9月20日にいよいよ開幕するラグビーのW杯。日本では初の開催となります。そのW杯を盛り上げようと、2年半にわたり破天荒な挑戦を続けた男性が愛知県にいます。

 男性の名前は長澤奏喜さん(34)。今回のW杯を含む全8回の大会に出場した25の国と地域の最高峰の頂に、ラグビーボールをトライするという挑戦です。

 高校は地元の名門、大学も難関校、就職先も一流だった長澤さん…。それでも日本で開催されるW杯を盛り上げるため、妻の反対を押し切り、会社も辞めて夢を追い続けました。

 2年半にわたる長い旅…8月、日本の最高峰・富士山へのトライで最後の挑戦を終えました。

■自称・世界初「ラグビー登山家」の破天荒プロジェクト

 愛知県春日井市の長澤奏喜さん(34)、自称・世界初の「ラグビー登山家」です。

 W杯出場チームの最高峰に挑戦する最後の旅、富士山に登る4日前、私たちは豊田スタジアムで長澤さんに話を聞きました。ラグビーW杯の舞台のひとつとなるグラウンドです。

ラグビー登山家 長澤奏喜さん:
「感動ですね、ここで熱戦が繰り広げられると思うと、そのピッチに自分も立っているという事に喜びを感じます。とうとうここまで来てしまったんだという気持ちになります」

 過去にW杯に出場した25の国と地域の最高峰にトライする、この破天荒な挑戦を長澤さんが始めたのは2年半前…。

長澤さん:
「ラグビーW杯のエンブレムが、富士山と日の出が描かれていて、まるで山頂にラグビーボールがトライしているように見えたんですね。世界中のラグビー強豪国にトライして、最後に富士山にトライすれば、エンブレムの物語になるんじゃないかと思って」

■“エリート会社員”…それでも妻の反対押し切り退職し「夢へ」

 慶應大学卒業後、大手IT企業に就職しましたが、奥さんの反対を押し切り、2016年に退職。去年5月、長澤さんの暮らしぶりを取材したときには…。

長澤さん:
「今日鍋を作ろうと思っていまして。私のほうがこんなことをやっているんで…」

 長澤さんには結婚5年目の奥さんと、4歳になる長女がいます。奥さんは2年前、長女を連れて家を出ました。

長澤さん:
「本当にダメな旦那で申し訳ないという、ハハハ…。少しずつ認めてくれている感じはしますね。本当に妻には感謝です」

■自分を好きにしてくれたのが「ラグビー」…だからこそ“恩返し”を

 小学生の時に父親を亡くしたことがきっかけで、悩みを抱えていたという長澤さん。そんな長澤さんを救ったのが高校で出会ったラグビーでした。

長澤さん:
「自分自身を全部出さないとプレーすることもできない。そういう裏表がない自分が初めて人生の中で好きになれた瞬間だったのかなって思って、だからこそラグビーに恩返ししたいなって」

 その後、海外で過ごす経験があった長澤さんは、世界のラグビー熱を知り、日本のラグビーを盛り上げたいという思いが生まれました。

■過酷な世界の最高峰…登山初心者が知った自然の猛威

 登山は初心者だったという長澤さん。最も過酷だったのはカナダの山、今年5月に挑んだローガン山(標高5959m)です。

 途中までは順調に見えましたが、天候不良のため、4700m地点でアタックを諦めることに…。

長澤さん:
「めちゃくちゃ悔しいです…」

 カナダではその後も天候に恵まれず、ローガン山への登頂は断念。別の山に登頂することに。

 アメリカも厳しい登山になりました。去年6月、かつてマッキンリーと呼ばれた北米最高峰・デナリ(標高6194m)では…。

 雪が降り積もり、なかなか進むことができません。

 回復する兆しがなく下山することに。

 しかしその1年後の今年6月、再びデナリへ。

 この時は、2人の仲間と一緒に臨み…。

 見事、登頂に成功しました。

■困難乗り越え、次々と世界の最高峰に登頂…旅の集大成は日本・富士山

 自分自身を変えてくれたラグビーにとにかく恩返しがしたい、その一心で、ほかにも世界各国の山を登ってきました。今年7月までに、宣言通り24の国と地域でトライ。

 2年半のプロジェクトの集大成にと決めていたのは、日本の最高峰・富士山です。

■いよいよラスト…富士山へのトライへ

 8月26日、最後のトライに向け出発です。

長澤さん:
「今まで、24か国の最高峰にトライするというのは富士山への助走であって、本当にやりたいのは富士山にトライすることが、一番やりたかったことなんですね、そして今、とうとう時が来たなと思っています」

 最後の登頂は、長澤さんを応援してきた友人や後輩ら、3人も一緒。

 最後のチャレンジを前に、4人でボールをパスし合います。笑顔のスタートです。

 困難な世界各地の最高峰を制覇してきた長澤さん、最後の登山は余裕さえ感じられます。

長澤さん:「どこから来たの?」

外国人登山者:「カナダだよ」

長澤さん:「ローガン山に登ったよ」

外国人登山者:「本当?」

 道中で出会った外国人登山者にも声をかけ、ラグビーボールで繋がります。

長澤さん:
「なんだかんだしんどいですけど楽しいです」

■日の出とともに山頂へ…2年半の“夢の旅”も最終章

 そして日付が変わり、日の出と共にトライするため、夜明け前に出発。暗闇のなか、一歩一歩踏みしめるよう進みます。

 これまで、自分を変えてくれたラグビーに恩返しがしたい、その一心で過酷な旅を続けてきた長澤さん。

 天候が悪く登頂を断念し悔し涙を流したこと…、大吹雪のテントの中で数日間を過ごしたこと…家族に対しての罪悪感…。それでも世界の山で、多くのラグビーファンとつながることができました。

 そして、ついに…。

長澤さん:
「めちゃくちゃうれしいです、やっと来れましたね」

 この日は、W杯のPRで優勝トロフィーのウェブ・エリス・カップも山頂を訪れていました。 

 その前で…最後の「トライ」!2年半越しの夢が叶った瞬間です。

長澤さん:
「最高のトライができたと思っています。苦しいことが半分以上だったんですけど楽しかったですね。本当にこんなことできると思ってなかったんで、普通に働いて終わると思っていたので。こんな素敵なスポーツはなかなかないですよ、いや本当によかったです」

 1人の男性をここまで熱くしたラグビー。

長澤さん:
「今まで8回、ラグビーW杯開催されていますけど、それ以上に盛り上がる素晴らしい大会になってほしいなと心から期待しています。(日本に)ラグビー文化として浸透してほしいです」

■開会まであと1週間 “思い”繋がる…街で広がるW杯ムード

 長澤さんの挑戦が実ってか、愛知県でも豊田市で大きな装飾がされ、名古屋のラグビー専門店ではこれまではこなかったお客さんが訪れたり、今大会のエンブレムが入った公式ユニフォームがすぐに完売したりするなど熱気はどんどん広がっています。

 大会は9月20日に日本対ロシア戦で開幕し、日本戦は下記のスケジュールで行われます。

・9/20(金)ロシア(東京)
・9/28(土)アイルランド(静岡)
・10/5(土)サモア(愛知)
・10/13(日)スコットランド(神奈川)