二百二十九、
2012/8/2
五輪実況
ロンドンオリンピックの熱戦が続いています。毎晩、中継放送に釘づけという人も少なくないでしょう。
とにかくオリンピックは特別。特にメダルがかかった場面では応援に夢中。そんな瞬間の耳に残る実況があります。アナウンサーの声まで記憶に残ります。俗にいう「名実況」です。
オリンピック名実況の元祖は、やはり1936年ベルリン大会の「前畑ガンバレ」でしょう。「前畑ガンバレ、ガンバレ……勝った、勝った、前畑勝った」は余りにも有名です。今は記録映像と一緒に聞きますが、当時はラジオです。「ガンバレ」の連呼で情景描写がない「応援放送」でしたが、どれほど日本人を熱くしたことでしょう。
私自身が実際に聞いて印象に残っているのは、まず東京大会(1964年)です。女子バレーの決勝、東洋の魔女と宿敵ソ連との試合。大詰めでソ連の粘りがすごく、何度マッチポイントを迎えたことか。そのたびに「金メダルポイント」とアナウンサーが繰り返したこと、息もできない緊張でした。「ここでソ連にオーバーネット!」で、いきなり歓喜に変わりました。あの一瞬の声が耳の奥に残っています。
東京大会でもう一つ消えないのはマラソン。2位で競技場に帰ってきた円谷選手がヒートリー(英)に抜かれる場面です。「10メートル後方にヒートリー、ガンバレ円谷、円谷疲れています」という声が、映像よりも鮮明に思い出されます。
近年では、アテネ大会(04年)で男子体操団体の金メダルが決まる瞬間の鉄棒・冨田選手のフィニッシュの際の「伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!」でしょうか。でも私としては、演技が始まる時の「冨田が冨田であることを証明すれば、日本は勝ちます!」。これにシビレました。28年ぶりという悲願の「金」を目前にした緊張と期待。取材を続けてきた自信のひと言だろうと思うからです。
過去の名実況を振り返えると、映像のメディアと言われるテレビも、記憶に残るのは音声なのだと思えてきます。もちろん好試合、熱戦でないと名実況は生まれません。ロンドンでの日本選手の健闘に期待しましょう。