三色だんごが機械からポコポコ出てくる動画が、SNSで1か月の間に436万回以上再生され、話題となりました。発信元の愛知県の和菓子店を取材してみると、ほかにもユニークな商品が見つかりました。

※動画はSNSにアップされたものなど、だんご製造の行程の一部です。ナレーションはありません。

■1か月で436万回再生された“だんご動画” 発信は“創業70年”の和菓子店

 3月にSNSで話題になった、だんごが機械からポコポコと出てくる動画。1か月で436万回も再生されました。
 
 この動画をアップしたのは、愛知県豊橋市で70年続く和菓子店「お亀堂」です。

 豊橋駅から南へ車で10分ほどのところに、「お亀堂」の本社と直売店があります。

 昭和25年に豊橋市内で甘味処として始まり、現在は直売店を含め、東三河地方に8店舗を展開。

 三河の人たちには、なじみのある和菓子屋さんです。

 朝、工場をのぞいてみると、菓子を製造していました。

 自ら工場に立って作業をしていたのは、社長の森愼一郎さん。

 作っていたのは、多い日には1万5000個も出るという看板商品の「あんまき」です。

 和菓子店では例年、卒業式や入学式がある春が一番の書き入れ時ですが、今年は新型コロナの影響で自粛が相次ぎ、売上は2割ほど減りました。

 そんな中、SNSで公開したのがあの動画。工場の一角で、この日も、三色の花見だんごを大量に作っていました。

 動画は10秒間、ただただ、だんごが出てくるだけですが、そのポコポコと出てくる様子に、見た人からは「なんかおもしろい」「何回も見ちゃう」といった反応があり、わずか1か月で436万回も再生されました。

 仕組みは、三色の生地を機械にかけると、丸められて串に刺さって出てきます。

 このテンポのよさが、確かに見ていて気持ちがいいのです。

 ところでこの動画をアップした理由は?

お亀堂の森社長:
「花見を自粛ということで、なかなか外に花見に行けない人に見てもらって少しでも花見の気分を味わってもらえたらと」


 もともと 店のキャラクター「あん巻き太郎」の名前でツイッターをやっていましたが、動画はほとんどアップしていませんでした。

 ところが、コロナウイルスの影響で花見自粛の動きが出たため、「だんごを見て花見気分を感じてもらえたら」と、3月初めにアップ。大きな反響を呼びました。

■看板の「もっちりあん巻き」は根強い人気も“年間20以上”の新商品

 午前9時に開店すると、地元で人気の店とあって、すぐに人がやってきました。

男性客:
「月に2、3回(は来る)。やっぱりあん巻きだね」

女性客:
「好きなのはやっぱりあん巻きですね。もっちりしていておいしいです」


 やはり、人気は看板商品の「あんまき」のようです。

 そのころ、森社長は店舗2階の会議室で新商品の開発会議に出席。

 豊橋で栽培が盛んな食用花を使った菓子を考案していました。

 「お亀堂」では、こうした商品開発会議を積極的に行い、年間20以上の新商品を、毎年生み出しています。

 また、森社長自らが店舗を回り、試作品を確認するのが日課です。

森社長:
「今の時代ですと現状維持はなかなか難しくて、時代の流れでインスタ映えとか、年寄りの感性ではなくて若い子たちの意見とかを加味していくと、やっぱりいろいろなものをやっていく必要があるかなって考えています」


 森社長は老舗といえど、生き残るには進化とアピールが必要だと考えます。

 そこで小学生向けの和菓子教室を開いたり、お店のキャラクター「あんまき太郎」の着ぐるみを作ってイベントで露出するなど、若者へアピールをしてきました。

 こうした姿勢が日ごろからあるからこそ、あの動画が生まれたのかもしれません。

■開発中の新商品は「ブラックサンダー」と「あんまき」のコラボ第2弾!

 午後は「ブラックサンダー」で知られる「有楽製菓」の河合伴治会長と打ち合わせに。

 お亀堂と有楽製菓はコラボして作った「ブラックサンダーあんまき」。モチモチッとしたあんまきの生地で、ブラックサンダーのサクサクッとしたチョコを包み、雷模様を焼き印しています。

 このコラボ商品が3月、地域の特性を生かした食品を競い合う「優良ふるさと食品・中央コンクール」で賞を受賞しました。

 「有楽製菓」は、豊橋市内に製造工場を構えていることから、「一緒に地元を盛り上げよう」と、「お亀堂」のコラボ開発の打診を受けたそうです。

 この商品は東三河でしか買えないため、希少価値が上がり、発売から3年で160万個を売り上げる大ヒットとなりました。

 そして今回、その第2弾の打ち合わせとして、森社長が「ブラックサンダー饅頭」なる試作品を持参していました。

 これも、饅頭の生地でブラックサンダーのチョコを包んだものです。実はこの商品、もう4回目の試食。果たして…。

有楽製菓の河合会長:
「(試食して)どうしてもあんこの水分を吸って(ブラックサンダーが)柔らかくなる。これだとまあそこそこかなって…」

 感想を聞いた森社長は思わず苦笑…4回目もまだまだ厳しい反応でした。

お亀堂の森社長:
「ブラックサンダーあん巻きの時も、毎週、河合会長と2人で打ち合わせをやっていたんですよ。有楽製菓で、表現は良くないけど、一番口うるさいのは河合会長。商品に対して一番こだわりを持っている」 


 「良い商品を作りたい」と、トップ同士が率先して意見を交換。話題を呼んだ動画のウラには、老舗であることに胡坐をかかず、広く和菓子の魅力を伝えたいという強い思いがありました。