去年、12月東京オリンピックへの選考がスタート。16日、その舞台の1つの全日本選抜決勝で、2人の五輪金メダリスト、伊調馨選手と川井梨紗子選手が相まみえました。

川井選手(決勝前日):
「(伊調選手に敗れた)12月はもう半年前で結果として出ているので、それはそれとして切り替えてこの半年間自分もやってきたので、明日の一戦に集中しています」

 この大会で優勝しなければ東京オリンピックへの道が事実上閉ざされる川井梨紗子選手。前日にひと足先に世界選手権の出場を決めた妹の友香子選手をセコンドに付け試合に臨みます。

友香子選手:
「(姉の梨紗子が)12月に負けてから、悩んだりとかいろんな気持ちになっていたのも全部自分は見てきたけど、やれることは全部やってきたので、自分は全力でサポートして、梨紗子が勝てるようにしっかりサポートしたいと思います」

 試合序盤、お互いが探り合う形で試合が進行、伊調選手が消極的と判断され川井選手に1点が入りますが、1対0のまま第一ピリオドが終了します。試合が動いたのは第二ピリオドに入ってからでした。

 高速タックルで川井選手が伊調選手を転倒させると、続けざまにローリングを決め一気に4点を加え5対0とします。

川井選手(試合後のインタビュー):
「勝ちたいのはもちろんだったんですけど、後悔したくない気持ちの方が強くて」

 これで窮地に立たされた伊調選手、タックルを仕掛けますがなかなか決めることができません。

 しかし1分50秒過ぎでした。再びタックルに入った川井選手をかわした伊調選手がバックをとり2点を返すと、川井選手を場外へと押し込み、これで2点差に。伊調選手が粘りをみせ川井選手にプレッシャーを与えます。

 攻撃の機会を伺う伊調選手に対し、2点差を守るため距離をとる川井選手。この川井選手の姿勢が消極的とみなされ残り2秒で1点差に。

 川井選手が逃げ切るか、それとも絶対女王・伊調選手がここから巻き返すのか。試合終了とほぼ同時に伊調選手が川井選手を場外へと押し出しますが、タイムアップが先。

 金メダリスト対決を制したのは川井選手。世界選手権の切符を掛け、7月のプレーオフで再びこの2人が対戦します。

川井選手:
「半年前は怖くて…戦うことが。なんですけど、思ったより自分のことを応援してくれている人がたくさんいたことが、ほんとに力になりました。姉妹でオリンピックに出るためにこの選択(伊調選手と同じ階級)をしているので、それはずっとぶれていないので、それに向かって頑張りたいと思います」

伊調選手:
「(57キロ級での五輪代表枠は)ほんとに1枠しかないのでし烈な戦いだし、それは自分も覚悟して臨んでいることなので、そこでほんとにどっちが負けないかという感じだと思います」

 そしてもう1人、川井と同様、去年12月の全日本で優勝を逃して東京オリンピック出場へもうあとがない、リオ金メダリスト登坂絵莉。迎え撃つのは19歳、早稲田大学の須崎優衣。

 世界選手権2連覇中の世界女王と、リオオリンピック後はケガに泣かされた金メダリストとの対戦に注目が集まる中…先に仕掛けたのは須崎選手でした。

 得意のタックルで登坂選手のバックを取ると、そのままローリングで3回転。このあとにも2点を追加され19歳の世界女王にとどめをさされた登坂選手。世界選手権への出場を逃し東京への道が遠のきました。

登坂選手:
「(リオ後の3年間は)自分の人生の中で一番つらい3年間でしたし、もうやめたいと思うことばかりだったんですけど、それでもたくさんの人に応援してもらってここまで来られたので、この試合の負けをよかったと思える日は来ないと思いますけど、それでもこれが現実なので前向きにいきたいと思います」

 そして、去年12月に全日本を制してこの大会で世界選手権への切符を確実なものにしたい、リオ金メダリスト土性沙羅選手も決勝の舞台に挑みました。

 第二ピリオド1点ビハインドのまま。残り30秒を切ります。しかし残り12秒でした。

 土壇場で相手のバックをとり逆転、女王の意地をみせつけ世界選手権への出場を決めました。

土性選手:
「負けることは全然考えてなくて、最後の最後まで絶対に自分が勝つという気持ちと、絶対に点を取りに行くという気持ちでやっていたので、この気持ちが結果につながってよかったと思います」

 至学館大学同士の同門対決となったのは、吉田沙保里さんが長い間守り続けてきた53キロ級。

 奥野春菜選手が大学の1年先輩で、去年12月の全日本の覇者・向田真優選手に挑みましたが、向田選手が2対1で奥野選手を退け、世界選手権の切符を手にしました。