インタビュー

――「花嫁のれん」も第3弾ですが、これだけシリーズを重ねた作品において、役作りとはどういうものですか?
 「宗佑は僕自身に近いところがある役なので、宗佑の個性や性格というものを意識するよりは、奈緒子を始め周りの人との関係性を大切に演じています。今回で言うなら最初の頃、宗佑に石井君という秘書が付きましたが、彼とのやりとりで宗佑の新たな一面を表現できると思いました。さらに俊平くんや増岡さん、咲子ちゃんといった新たな登場人物たちとの間に生まれる空気感でこれまでとは違う宗佑というものが見えてきましたよね」
――冒頭の"デキる男"というか、優秀なビジネスマン然とした宗佑を演じての感想は?
 「まさに形から入ってましたね(笑)。髪型にしろ、スーツにしろ。何べんも失敗を重ねてきたからこそ、成功したことを家族にもアピールしたかったし、仕事の面でも取引先にどうすれば自分を大きく見せられるか、というような点にこだわっていると思うんですよ、宗佑は。『俺は生まれ変わったぞ』と自分で自分を鼓舞して頑張っていたのではないでしょうか」

――宗佑はツメが甘いと言うか、考えが足りないというか...。どこを改めればいいのでしょうか?
 「俯瞰で自分を見られないんですよ。多分、自分のしていることを一歩引いて見るのが嫌だと思います。何をしても失敗続きでうまくいってなかった頃は特にそうだったのでは。もし冷静に自分を分析したら、ただただ失敗続きの男だってことを認めなくちゃいけないし、それは絶対に嫌だから。だから常に我を忘れて夢中になれるものを見つけて生きてきたんでしょうね、これまで。基本的には優しいから人を思い遣れるし、心配もするし、他人にうれしいことがあればそれを自分のことのように喜べますが、自分に関してはこれまでの歩みを振り返ることなく、次はこれ、次はこれとやっていくだけ。落ちついて立ちどまり振り返れば、軌道修正も出来るんでしょうけど、それが怖いし、得意じゃないんですよ」
――今回は志乃がいつまでも甘やかしているから宗佑が大人になりきれない、ということを描いたシーンもありましたが、宗佑自身は志乃と辰夫、どちらに似ていると思いますか?
 「多分、母親似じゃないかな...。父さんは常に見守っている人で、宗佑の騒動の渦中にいるのは母親の志乃だと思います。母さんも宗佑のことが分かるから何とかしたいと思ってしまい、父さんは父さんで、大人になりきれない息子を情けないと思う一方で、どこか可愛いんですよ」

――宗佑が精神的に自立できないのは親が過保護過ぎるのか、それとも宗佑自身の問題なのか。
 「親の働いている姿を小さい頃から見ているから、グレたり悪い道に進んだことはないと思うんですよ。実家が旅館という環境で育ったのは宗佑にとっていいことだったんでしょうが、やっぱり母さんが甘やかした面も...(笑)」
――宗佑と両親の関係を津田さんはどう思いますか?
 「成功者を育てられる環境だと思うんですよ。実家が一流旅館というのは。そうなっていないのが惜しい(笑)。『かぐらや』はおもてなしの心を第一にしているので、人のために何をすべきか、ということを宗佑も自然と学んできたはずですが、母親が甘やかしてきたし、何しろ女将という一番上の立場ですから。本来家長であるはずの父親が女将である妻を支えるポジションだったのも、宗佑にどんな影響を与えているんでしょうね。僕にも息子がいますが、僕とカミさんなら慕っているのはカミさんですよ。日常の面倒を見ているのは母親だから。息子が僕のことを父親としてどう見ているのか分かりませんが、息子は僕からしたらかなり"父親似"で(笑)。宗佑も子供の頃、父さんが母さんに気を遣っているのを見て、夫なんだからもっと強く出ればいいのに、なんて思っていたんじゃないでしょうか。でも結婚してみると父親にどっぷり影響されていて、妻にいまひとつ強く出られないんですよね(笑)」

――宗佑は今回、妻を取るか母親を取るかという男性からしたら"永遠の問題"を突き付けられましたね。
 「僕もカミさんとおふくろの間に挟まれた経験があるので、いろいろ思うことはありますよ(笑)。僕自身で言えば、心に思っていたのはどんな状況でもカミさんの味方をしよう、ということ。もし僕が母親側についたら、カミさんは他人として孤立して、家の中に居場所が無くなってしまう気がして。僕がどれだけカミさんの味方をしておふくろの肩身が狭くなろうと、僕の母親というポジションは揺るがないですから。血の繋がりは切っても切れませんしね。でも"妻"はもともとは他人だし、もし離婚届を出したらそれで終わってしまう関係。ぐらつきやすいものならば、そこは守らなくてはいけないと思っていました。宗佑は結局答えを出しませんでしたね(笑)。結局、母さんもそれを許してましたけど」

――2年ぶりの「花嫁のれん」。宗佑も天国から一転...という状況ですが、久しぶりにこの作品に帰ってきて、いかがですか?
 「キャストの皆さんもスタッフの皆さんも親せき一同、みたいな感じですね。いかんせん、昼ドラはセリフの量、撮る量のことを考えるといつもホンワカしているわけにいかないことは現場にいる全員が分かっています。でもその中で羽田さんと野際さんを始め、誰もが相手を思い遣りながら楽しい現場になるよう心を砕いているんですね。例えば控室とかスタジオの前の待機場所とかで落ちつくことは珍しくないですけど、『花嫁のれん』はセットの中にいてもホッとするんですよ。それは幅広い世代のキャストが集まって、まるで本物の家族のような雰囲気を醸し出しているなのかもしれませんね。第1週で僕にかなり長いセリフを言う場面がありましたが、それでも本番前に変に緊張することもありませんでした。本番前、みんなでこたつに入って普通に会話をしていたのが良かったのか、まさにあのときも"家族"でした。家族の一員として何の違和感もなくいられる。それはこの作品ならではと言うか、『花嫁のれん』でしか味わえないものですね」

――そういえば、最初に津田さんと宗佑に似ているところがるとおっしゃっていましたが、どんなところが?
 「いい加減なところです(笑)。あと、弱いところかな...。へこみやすいし、逃げたくなるところ」
――逃げるところですか? 意外です。
 「いやいや。僕が俳優で食えない頃、俳優として芽が出ず、スパッと諦めた奴が周りに何人もいたんです。僕はそれが出来なかった。自分の進むべき道を逃げることなく考えている友人たちを僕は正視出来ずにいました。目を背けて演技に没頭していたら、どうにかこうにか"逃げ切り"で俳優としての道が開けただけのことですから」

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