2021年1月1日12時55分

あらすじ

2020年秋、白壁土蔵が並ぶ瀬戸川に優雅に鯉が泳ぐ頃。情報番組のリポーター役として主人公・池澤真理(29)は、約10年ぶりに岐阜県飛騨市、古川の町に帰って来た。

地元の酒蔵で働く父・征爾(58)に「女優として東京で成功するから、上京を許して欲しい」そう言って飛び出したのはいいものの、実際に演じた事があるのは、死体役か台詞のないエキストラ。そんな真理が番組のリポーター役に抜擢されたのは、あるミッションがあったから、それは…「コロナで中止になった『古川祭』の屋台が動いている映像を撮影する事」

酒蔵で杜氏となり、屋台の保存委員長にもなっている征爾を説得すれば、29歳がけっぷちの真理のドラマ出演が、番組プロデューサーとの密約により実現する事になっていた。

2020年の古川祭はコロナで中止となり、町の人々は祭りがない年に、なんとも言えない喪失感を抱き、本当は屋台だけでも曳いて回りたかったという声もあった。そんな状況で真理はミッションを果たすべく征爾に相談するが返事は「否」だった。

「屋台は町の誇りであり心意気。娘の頼みだろうと応じれない」という征爾に「これが最後のチャンスだから逃したくない」とすがる真理。それでも頑なに拒む征爾。そこには父から娘へ伝えたい、ある思いがあった。

「動」の起し太鼓と「静」の屋台行事からなる「古川祭」。「古川やんちゃ」とも呼ばれる心意気はただのあらくれものを指すわけではない。世代を超え脈々とつながる「不屈の闘志」は男女問わず、町の誇りであり、生き様でもある。

そして、世の中には成功する事よりも、もっと大切な事がある…。