冬も近づき、増える火災、その原因を究明するための訓練が行われました。消防士たちは焼け焦げた現場からどのようにして、原因を導き出すのでしょうか?

男性が一人で暮らす部屋…。
掃除をしていないからか散らかり放題。たばこの吸い殻も溜まっています。この部屋に住む男性の携帯電話が鳴り、男性が外出した後、部屋が燃えたという設定で訓練が行われました。

訓練を行ったのは名古屋市の消防局で、火はかかっていた衣服などに燃え移り、部屋は瞬く間に大きな炎に包まれました。家具や家電が置かれたプレハブを実際に燃やし、焼ける前の状態を全く知らないところから出火原因を判定します。
集まったのは26歳から53歳までの現役の消防士16人。4人1組で焼け跡を調べます。
消防士:
「現場を見て(可能性を)潰さんといかん、電気とタバコと…あ、タバコの吸い殻あったな、テーブルの上にこんもりと」

しかし、焼けた部屋は一面真っ黒。一体どこから手を付ければいいのでしょうか。
講師の金子幸雄消防司令補に聞きました。
名古屋市消防局・金子消防指令補:
「火災調査は一番パッと見て、燃えていないところから燃えが強いところを見ていくんです」
ポイントは壁の燃え方だといいます。
金子消防指令補:
「燃え方が強い場所は、亀の甲羅みたいな感じで、かめのこ模様に炭化するんです。それより燃え方がちょっと弱くなると、だんだん黒く煤けただけになっていきます」

一見するだけではよく分かりませんが、建物はたとえ全焼しても焼け方には必ず「ムラ」があります。今回、一番燃えていたのは南側の壁。その周辺を調べるのがセオリーです。
さらに、住人からも話を聞きます。これは実際の火災の時も同様です。
消防士:「タバコは吸いますか?」
住人役:「吸います」
消防士:「どれくらい吸いますか?」
住人役:「1日20本くらいですね」

電化製品に生活環境、そしてタバコ。当時の状況を住人から聞き取り、参加した消防士たちが導き出した結論は…。
港消防署から参加した消防士:
「部屋の南側の焼け方が強かったんですけど、そこで床に燃え込みがありまして、そこに三つ口のテーブルタップがあり、電気ストーブの電源プラグがささっていました。そこの電源プラグの刃を見たところ、折れていたという状況だったのですから、かなりの熱エネルギーがかかったんだろうなと」
東消防署から参加した消防士:
「“トラッキング現象”が起こって、出火に至ったという結論になりました。難しかったです」
果たして、結果は…?
講師:
「出火原因に関しては、結論的にはトラッキングです」

延長コードのコンセントと、電気ストーブの電源プラグとの間に溜まったホコリが漏電を引き起こし、発火する“トラッキング現象”。見事16人全員が正解にたどり着きました。
港消防署から参加した消防士:
「原因は分かったんですけど、途中でまだ見落としていた部分は多々あったなと。私自身まだ経験もないので、火災があってはいけないんですが、もしあった時には原因を究明して、似たような火災が起きないように努めていきたいなと思っています」
出火原因を知ることで次の火事の予防につなげる。同様の火事が起きないよう、啓発などに役立てます。
名古屋市消防局予防課・金子幸雄消防司令補:
「名古屋市だけの火災予防じゃなくて、その出火原因が似ている火災は全国各地で起こっていると思いますので、日本全国の火災予防の判断材料になればと思います」