「はこぶね」~伊勢湾台風・開拓者の60年~

9月29日(日)13時45分放送

ナレーター
宮本信子
音  楽
本多俊之

残されたフィルム

昭和34年9月26日、開局したばかりの東海テレビも台風の取材に奔走しました。当時の取材フィルムの中に、現在の愛知県弥富市の鍋田干拓の映像が残されていました。

鍋田干拓の人たち

鍋田は、戦後の食糧増産のため、国策として干拓が始まり、入植者の多くは、長野県の寒村などから集まりました。伊勢湾台風の襲来は、彼らが鍋田で初めての稲の収穫をする目前にした秋でした。堤防は決壊して、入植者318人のうち133人が犠牲になりました。
今も鍋田に暮らす伊東加冨さん(86)は長野県阿南町から入植。台風で同郷の仲間を亡くし、遺体の捜索や火葬をするなど悲しい体験をしました。今は三人の孫たちに囲まれて幸せに暮らしていますが、台風の記憶が消えることはありません。伊東さんは、ある決意を胸に持っています。それが、「はこぶね」の計画です。唐突に見えるか…、もの悲しく見えるか…、切迫して見えるか…。台風と開拓者の60年を通じて、災害国ニッポンの備えのあり方、そして記憶のつなぎ方について見つめ直します。

地域の記憶

東海テレビのアーカイブ映像には、当時の鍋田干拓で暮らす人々の姿が映し出されていて、彼らは今も同じ場所で日々の暮らしを続けています。
令和元年の秋、伊勢湾台風から60年の節目を迎えます。
遺族や被災者も年齢を重ね、記憶が薄れつつある中で、地域の記録を繋ぎ、後世に伝えていくことがメディアの責務です。