流通しているその地域でしか手に入れることができない「ご当地パン」。ご当地パンだけが特集されている本や雑誌も発売されており、今人気を呼んでいます。

 愛知県豊川市で限定販売されているご当地パン「たけのこパン」は、地元で「幻のパン」とまで呼ばれています。いったいなぜ幻なのか、メーカーを取材しました。

■愛知・豊川市の“幻”のご当地パン「たけのこパン」とは…

「たけのこパン」を製造する、愛知県豊川市の「ヤマトパン(株)」。

 工場で商品をみせてもらうと、クロワッサンのような生地の中にクリームが入っていて…見た目は割とよく見かけるような普通のパン。

 このクリームの中にたけのこが入っているのか、生地の中に練り込まれているのか、そして幻といわれる理由は何なのか…。

 社長の久世太司さんに聞くと、名前の由来は「見た目」が、皮が重なることで「たけのこに似ているから」で、中にたのこが入っているわけではありませんでした。

 そして、「幻」のゆえんは…。

■昔は3日の消費期限…気温上昇で『1日』に

ヤマトパン(株) 代表取締役社長 久世太司さん(4代目):
「売られていない期間があるので期間限定になってしまうのと、製造する数が限られていてすぐに売り切れになってしまうため、幻のパンといわれています」

 たけのこパンは、豊川市と豊橋市の一部のスーパーと、JR豊橋駅のキヨスクでしか買うことができず、名古屋にも進出していません。

 また、昭和33年から販売されていますが、気温が高くなると、中に入っているクリームがすぐにたるんでしまうという理由で、毎年10月~4月の約7か月の間のみ製造・販売されています。

 平日は約800個、多くても1500個までしか作れないため、「幻のパン」と呼ばれるようになりました。

ヤマトパン(株) 代表取締役社長 久世太司さん(4代目):
「(たけのこパンは)昭和33年頃から販売しています。昔は3日の消費期限でしたが、地球温暖化で気温が上昇したことにより、消費期限は1日になりました」

 1か月に約1万個が売れる「たけのこパン」、その製造方法もみせてもらいました。

■『たけのこパン』ができるまで

 前日に作って寝かせた3層の生地を、円錐型にクルクルと4回巻きます。

 ポイントは、生地と生地を少し重ねること。そうすることで、仕上がり時にパンが折れにくくなるのと、パンの隙間からクリームを漏れないようにします。

 そしてオーブンで約10分かけて焼いていきます。現在は、ほとんどの工場がガスオーブンを使っていますが、ヤマトパンで使っているのは電気オーブン。機械の製造元から「まだ使っているの?」といわれるほど年季が入っています。

 古くても電気オーブンを使うのには理由があります。電気オーブンは、表面となる部分にピンポイントで照射されるので、ガスと比べると、表面がカリカリした仕上がりになるそうです。

 焼きあがったら、冷ましながら1つ1つ円錐型を生地から外し、パンが冷めたところでクリームを詰めます。この一連の作業は、すべて手作業です。

『たけのこパン』以外にも30~40種類の商品も作っていますが、これらもすべて手作業。販売数が限られるのも納得です。

 そして、その味はというと…生クリームやホイップクリームの様ですが、生クリームほど甘くなく、ホイップクリームよりもあっさりとしていました。

■あまりにも時期限定…夏でも売れる『妹分』登場

「たけのこパン」は、販売期間が限られているために“幻”といわれるようになりましたが、その空白の期間を埋める姉妹品があります、それが『チョコばんぶーShoots』です。

ヤマトパン(株) 代表取締役社長 久世さん:
「たけのこパンが時期限定のため、それに代わる夏の時季でも売れる商品をと思って、約5年前に作り出した新商品です。塾に通う中高生に、1個でもおなかがいっぱいになるようにと考えて作り、中はチョコレートにしました。」

 商品名の『ばんぶーShoots』は、日本語で「たけのこ」の意味、名前も「元祖」を受け継いでいます。こちらは期間限定ではなく、1年中購入できます。


■今秋から“ある変更”で美味しく

 現在、原料の小麦粉は輸入小麦を使っていますが、今年の秋からは愛知県産の「ゆめあかり」に変える予定です。

 試作したところ、小麦粉のうま味があっておいしく仕上がったことや、地域の素材を使って恩返しをしたいという思いでリニューアルを決めたといいます。

 秋からはより一層美味しくなった、たけのこパンが楽しめるようになりそうです。

※たけのこパンは150円、チョコばんぶーは140円(今秋 価格変更の可能性あり)