プロ野球の本拠地であればどこにでもある「聖地」のお店。例年であれば既に開幕し、賑わっているはずですが、新型コロナの影響で外出自粛も重なり、二重の苦境に立たされています。

中日ドラゴンズの本拠地、名古屋で聖地と呼ばれる中華料理店は、今、テイクアウトで凌いでいますが、味が恋しくなった常連客らが店に足を運んでいます。

 名古屋市千種区の中華料理店「ピカイチ」。

とろみをつけた豚肉に、サクサクに揚げたゴボウを合わせた「ごぼうと細切肉の炒め」。

薄くスライスした大根と豚肉を、鶏ガラベースのあんで仕上げた「大根と白肉の煮込み」。

そして、星野仙一さんも愛した「イカの口と野菜の炒め」が看板です。

地元はもちろん、多くのスポーツ選手や芸能人に愛される名店で、ドラゴンズファンの聖地としても知られています。

 2代目の兵頭忠保さん。

店は兵頭さんの妻や姉、義理の兄と切り盛り。

そして、母親で女将の勝子さんも店に立ちます。

例年の今頃はプロ野球が開幕し、連日賑わいますが、新型コロナウイルスの影響で今年は厳しい状況です。

女将の勝子さん:
「ずっと働いてきたから仕事ができないのも辛いし、みなさんと会話がない、それがつらいね」


 「ピカイチ」は、名古屋をコンサートや公演で訪れた際に、立ち寄る著名人も多いことで知られています。

女将の勝子さん:
「アーティストさんが来た時に打ち上げをやってくれる。会いたいですよ、だけど今は我慢しなあかんでしょ」


 店は緊急事態宣言後、深夜までだった営業時間を短縮しました。コロナの影響で3月から客足が減少し、4月から力を入れているのが「テイクアウト」です。

ラーメンなどの汁物以外、およそ100種類の料理を扱っています。

2代目の忠保さん:
「店内でももちろん食事はしていただけるんですけど、ありがたいことにお持ち帰りのお客さんが多いもんで。8対2ぐらい、お持ち帰りの方が多いですね。もちろん仕事量は減っていますけど、こうしてやらせていただけるのは本当にありがたい。特に家族が一番敏感に感じている言葉に出さなくても、助け合ってるなというのは本当に思います」

 午後5時半、開店。早速、注文が入っていた「ごぼうと細切肉の炒め」を作ります。

注文した人もやってきました。

テイクアウトの男性客:
「ちょっとの間、時間が空いちゃうと、ピカイチの味が恋しくなるもんですから。我慢しきれずに。1日も早く元に戻っていただきたいなと思います。踏ん張りどころだと思いますから、微力ですけど協力できればなと」


近くに住む常連の女性は、テイクアウトで「イカの口と野菜の炒め」を注文。

テイクアウトの女性客::
「コロナの影響で外食を控えた方が良いかなと思って、お家で食べたいなと思ったのでテイクアウトにしました」


さらに、常連の姉妹は、それぞれの家庭の夕食にテイクアウト。

女将の勝子さん:
「小学生くらいから知っている子たちなの」

そして、会社帰りのサラリーマンも…。

テイクアウトの男性客:
「自炊も面倒くさいから今日は買って帰ろうと。普段食べている味がやっぱり食べたくなっちゃう」

忠保さんの妻:
「やっぱり来て下さるお客様もいらっしゃいますし、本当に1組、2組、数人でもこうやって私たちの方を思ってくださる方がいる限りはやっていきたい」

忠保さんの義兄:
「仕事はできるのは励みといいますか、お客さんが来ていただけるので、それを励みにやっています」

 この日は、テイクアウトで10件の注文。

「ピカイチ」の味が恋しくなり、足を運ぶ人たちの姿がありました。

2代目の忠保さん:
「なんとか、なんとかしのいで、段階的にまた、お客さんも来やすくなるでしょうから。今池も賑やかになっていくことを願っています」

女将の勝子さん:
「私も長いことお店をやっていますけど、以前のピカイチを絶対取り戻せると思っております」