潮の満ち引きには月の引力などが関係していますが、この力を利用して、愛知県内の企業が“ちょっと変わった研究”を進めています。キーワードは「起潮力」です。

 訪れたのは愛知県刈谷市のトヨタ紡織。内装部品メーカーとして車のシートなどを作っています。

 潮の満ち引きなどとは関係がないようにも思えますが、担当者に聞くと…。

トヨタ紡織・鬼頭修専務理事:
「お日様のリズムではないリズムで、どうも植物が育っているというのを発見したんです。そのリズムがどうも起潮力、潮の満ち引きのリズムに合っているのではないかということを発見しました」

「起潮力」って一体…?

 そもそも、潮の満ち引きは月の引力が大きく関係しています。

 単純に説明すると、地球が自転して月が近くにある時、月の引力などが働くため、海面が引っ張られ満潮になります。こうした力のことを「起潮力」と呼びます。

 トヨタ紡織は、この力が植物の成長に何らかの影響を及ぼしていることを発見したと言うのです。

 刈谷市の本社の敷地にある研究施設で、実験の様子を見せてもらいました。

 明らかに大きさが違う2つのリーフレタス…。どちらも同じ実験室で3週間ほどかけて水耕栽培したものだそうです。

福島智之アナウンサー:
「全然違いますね!」

鬼頭専務理事:
「どちらが起潮力で育てたかわかりますか?」

福島アナ:
「(片方を示して)明らかにこちらのほうが大きいですよね、こんなに違うんですか」

 植物は光合成でつくった養分を元に夜、育ちます。地球の自転で海が干潮から満潮に向かう、つまり月の引力が強くなっていく時間帯に人工的に夜にします。すると、植物が通常よりも大きく育つというのです。

 レタスを育てている棚に貼られた、1枚の表。これは棚の照明を消す時間です。

 干満のタイミングは毎日およそ50分ずつずれていくため、この時間帯に合わせ毎日、照明を消して「夜にする時間」を決めています。月のリズムに合わせ夜をつくり出すだけで、2割以上も大きくなることがあると言います。

福島アナ:
「大きさももちろん違うんですが、こっち(起潮力を使ったのレタス)の方がおいしそう、味も違うんですか?」

鬼頭専務理事:「トライしてみます?」

福島アナ:
「(食べて…)こっち(起潮力)の方がより瑞々しく感じます。食感も違う」

鬼頭専務理事:「本当ですか」

 瑞々しい上に日持ちもよくなるとか…。しかし、夜と干潮から満潮になる時間を合わせるとなぜ、植物が大きく育つのか詳しいメカニズムは分かっていません。

 ドアやシートの材料として使っている植物「ケナフ」を栽培する過程で気づいた、この「発見」。

福島アナ:
「この実験の結果は将来はどんなことにつながっていきそうですか?」

鬼頭専務理事:
「植物増産、動物・魚類の養殖、さらには人に対する健康面への適応。ダイエットにもいいかもしれません」

福島アナ:
「この研究が将来人類を救うかもしれない?」

鬼頭専務理事:「夢ですね」

 トヨタ紡織は名古屋大学と共同でこのメカニズムを解明するとともに、ほかの動植物の生育にも応用していく考えです。

 研究が世界の食糧難の解決など未来に向けた「大きな貢献」の第一歩につながるかもしれません。