夏の甲子園は今年100回目を迎える記念大会です。その高校野球で愛知県に唯一、女子高校生の選手がいました。

 甲子園の夢をナインに託します。

■女子高生は“高校球児”

 制服姿で授業を受ける一人の女子高生。一見、普通の女の子ですが、授業が終わると向かった先は…グラウンド!

 男の子に混じって、鋭い打球に食らい付く彼女、実は愛知県の高校野球連盟に登録される唯一の女子選手。菊華高校2年生の高田奏羽(たかだ かなう)選手です。

 好きな選手を聞いてみると…?

高田さん:
「阪神の鳥谷選手が好きです。よく家帰ってYouTube見ています。守備のゲッツー集とか(笑)」

 菊華高校硬式野球部には45人の部員が所属。創部20年で甲子園出場を目指し、日夜練習に励んでいますが、その中で女子の選手はもちろん高田さんだけです。

高田さん:
「最初は怖かったです。ノックした時に『ちゃんと捕れよ!』とか結構言われて。しょうがないなとか思ってたんですけど、傷ついたりしました」

■捨てきれなかった「高校野球への憧れ」

 入学当初は中学校から続けていた女子ソフトボール部に入部し、ピッチャーとして活躍していた高田さん。しかし、小さいころから見ていた高校野球への憧れを捨てきれず、去年の秋に入部を決意しました。

菊華高校・牛場雅人監督:
「最初は続くのかなと正直思いましたが、ガッツあるプレーというか、根性ある気持ちが伝わってきたので、受け入れました。本人は負けん気が強いのか、男の子に負けないぞと人一倍声を出していて、すごく助かっています」

チームメイト:
「僕たち男に負けないくらい声を出して必死に頑張っています」

別のチームメイト:
「女子だからといって手を抜かず、みんなと一緒で飛ぶところは飛ぶし年下とは思えないです」

 高田さんに両手を見せてもらうと、たくさんの“マメ”が。多い日には300回以上もバットを振る日もあるといいます。そのバッティングはというと…鮮やかなレフト前ヒットを放つと、120キロほどのスピードボールも軽々とセンター前へ!男子部員にも引けを取らない実力です。

■公式戦出場資格は「男子生徒」…

 夏の甲子園の予選に向け、チームの中心として練習に励む高田さん。監督やチームメイトも彼女の実力を認めています。しかし…。

菊華高校・牛場雅人監督:
「背番号をあげられないのが本当に悔しいところですが、彼女はすごい声を出してくれるのでベンチに入れてあげたいという気持ちはありました」

 高野連の定める大会参加者資格規定では、公式戦の出場資格を「男子生徒」に限定しています。高田さんは、夏の甲子園の予選には出場できないのです。

高田さん:
「昔から本当に野球が好きだったので、選手の一人なので自分も他の部員と本気でプレーして、公式戦には出られないですけど、一丸となって一緒にプレーしていきたい」

 仲間と一緒に大好きな野球をプレーしたい…。試合に出られなくても高田さんの野球への気持ちは変わりません。

■スタンドで戦う“女子高生球児”

 大雨の影響で、予定より1日遅れで迎えた夏の甲子園予選の初戦。

高田さん:
「自分も緊張していて…、誰よりも声を出して応援したいです」

 ベンチ入りはできませんが、スタンドからチームの一員として声を出し、力を送ります。

 迎えた初回、人一倍声を出し声援を送る高田さん。すると、菊華高校は打者一巡の猛攻で一挙6点を挙げます。

高田さん:
「ナーイスバッティーーング!!」

 その後も順調に追加点を重ね、16-0で5回コールド勝ち。見事、初戦を勝利で飾りました。

高田さん:
「聞こえているかなと思いましたが、人一倍声出しました。心に届けばいいな、自分の声でプレーにつながればいいなと思いました」

 愛知県唯一の女子高校球児の高田さん。試合には出られなくても、チームの一員として戦う夏は続きます。

(7月9日放送 東海テレビ『ニュースOne』内「舞セレクション」より)