。訓練では、巨大地震での停電を想定し防潮扉を手動で閉めます。

また、ガーデンふ頭の東側にある12階建ての「名古屋港管理組合 本庁舎」は、2012年に津波避難ビルに指定。津波や洪水の際には約2000人を収容できます。

 午後3時。デートスポットとしても人気のガーデンふ頭には、若い人たちも訪れます。

船舶機関士を目指す専門学生(19):
「(東日本大震災は)幼いときにあったから記憶があまりなくなってきて、社会全体でも意識は薄れている気がします」

大学院生(25):
「3.11の日、テレビを見たら水が上っていくのを見たのがすごく印象深くて…。非常時の意識は強まったけど、心に釘が刺さって、まだ抜けずにしっかり刺さっている感じ」

主婦(67):
「ショックでした。一応の避難用品は揃えてはいるけど、時々点検しなきゃと思いつつ、おざなりになっています」

 東日本大震災から11年。名古屋港ガーデンふ頭には、いつ起こるか分からない災害に備える人々の姿がありました。