ウナギといえばどんどん値段が上がって高嶺の花になりつつありますが、その解消に愛知の高校生が一役買うかもしれません。これまで難しかったウナギの卵からの人工ふ化に成功、夢の完全養殖に一歩近づきました。

 顕微鏡を通して見える小さな生き物。何やら球体のものも見えます。これは、いったい…?

三谷水産高校海洋資源科・東出滉大くん:
「このへんが頭でこっち側が尻尾のほう。これがウナギの稚魚」

 卵から産まれたばかりのウナギの稚魚!体長はわずか3.5ミリ。丸い球体は眼ではなく「油球(ゆきゅう)」と呼ばれ、しばらく生きていくための栄養分が入っています。

 ウナギの人工孵化を成功させたのは、愛知県蒲郡市の三谷水産高校。11月27日、海洋資源科の生徒5人と、彼らを率いる小林先生のチームがこの偉業を成し遂げました。

三谷水産高校 小林清和先生:
「第一発見者は私ですけど、やったぜ!という感じですね」

沓名駿介くん:
「まさか自分の代で出来るとは夢にも思っていなかった。とにかくびっくり」

 ウナギの人工ふ化成功、実はすごいことなんです。

 日本のウナギは、川で生活した後に海に出て、マリアナ諸島沖で産卵。その後、成長してシラスウナギとなり黒潮に乗って日本の沿岸へ。そのシラスを捕獲し大きくなるまで育てて、私達の食卓に届きます。

 実は、産卵からシラスに育つまでの間、未だ分かっていないことが多く、完全養殖のうなぎが食卓に届くにはまだまだハードルが高いんです。

 外はこんがり、プリっとした触感が魅力のウナギ…。シラスの漁獲量が減る昨今、もっと安く、もっとたくさん食べられる時代が来るかも…。

 謎に満ちた卵からのふ化を、いったいどのように成功させたのか?研究を見せてもらいました。

 生徒の手には何やら瓶と細い管…。

沓名くん:
「いまからお尻の穴に管を通して、そこから直接卵を吸い出す。人間で考えるとすごい痛いですけどね(笑)」

 まずは、麻酔でうなぎを眠らせます。そしておとなしくなったうなぎのお尻に管を通すと…あらわれた白い物体がウナギの卵です。一匹で100万個以上の卵を産むといいますが、とても小さいものでした。

沓名くん:
「卵の大きさがどれくらいかによって、受精するかどうかのタイミングを見極めています」

 卵を取り出すのはその大きさを測るため。実は、これが最も大事な作業です。

小林先生:
「小さいですね。まだ早い。だいたい卵径だと800~900ミクロンくらいの大きさが最終段階」

 大学や企業などの今までの研究結果から、卵の直径が0.8ミリ~0.9ミリで産卵させれば、ふ化する確率が高いといわれています。まだ卵が小さければ、卵の成長をうながすホルモンを注入するなどして、ちょうどいい大きさになったタイミングで卵を取り出します。

 こういった地道な作業を生徒たちが毎日続けた結果、人工ふ化に成功したのです。

沓名くん:
「タイミングが一番大変でしたね、相手は生き物なのでこっちの都合にあわせてくれないので」

三矢龍志くん:
「続けることの大切さを知ることができましたね。最初のころはウナギも暴れまわったりして、なかなかうまくいかなくて、途中で死んでしまったりして難しかった」

小林先生:
「最終的には完全養殖にしたい。そこまでできれば一番有り難いですね」

 夢の完全養殖へ…。生まれた稚魚からシラスウナギに育てば、その夢にまた一歩近づきます。