二百十七、
2012/1/26
発令と発表
太平洋側では年末から雨が少なく、東京は35日間も連続で乾燥注意報が出されました。各局のニュースでよく聞いたのが「乾燥注意報が発令中」です。日常会話でも「大雨注意報(警報)が発令された」と言っているのを耳にします。でも、これは間違った表現なのです。
何が間違いかというと、気象庁が出す気象や津波に関する警報と注意報は、「発令」ではなく「発表」されるものだからです。気象庁のホームページを見ると【気象現象によって災害が起こるおそれのある時に「注意報」を、重大な災害が起こるおそれのある時に「警報」を発表して、注意や警戒を呼びかけます】とあります。災害への備えが必要だと予報を発表しているのであって、備える命令を発しているのではない、としています。
気象解説を注意深く聞いてみて下さい。予報士さんは「○○警報(注意報)が発表されました」と、キチンと「発表」と言います。
この気象警報・注意報を「発令」と組み合せる語感には根強いものがあり、辞書のなかには、発令の用法を【津波警報―】とするものがあります。新聞記事でも気象警報・注意報が「発令」となっているのを見ることがあります。
ところで、実際に発令される「警報・注意報」も存在します。それは自治体が出す「食中毒」「インフルエンザ」「光化学スモッグ」などへの警報・注意報です。これらは、自治体が「厳重に警戒・注意する」ことを住民に命じている、という意味なのでしょう。災害が予想される時の「避難勧告」「避難指示」も自治体の長が発令するものです。
多くの人が「警報」に「発令」を組み合せるのは何故でしょうか。私は戦争中の「空襲警報発令!」の印象が強いから、と見ています。戦後生まれでも、映画やドラマで見たり、活字で読んだりして刷り込まれたかも知れません。これはあくまで私見ですが、気象の警報・注意報を「発令」と言ってしまう現象は、これからも続くことでしょう。