多くの犠牲者を出した西日本豪雨。
特に被害の大きかった岡山県倉敷市には、東海地方からも名古屋市消防局の職員らが駆け付け、不明者の捜索活動にあたりました。
名古屋市消防局と言えば、被災者を励ます内容のツイートがネット上で話題になりました。このツイートはどのようにして発信されたのか、現地での活動を取材しました。

■名古屋市消防局“ハイパーレスキュー隊”
西日本を襲った豪雨で小田川の堤防が決壊した、岡山県倉敷市真備町。
一面水浸しとなり、水が引いた後も片付けに追われる住民たち…。
被災した女性:
「入れない…入れない…これが我が家なんです…」
倉敷市では、これまで50人以上が犠牲となっています。

流された住宅の屋根の上で、活動する隊員たち
隊員:
「そこ、穴あければ見える?了解、了解、じゃあそこ確認しよ」
住民が取り残されていないか、ファイバースコープで家の中を調べるのは、名古屋市消防局のハイパーレスキュー隊です。

名古屋市消防局は7月6日から愛知県内の他の消防とともに真備町で安否不明者を捜索。隊員が確認している住宅地図には、よく見ると“黒い丸”と“赤い丸”がつけられています。
名古屋市消防局の隊員:
「黒丸はもう連絡がついて、うちは大丈夫ですって言った人が黒丸。赤丸が昨日までにそれ(安否)が分からなくて電話でも連絡がつかない、周りの人に聞いてもどこに行ったか分からないけど、鍵がかかっているから中に入れないという住宅です。カギをかけて避難所にいるかもしれない。もしかしたら、もう流されていっちゃったかもしれない…」
生存者がいないか確認するため、赤い丸のついた住宅へ向かいます。
隊員:
「隣は〇〇さんでよろしいですか」
住民:
「はい。〇〇さんは水島に避難していて、昨日会ったので、無事でした」
近隣の住民から情報を集め、分からない場合は地元消防の許可を得て、住宅の中へ。泥まみれの家の中を入念に確認します。

カギのかかっている家では、安否確認のため、ガラスを割ることも…。
隊員:
「住人は見つかりませんでした。11時4分ね」
別の隊員:「11時4分です」
確認を終えたら粘着テープを貼り、時間とメモを残します。住人が戻った際、泥棒に入られたと勘違いしないようにするためです。

■被災者を励ました「必ずあなたを助けます」
地道に1軒1軒回る消防隊員。その傍らに、スマートフォンで写真を撮る隊員が…。名古屋市消防局総務部の各務英男さん(34)です。
各務さん:
「活動中の隊員の様子とか、被災地はこうなっているよとか、今の隊の動きがこうなっているとか、そういう分かるものがあればどんどん送って。インスタグラムやツイッターの方にアップしてもらうという形ですね」
実は各務さん、ツイッター用の『写真』を任されています。
名古屋市消防局のツイッターと言えば…。

(名古屋市消防局のツイート)
「遅くなりましたが救助はすぐ側まで来ています。必ずあなたを助けます。」
7月7日、被災者を励ます内容を投稿したツイートが話題に…。
(返信ツイート)
「待つしかできないこちらも救われました」
「本当に心強いです」
倉敷市民とみられる人からメッセージの返信もあり、フォロワーの数は6倍以上に急増しました。

■担当者「『あなた』という言葉出てきた」
こうしたメッセージはどのようにして発信されたのか…。名古屋市中区にある名古屋市消防局を訪ねました。
消防局では、SNSを使って救助を呼びかける人が増えていることから、去年8月からツイッターを導入しました。
話題となったツイートを発信したのはここに勤務する男性職員。「消防局全体のために仕事をしていて、目立つべきではない」という考えから顔出しNGでしたが、あのツイートについて聞くと…。
名古屋市消防局ツイッター担当職員:
「ああいった時に『助けに来ました』とか、『助けに行きます』っていうだけじゃない気持ちだと思うんですよね。向かっている職員は」
Q.その強い思いというものを文字に?
「あそこ(被災地)にいらっしゃる特定の方だけに伝われば良いと思ったので、『必ず助けに行きます』じゃなくて、できるだけ個人に届くように。だから『あなた』という言葉が出てきました」
ただ、災害現場での活動をツイートするのは今回が初めてということで、手探りだと話します。
Q.実際に届いているかどうかの実感はありますか?
「正直、分からないです。一方通行になっているだけかもしれませんけど、それでももし、お一人でも二人でも見ていただけているなら、それはそれで良いのかなと思います」

■被災地と名古屋、職員同士の“連携”
活動のツイートはどのようにして作られていくのでしょうか。
再び、倉敷市真備町。
この住宅では、災害救助犬と一緒に、安否不明者がいないか。家の中をすみずみまで探します。

名古屋市消防局の各務さんは、活動の様子を、スマホを使って撮影。写真を名古屋にいる消防局のツイッター担当職員に送り、その職員が文面を考えてアップします。
それで完成したツイートがこちら。

(名古屋市消防局のツイート)
「担当エリア全ての住居を検索しています。午後になり、さらに気温が高くなっています。皆さま気をつけて下さい。」
被災者を気遣うメッセージも忘れません。

■被災者「自分にはヒーローに見えた」
日差しが照り付ける中での、連日の活動…。束の間の休憩をとる隊員たち。そこに、若い男性からパンの差し入れが届きました。
パンを受け取る隊員:「ありがとうございます」
Q.どなたでしたか?
隊員:
「普通に一般の方が『パン余ったので』っていうことで…うれしいです」

差し入れをした男性:
「自分たちの被災した場所でもないのに、遠くから駆けつけて助けたりしてるところを見て、元気というか勇気づける人たちだなと思いました」
別の男性
「ヒーローのような感じに自分は見えて。その姿をニュースとかで見て、自分も何かしないといけないなと思って」
捜索活動でも、SNSでも被災地に寄り添う消防隊員たち…。


各務さん:
「あれだけのフォロワー数があったっていうことは驚きでもありますし、それぞれ各隊員もうれしいというか、励みになるという気持ちにもつながっていると思います。知ってもらって応援してもらうことで、本当にただそれが力になると思うので。背中を押してもらい、味方になってもらえたら、それだけでうれしいですし、この仕事の価値があるのかなって思います」
名古屋市消防局は7月12日、1週間に及ぶ活動を終えました。
(名古屋市消防局のツイート)
「1日も早く、皆さまに平穏な日々がお戻りになる事を願っております。」
