職場で女性にハイヒールやパンプスの強制をやめようと呼びかける「#KuToo」。SNSなどで広がり、2019年の流行語大賞のトップ10にも選ばれるなど、多くの共感を呼びました。
呼び掛けた岐阜県多治見市出身の石川優実さんはこの活動で「男性と女性で選択肢は同じだけあるべきで、そこに健康や精神に被害がでることは見直していきたかった」と話します。
石川さんは今回、「女子生徒の黒タイツ禁止」という校則を生徒たちの活動で廃止にした岐阜県の高校を取材しました。
■“白線流し”で知られる伝統校の不合理な校則「黒タイツ禁止」

石川さんが訪れたのは岐阜県高山市の県立斐太高校、明治時代から130年以上続く名門校です。
斐太高校は、ドラマにもなった伝統行事で知られています。

卒業の日、学生帽の白線と、セーラー服のスカーフを結んで川に流す「白線流し」。

女子生徒たちは雪が降る中、素足に白い靴下。伝統だから、フォーマルではないから、そんな理由で黒タイツは禁止でした。

生徒手帳を見ると、校則で許されるのは、ベージュのストッキングか、スラックス。しかし、ストッキングは薄くて寒い、セーラー服の下にスラックスはかっこ悪い。

石川さん:
「本当は黒タイツ穿きたいなみたいな声はありましたか?」
1年生の女子生徒:
「何でダメなんだろうみたいな 意味ないよなみたいな」
別の1年生の女子生徒:
「めちゃめちゃ寒かったです」
2年生の女子生徒:
「中学校のときは、冬は黒タイツを穿いてって言われてたので、高校だとストッキングだって話を聞いて…」
石川さん:
「最初どう思いました?」
2年生の女子生徒:
「そんな校則あるんだってすごく驚きました」
1年生の男子生徒:
「女子は素足だと寒くて困っているので、伝統っていうのだけを理由にして寒さを我慢するっていうのはちょっと良くないかなと」

石川さんは校則について、「何のためにこれはあるのかって大人がもうちょっと深く考えていれば、変わってくはずのことなのに決まりだからって来ているものだと思うんですよ。見た目の統一を優先してしまうっていうのは日本人の悪いところじゃないかなって思います」と話します。
■「なんでダメなの?黒タイツ」…理由が不明な疑問に大人たちも「合理的な理由はない」と納得

斐太高校の「黒タイツ禁止」。この校則を去年、廃止する動きがありました。
石川さんは、当時の生徒会のメンバーに話を聞きました。

当時生徒会長だった竹内太一さん「生徒会の先輩方が、いま3年生の方が最初にその校則を変えようっていうきっかけを作ってくださって、僕たちの代に引き継いだ形です」
生徒会が学校と相談の上、全校生徒や保護者にアンケート調査した結果…。

黒タイツ着用に賛成する生徒 94%。
「授業中も寒くて集中できない」(女子)
「見ていて寒そうだ」(男子)
といった意見が集まりました。

結果を受けて生徒たちは学校に要望書を提出、生徒会が黒タイツ着用を求める理由は3つ。
「防寒対策のため」
「快適な学習環境に資するため」
「経済的理由のため」
この機会にすべて校則について、保護者と卒業生も一緒になって話し合うことになりましたが、
全員を納得させたのは、竹内さんの言葉でした。

教頭の村田和宏さん:
「生徒会の会長(竹内さん)から、『合理性や必要性を考えたときに、“黒がダメだ”という理由っていうのは当てはまるんだろうか』というような意見が出されました。同窓会の方々、育友会の方々、それから職員も参加しておりましたが、いずれも黒タイツの着用についてダメだという合理的な理由はないやろうと」

そして去年11月、黒タイツは正式に認められました。
■性差別をなくす…校則の「男子/女子」削除など全体的な改正に着手

さらに性別による差別をなくすため、校則から「男子」「女子」という言葉を削除、ほかにも様々な校則について、見直しました。
元生徒会長の竹内さん:
「生徒自体が校則を変えたいっていうよりは、自分たちの生活を良くしたいとかそういう気持ちでやり始めたのがきっかけだと思っているので」
石川さん:
「校則を変えることが目的じゃなくて、自分たちの生活を良くすることが目的だからたまたま校則を変えることになったけどということ?」

竹内さん「そういうことですね」
■“白線流しは白靴下”で…生徒たちが決めた「伝統を守る」

そして、“伝統”の「白線流し」については、黒タイツは、生徒議会で「否決」。生徒たち自身が、卒業式は伝統の“素足に白靴下”と決めました。
竹内さん:「自分たちが活動していって、それが達成できたときに周りの仲間が喜んでくれた顔を見るとすごいうれしいなと思います」
取材した石川さんは、
「私が学生の時はこういう行動に出るなんて考えられなかった。同じ思いで頑張って声をあげて、『マナーや校則だから』ということの一歩先に行ったということで素晴らしいなと思います」と話したうえで、「白線流し」の時には「伝統的なスタイル」を生徒が自分たちの考えで残したことについて、「やはり自分たちがどうしたいかというのを一番大事にしなければならないと思うので、自分たちでこの日だけは伝統を守ろうと決めたということが意義のあることだと感じます」と重要性を指摘しました。

疑問や課題について、石川さんは「そこで止まってしまう人は多いと思う。ダメだといわれているけど、言われているから仕方ないかと止まってしまう人はすごく多いと思いますが、じゃあなんでダメなのか、それで健康を害したりするならば、ちゃんと伝えて変わることがあるのではないか。大きなアクションをしなくてもひとつツイッターでつぶやくとかだけでもいいのでぜひ少しアクションしてほしい。一歩そこで立ち止まって深く考え抜くことが大切なんじゃないかなと思います」と話しています。