“若手棋士”といえば愛知県瀬戸市出身、将棋の藤井聡太七段が有名ですが、同じ愛知に囲碁の世界でプロデビューした女子高生棋士が注目を集めています。

 藤井七段と同じ17歳で、なんと父親と祖父も現役のプロ囲碁棋士。親子三代で夢を叶えました。

 ■史上初!親子三代の現役プロ囲碁棋士

 今年4月から新たにプロとしてデビューした棋士たち。中でも注目を集めたのが…。

仲邑菫初段(10歳):
「世界で戦える棋士になりたいです。よろしくお願いします」

 史上最年少10歳でプロ棋士となった仲邑菫初段。

 今年デビューしたのは13人、その中でもう1人、話題となっている女子高生がいました。

羽根彩夏初段:
「3世代で現役というのは初めてですが、『羽根先生の娘さん』と言われないように自分で頑張っていきたいと思います」

 愛知県長久手市に住む羽根彩夏初段、17歳。実は祖父も、両親もプロ棋士です。

彩夏さん:
「何かプロになるんだなって実感がだんだん湧いてきました」

 親子三代が現役でプロ棋士というのは史上初めてのこと。一体、どんな家族なのか…。祖父の家へお邪魔すると、3人で碁盤を囲んでいる姿が。

 祖父の泰正九段(75)。「中京のダイヤモンド」の異名を持ち、過去に王座のタイトルを獲得した大ベテランです。

 そして、父親の直樹九段(42)は、2001年にタイトルを手にし、史上初めて親子でタイトルを獲得。「平成の四天王」とも呼ばれるトップ棋士です。

 親子三代ともに現役プロ棋士ですが、戦い方はそれぞれ違います。

祖父:
「私はどちらかというと戦闘的ですね。攻めてる方が好き」

父:
「(私は)若干守備的な戦い、守りを重視する方だと思います。(娘は)戦闘的ですね」

祖父:
「こちらと(孫は)似てるかもしれない」

父:
「似てるでしょうね。相手の弱点を探すのが楽しいという、そこを『いいことないかな』って狙っていくという。(娘と)試合ができるかもというか、実現するかもという楽しみはありますね」

祖父:
「プロになるってことが大変なので、プロになって良かったなって思いますね」

 彩夏さんが使っている碁盤は、祖父の泰正九段がお祝いにプレゼントしました。

祖父:
「なかなかこれだけのものは簡単には手に入らないですからね」

■旅行先のグランドキャニオンで囲碁を打つ

 彩夏さんは、物心ついたときから囲碁に親しんできました。公園だけでなく、旅行先でも。なんとアメリカのグランドキャニオンでも囲碁を打っています。

 実は、彩夏さんは5人兄弟で、全員、囲碁を打つことができます。

 小学生の時には、兄弟3人で出場した団体戦で全国優勝、次第にプロを意識するようになりました。

彩夏さん:
「すごく良い環境に生まれてきたなって思います。周りに強い先生がいっぱいいますし、他の人たちにはない環境があったかなって思います」

■高校でも囲碁部…ではなく『テニス部』の理由

 今は高校2年生、勉強する時間は限られていますが、成績も優秀です。放課後、すぐに家に帰ると思ったら…なんと部活動へ。

 囲碁漬けの日々を送っているわけではありません。

彩夏さん:
「テニスは一番運動するなって思って、好きだったのでテニスにしました」

 体を動かすのが好きという彩夏さん。プロ棋士になっても、部活は続けるつもりです。

 彩夏さんは、名古屋にある日本棋院の中部総本部で3年間、プロの候補生として研修を受け、トップクラスの成績でプロ入りを決めました。先輩棋士も、彩夏さんはまだまだ強くなると期待を寄せます。

奥村靖 棋士会副会長:
「まだ私から見ると完成してない碁ですよ。分かりやすく言うとまだまだ下手くそ、へぼいところがたくさんある。でも結果を残してる。ですからこれからもっともっと色々吸収していったらすごい強くなる棋士になってくれると期待してます」

 彩夏さんはプロになるまで、毎週末合わせて14時間研修。さらに家ではAIを使って研究するなど週30時間以上囲碁の勉強をしています。それでも大先輩の祖父・泰正九段は…。

祖父:
「まだ僕から見ると(研究が)ちょっと足りないかなと。まだまだ頑張ってほしいんですけどね。女流棋士というのがありまして、そこで優勝するというのがまず目標だと思いますけどね」

彩夏さん:
「祖父が言ったように女流のタイトル戦に出場してタイトルをとること(が目標)です。頑張りたいと思います」

 長い長いプロ人生はまだ始まったばかりです。