毎週 土曜日 よる11時40分〜

教えて!ホーリツカンシューさん

最終回 「有罪率」

ある裁判所での光景です。

裁判長:「これから判決を言い渡しますので、被告人は、証言台の前に立って下さい」
被告人:「はい」
裁判長:「被告人は…」
検察官:「!」
弁護人:「!」

…さて、ここでなぜ、検察官と弁護人は裁判長の「被告人は…」という言葉で「!」となったのかおわかりでしょうか?
実は、裁判長が「被告人は…」と言ったら、それに続く言葉は「無罪」しかないのです。
裁判所の独特な言い回しで、被告人が有罪の場合は、「被告人を死刑に処す」「被告人を懲役20年に処す」など、必ず「被告人を…」という言葉が使われます。被告人が無罪であれば、「被告人は、無罪」となります。「を」と「は」の違いで、天国と地獄に分かれるわけです。
普通に暮らしている方にはあまり役に立つ知識ではないですが…(むしろ、それが役に立ってしまうような境遇は避けたいですよね!)。

さて、先ほどの裁判所の光景に戻りますと、なぜ検察官と弁護人は、「無罪」と知って驚いたのか?
最近はドラマなどにもなって皆さんもご存知かもしれませんが、日本の裁判では、無罪はほぼありえません
日本の刑事裁判の有罪率は、「99.9%」といわれています。
報道記者に聞くと、「無罪判決が出た!」は、それだけでニュースだそうです。どんな小さな事件であっても。それくらいまれなことなのです。
いったいなぜなのか?それは、検察官が、証拠が十分あり絶対に有罪にできると考えている事件しか裁判にかけないからです。証拠が不十分な事件は起訴されないということです。
もちろんそれは検察の強い責任感から来るものと言えますが、「有罪以外はありえない」という検察側の強い認識が、時に冤罪事件を引き起こしてきたのもまた事実です。 司法の強い抵抗から再審を勝ち取るまでに何十年もかかるケース、中には、三重の「名張毒ぶどう酒事件」のように40年以上再審請求を争った末に死刑囚が獄中死してしまった例もあります。
皆さんは、どう考えますか?正解はなかなか出ない問題ですが…新聞やテレビのニュース、また「家族の旅路」のような弁護士のドラマを見ながら、“司法のありかた”にも少し思いを巡らせて頂けると、我々としてもとてもうれしいです。

さて、「家族の旅路」もいよいよ最終回、まさに浅利弁護士が司法の壁に立ち向かうことになります。柳瀬死刑囚の死刑執行を阻止し、再審を勝ち取ることができるのか?ぜひご注目下さい!

「教えて!ホーリツカンシューさん」も今回で最終回です。
読んで頂いてありがとうございました!

扶桑第一法律事務所 弁護士 海江田 誠

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