様々な種のサルを飼育する、愛知県犬山市の日本モンキーセンターが開業から60年以上が経ち、今、資金難に直面しています。

 この危機を乗り越えようと施設が始めたのは「資金難の告白」。ホームページで「中古でもいいのでほしい物リスト」を公開し、支援の輪が広がっています。

 2019年も始まった愛知県犬山市の日本モンキーセンターの恒例行事、サル山のたき火。

 使っている薪や、サルたちが食べている芋。

 実はすべて寄付で集まったものです。

 1956年に開業した日本モンキーセンター。

 地元の「名古屋鉄道」の傘下で運営され、かつては多くの人で賑わいましたが、5年前に独立し公益財団法人になってからは閑散とする日が目立つようになりました。

 運営費は入園料や物販で稼いでいますが、老朽化した施設の運営には多額の費用がかかり、センターは今資金難に直面しています。

 飼育員の石田崇斗さんは、クモザルとフクロテナガザルの飼育を担当しています。

飼育員の石田さん:
「来園者も年々やっぱり減ってきてる状態なので、お金がないですが、ないものはどうしようもない。節約がえさの量を減らすとかでサルに負担を欠けるのはやりたくないです」

 お金はなくても、サルに負担をかけたくない、そこでセンターが始めたのは、必要とするものの「寄付」です。

 ホームページには「動物たちの豊かな食生活のためにこんなご支援をいただきました」や「想いはある。絆もある。ないのはお金だけ。」

 資金難を隠すことなく告白。“ほしいものリスト”を公開し、インターネットで寄付を募っています。

 “ほしいものリスト”には、何を、なぜ欲しいのかを掲載。見た人が、代わりに買って寄付するか、新品や中古品を届けます。

 取材に訪れたこの日も…。

Q.何を届けに?
寄付をした男性:
「薪になる木の材料と、パレットをばらしたりするので電動工具をいくつか差し上げに参りました」

 寄付として搬入されたのは、家具の廃材や、商品の輸送などに使う木製の“パレット”。「焚火用の薪として使ってほしい」と持ち込みました。

寄付をした男性:
「僕は地元がここ(犬山市)なので、子供のころから遠足とか、子供会とかで絶対来るじゃないですか。喜ばせてもらったし、楽しませてもらったので、その恩返しに」

 開園から63年、モンキーセンターに思い入れのある人は少なくありません。

 寄付の中には、園内で使う『軽トラック』も。

飼育員の石田さん:
「ダメ元じゃないですけど、やっぱりなんでも聞いてみないとわからないので。本当に来た…と思って、めちゃめちゃびっくりしました」

 サルの餌を運んだり、落ち葉を集めたりと、軽トラックは大活躍。今やセンターの運営は寄付なしでは成り立ちません。これまでに1800点以上、400万円相当の寄付が集まりました。

 また、集めたのは物だけではありません。センターでは「クラウドファンディング」で、施設の改修費用を捻出しました。

飼育員の石田さん:
「クラウドファンディングで、ワオキツネザルたちのために屋根を作りたいという支援のお願いをしたところ、10日間くらいで寄付していただいて実際建てることができました」

 日差しや雨が苦手なワオキツネザルのために作った屋根。新設のための費用50万円が10日間で集まりました。

 順調に寄付が集まる背景には、センターの積極的な情報発信があります。

 普段は見られないような場面を“SNSの専門チーム”が撮影。こまめにツイッターなどに投稿しています。

ツイッター担当の市原涼輔さん:
「若手が、自分からどんどんどんどん発信していこうという姿勢がかなりあるので、本当に動物たちの幸せを思って、モンキーセンターの取り組みとかをいろんな方に知っていただきたいです」

 ツイッターのフォロワーは2万3千人を超え、センターへの“寄付の輪”が広がりつつあります。

 撮影中にも寄付をしてくれる来園者の姿が…。

お客さん:「キウイだけど…」

スタッフ:「ありがとうございます!」

キウイを寄付した客:
「『もらえるものはください」みたいなことを言っていましたので、ちょっと行ってみようかなということで来ました」

飼育員の石田さん:
「心の優しい方々が世の中にはたくさんいるんだなってのを改めて実感しますね。うれしい、びっくりもするんですけど、同時に皆さんの期待に応えるきゃなっていう責任も感じます」

 850頭以上のサルが暮らす世界有数のサル園「日本モンキーセンター」。“たき火のように暖かい支援”で、運営されています。

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