■各地域に魅力あふれる「ご当地スーパー」あり
全国には「20,840」のスーパーマーケットがありますが(※1月8日現在「統計・データでみるスーパーマーケット」より)、その中で限られた地域だけで展開する「ご当地スーパー」。
全国展開しているスーパーとは違い、地元の食材など、その土地ならではの商品を販売しているのが魅力です。
そんなご当地スーパーについて、本を出版しているスーパー研究家の菅原佳己さんと、おすすめの店をめぐりました。
岐阜県が誇る名湯・下呂温泉。草津、有馬と並び日本3名泉と称される温泉街で、菅原さんが立ち寄りたいスーパーがあるといいます。
お邪魔したのは、温泉街から車で10分の「ショッピングセンター ピア」の中にある、「GGシェフ やましげ」。
一見、普通のスーパーですが、旅と一緒にわざわざ行きたくなるような場所なんです。
スーパー研究家・菅原さん:
「ここは油揚げの多さがすごいんです。寒い地域は冬になるとたんぱく質のもとになるのが大豆しかないんですよ。だから大豆商品がこれだけ豊かに発達したんです」
様々な種類の油揚げがありますが、この地方の特徴は「分厚い油揚げ」、焼くだけでおかずになります。さらに、豆腐の種類も豊富で、大豆を使った商品の多さが一目で分かります。

■遠方から利用の際は「保冷剤と保冷バッグ」を
でも、このスーパー最大の特徴は「鶏(けい)ちゃんコーナー」です。
岐阜県の郷土料理「鶏ちゃん」。鶏肉を野菜とともに炒め、しょうゆや味噌で味付けします。かつてはお祝いの席などで振舞われていましたが、やましげはとにかく種類が豊富!飛騨地方の様々なメーカーの鶏ちゃんが26種類も並んでいるんです。
この中で菅原さんが特におすすめだという商品が…。
菅原さん:
「生なの。しかもキャベツがついてます」
スーパー自家製の鶏ちゃんで、しょうゆで味付けした鶏肉と刻まれたキャベツがセットに。炒めるだけで完成という主婦にはうれしい商品ですが、一つだけ注意点が…。
菅原さん:
「冷凍商品じゃないので、遠くから来た人が買って帰るのが難しいんです。もしこれを買いたければ、保冷材と保冷バッグがいります」

お店からの配送もできないため、ここに来ないと買えない、まさに「幻の鶏ちゃん」。
地元の方々が、実際に家庭でどうやって作って食べているのか、お店で作り方を教えてもらいました。ポイントはクッキングシートを敷くことだそうです。
タレが染み込んでいる鶏ちゃんは、油もいりませんが、焦げ付きやすいため、手を止めずに焼くのが鉄則。そのまま5分ほど焼いて完成。その味は…?
リポーター:
「すごく柔らかくて、口の中にしょうゆの香りがふわっと広がる感じです」
菅原さん:
「お酒を飲む人にもおつまみとしてちょうどいいし、ごはんのおかずにもちょうどいいしょうゆ加減です。地元の人にとっては些細なものなんだけれども、私たちにとってはお宝みたいなものを知ることができて、そういうものを求めて旅に行くのもいいですね」
旅行ついでにスーパーで地元の食文化を感じてみてはいかがでしょうか。

■「朝まで泳いでた」魚求めて連日の行列
そしてもう1か所、愛知県豊川市の豊川稲荷へ。初詣では今年も賑わいましたが、この近くにも、菅原さんイチオシのスーパーがあります。
豊川稲荷から車で南へ20分。やってきたのは、「フードオアシスあつみ 山田店」です。
お店の一番の売りは、健康になれる食材。“無添加”や“国産”などなど、体に良さそうな言葉がついた商品がたくさんあります。
安心・安全な食生活にこだわりたい方にはぴったりですが、菅原さんのイチオシは「魚」です。
菅原さん:
「やっぱり、健康ということは新鮮なものを食べるということなんですよ。ここは毎日、魚が伊良湖から直送されてくるんですよ」

一番の魅力は鮮魚コーナー。その日の朝に伊良湖漁港から水揚げされた魚介が店頭に並びます。
午後3時からの販売ですが、午後1時半から整理券が配られ、それを目当てに連日行列ができる人気ぶりです。
この日も、アジとモンゴウイカを買うために正午ごろから待っていたお客さんもいました。
お客さん:
「整理券を大体1時半に配ってくださるんですよね。でも早い方は12時半くらいに来る方もいます」
別のお客さん:
「お魚はここで買うって決めています。新鮮ですし、朝まで泳いでたってよく言われるんですよ」

■スーパーの食材で調理「グローサラント」
新鮮な地元食材が、お客さんをひきつける…。これだけでも魅力があるように感じますが、実はこのスーパーにはもう一つ人気の理由がありました。
菅原さん:
「実は、ここの食材を使ったものが食べられるレストランがあるんです。このスーパーがやってるレストラン」
「フードオアシス あつみ」から、車で5分。豊橋市に2年前オープンした、「あったかキッチン まあるいおさら」。
スーパーで売られている食材の魅力を生かして提供してくれるので、おいしいだけでなく、メニューのアイデアも浮かぶんです。

おすすめは渥美半島などでとれた、新鮮野菜のビュッフェが食べられる「日替わりランチ」1620円。メイン料理は、その日の仕入れによって変わり、この日のメインは、渥美半島で飼育されたブランド豚「あつみポーク」です。
菅原さん:
「今日はあつみポークのおかずなんですけど、このあつみポークもスーパーで売っているものと同じお肉なんです」
実際に販売されている商品を使って、スーパーが料理を提案。これはグローサラントと呼ばれる今注目のスタイルです。
菅原さん:
「『フードオアシス あつみ』の商品は、良い商品なので、子育て世代にはちょっと高いかなという値段ではあるんですね。ただ、そういう世代のお母さんたちにもここでランチをしてもらうと、良さがわかるじゃないですか。そうすると、この食材を使って家族のためにおいしいものを作ってあげようという見本がここにある。気持ちも高まるので、お客さんにとってすごくいい入り口になっているんです」
どこまでも健康にこだわった、ご当地スーパーの新たな挑戦です。