愛知県犬山市に住む、古川よし子さん(74)。古川さん宅の『どんぐり文庫』には、子どもたちが続々と集まってきます。

 家の中には、廊下にも部屋にもいたるところに本棚が。「11ぴきのねことへんなねこ」、「ムーミン」シリーズ、「天と地の守り人」…、約1万2000冊が並んでいますが、子ども向けの本ばかりです。

男の子:
「いろんな本が見られて勉強になる」

別の男の子:
「(本を読むと)自分もその世界にいけるような感じがして…。(古川さんは)優しくて、本がどこにあるか分からなかったらいつでも教えてくれるし、教え方も丁寧」

女の子:
「(本が)本当に大好きです。(将来の夢は)絵本作家です」

 27年前に自宅を「家庭文庫」にして子どもたちに本を貸し出しはじめた古川さん。その数は1人、また1人と増え、これまでに1800人以上が訪れました。

 本は定番から話題作まで。子どもたちは好きな本を選んで、自由に時間を過ごします。時には古川さんがおすすめの本を選んであげることも。

Q.買う本を選ぶとき重視していることは?

古川さん:
「やっぱりその子の興味ですよね。その分野に対して興味がなければいくらすすめてもダメだと思うんですよね。長年の勘というのもあるんですよ。漫然と選んでくるではなくて、目的をもって買ってきます。『あの子ならばこれはきっと喜ぶだろう』と、顔を思い浮かべながら買ってきます」

 国語教師だった父親の影響で、幼いころから本に囲まれて育ち、たくさんのことを学んだという古川さん。近くの小学校にも訪ねて行って、子どもたちにも本の魅力を伝えています。

 本を通じて知ってほしいのは、「生きる力」です。

古川さん:
「子供に読む力をつけさせて、生きる力の強い子を育てたいと思います。今はね、人生に負けそうになっちゃう子がいっぱいいてね、本の中にはいろんな人間模様が書かれているので、そういうものから少し蓄積していってもらいたいと思うんです」

 しかし、「どんぐり文庫」を続けていくことは簡単ではありません。

 会費として1人800円を集めていますが、本の購入費には毎月数万円かけて新しい本を買っていて、足りない分は自分の年金を充てています。

 それでも、古川さんが続けているのは…。

古川さん:
「やっぱり好きだからでしょうね。突き詰めれば、好きだからやっているんでしょうね。わーっと歓声をあげるんじゃなくて、じわーっと心の中に残る、そういうものを子どもたちに提供したいなと思います。80歳までは頑張りたいなと思っています」

 子供たちの笑顔があふれる「どんぐり文庫」。古川さんはきょうも豊かな声で子供たちに語りかけています。