■金魚を世界一「美しく」見せる
光の中を優雅に泳ぐ金魚…。金魚鉢を高く重ねた作品「大奥」。そこは、美しいものにだけ許された、豪華絢爛な世界です。
着物の上を金魚が舞う「キモノリウム」。優雅に泳ぐ影は、夏の涼…。名古屋栄の松坂屋美術館で開催中の「アートアクアリウム展」では、金魚と光がおりなす15のアート作品を展示。名古屋では4年ぶりの開催です。
来場客:
「すごいきれいでこんなにいっぱいの金魚見たの初めてです」
別の来場客:
「幻想的で涼しげな感じでいいです」
これまで全国で動員した観客数が800万人余り。記者発表では、広報大使を務める女優の上戸彩さんも絶賛。
上戸彩さん:
「なんていうか現実じゃないみたい。夢の中にいるみたい」
イベントの仕掛け人・木村英智さんに多くの人を虜にする秘密を伺うと…?
木村さん:
「主役の金魚たちが美しく記憶に残れるように考えた結果、そうなったのかなと」
金魚を世界一「美しく」見せる展示…。その舞台裏を探ると、様々な秘密がありました。
■半数近くが愛知・弥富の金魚
大きな声で値段を叫ぶ男たち。その足元を、大小さまざまな金魚の入ったケースが流れていきます。ここは日本を代表する金魚の産地・愛知県弥富市。毎週行われている金魚のせりの様子です。
金魚の卸業者:
「赤の鮮やかさがちょっと違う。艶のノリもいいですし」
業者のみなさんも自慢の弥富金魚。実はアートアクアリウム展の金魚のうち、半数近くのおよそ1200匹がここ弥富のものなんです。
プロデューサーの木村さんは、毎回、弥富の卸業者に直接買い付けに訪れています。
木村さん:
「金魚のいろんな種類が積極的につくられている生産地。アートアクアリウムはいろんな種類が必要なので集めるには最適だと」
アートアクアリウム展では、作品の世界観に合わせおよそ50種類の金魚を選んで、展示しています。例えば、冒頭の「大奥」には高級品種「琉金」を使用。立派な尾ひれと華やかな赤が印象的です。

一方、「花魁」(おいらん)という作品には、よく見ると地味で小ぶりな、雑種の金魚しかいません。実は、この金魚の品種に演出のポイントが…。
木村さん:
「花魁にいる金魚っていうのはアートアクアリウムで一番安い。一方の大奥というのは選ばれた金魚だけがいる花街。下からのし上がっていくストーリーと初めからそれなりのお家に生まれた人たちがさらに高見を目指す世界を表現しています」
金魚を飼う家庭が年々減る中、地元の業者もイベントに期待を込めます。
地元業者:
「金魚の美しさ優雅さを実感して自分も家庭で飼ってみようという気になって頂けると我々の業界もまた潤っていいかなと思う」
■『照明』『餌』『非日常』…魅力を最大限に
7月19日、開場まであと2日。追い込みの木村さん、指示していたのは照明の位置です。
アートアクアリウムで、金魚の美しさを演出する鍵となるのが、色とりどりの「照明」です。神秘的な雰囲気の青や、妖艶に魅せる赤…。同じ作品でも数秒のうちにいろんな表情を引き出します。
木村さん:
「アートアクアリウムは照明が大事ですよ。ぎりぎりまでは調整したい」
7月20日、開幕前日。いよいよ、弥富から金魚が届きました。いよいと作品に命を吹き込む瞬間です。
その命に欠かせないモノといえば…餌。アートアクアリウムの金魚の餌は、独自開発のスペシャルフード!
スタッフ:
「栄養を吸収しやすい、元気になって色も発色しやすいとか」
全ては美しく見せるため…。金魚の体調にも気を配ります。

この日、木村さんは会場のある松坂屋でなにやら物色中。いったい何を?
木村さん:
「(Q.どんなものを探してるんですか?)なんかこう…非日常的な、急に世界が違うみたいな」
手にしたのはバスローブ…。会場は和の雰囲気なのに、木村さんはイメージとは違う品物をどんどん選んでいきます。実は、今回のアートアクアリウムではイベントの世界観からあえて外した作品を特別に企画しました。順路の最後、トリを飾ります。
そこは名古屋でしか見られない空間…。いったいどんな仕上がりになるのでしょうか?
7月21日、開幕初日。朝から多くの人が会場を訪れました。
来場客:
「近代的でありながら落ち着く所もあって、堪能できました」
会場最後の作品では、透明なジャグジーをキラキラと金魚が泳ぎ回っています。周りには、前日に選んだアイテムが…。
来場客:
「さっきの大奥から、別世界のちょっと洋風な感じで面白いです」
木村さん:
「観賞魚の晴れの舞台。スターをいかにきれいに見せるかというのが我々舞台裏のやることですから、作品に込められたストーリーをくみ取ってほしいです」