惑星や夜景、風景など、どこか不思議な美しさを感じさせる絵画。実はスプレー塗料で描かれています。前職は「塗装工」という男性が、その経験を生かして美しい世界を描いています。

 静岡県磐田市で開かれた工芸品の展示販売会で飾られていた絵…。

 夏景色の中に月、そして桜。1枚の絵の中で春夏秋冬、四季が楽しめる絵です。

 どこか異世界を思わせる風景は、油絵のようにも見えますが、実はスプレーで描かれた「スプレーアート」です。

 スプレーを使いどのように描いていくのか。用意するのは1枚の白い紙。

 ここに何種類ものカラースプレーを噴きつけ、時々ちょっとした手を加えながら、色を塗り重ねていくと…。

 およそ13分で、煌びやかな光を放ち夜空に浮かび上がる、ビル群の風景が完成です。

来場者の女の子:
「すごい…」

来場者の男性:
「遠くから見るとより幻想的に見える」

 このスプレーアートを手がけているのは、愛知県豊橋市の金沢裕介さん(39)。元々は機械部品などの「塗装工」として工場で働いていた「画家」です。

金沢裕介さん:
「スプレーでしか表現できない美しさだったり、それが他の絵の具の絵画や油絵との差別化が図れるのかなと」

 豊橋市内のアパートの1室が、金沢さんのアトリエ。

 塗装工時代からの同僚・迫田さん(28)と一緒にインターネットショップを立ち上げ、金沢さんが描いた原画やプリント商品を販売しています。

 その名も「スプレーアートショップ」。金沢さんが制作、迫田さんが事務の担当です。

 元塗装工ならではの技術とアイデアが、スプレー缶を通じて作品1つ1つに吹き込まれていきます。

 白い光沢紙の上に丸いフタを置いて輪郭を作り、円の内側に塗り重ねた塗料を上から紙でこすると…。

 不思議な模様が浮かび上がり、まるで惑星のような絵が出来上がります。

 こうした作業を繰り返していくと、“宇宙空間”が…。

金沢さん:
「旅先がこういう景色だったら感動するだろうなとか、そういうの思い浮かべながら作品に向かっています」

 展示会で披露したビル群の絵は、青や黄色を塗った後…真っ黒に塗りつぶしていきます。

金沢さん:
「表面の黒は飾りみたいなもので、その下に青や水色が表情として隠れているんですけど、うまくグラデーションが(表面を)削った時に徐々に出てくる」

 塗り重ねた一番上の塗料をヘラで削り取ることで、下に塗られた青い塗料が光を放つように浮かび上がりました。

 これまでに手掛けた作品は400点以上。しかし、商売としてはまだまだこれからだといいます。

代表の迫田浩平さん:
「一応貯金で何とかやっていますね…」

 絵画の販売で生計を立てる道のりはまだまだ厳しいようですが、金沢さんは頭の中で「夢」を描き始めています。

金沢さん:
「企業として成長していくのが夢でもありますけど、スプレー1つで無数の表現ができる、素晴らしさが世にそれこそ広まっていけばと思います」

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