新型コロナウイルスの影響で、日常の様々なシーンで「オンライン化」が進んでいます。

 その1つが「病院の診察」。これまでは通院中の患者に対してしか認められていなかった「オンライン診療」が、4月10日以降、初診から利用できるようになりました。

 院内感染が防ぐことができるうえ、通院の手間も省ける。良いこと尽くめのように思えますが、導入には意外な課題もありました。

■多い日は1日約10人を“オンライン診療”…利用者からも好評

 岐阜市の「あわのこどもクリニック」。

 診察室には医師と看護師のみ。患者の姿はありません。

 パソコンのモニターを通して診察を行う、「オンライン診療」の真っ最中です。

 このクリニックでは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月から院内での滞在時間を極力減らすよう対策をしてきました。

 診察の直前まで車で待機してもらったり、窓を換気のために開けっ放しにしておくなどしてきましたが、来院する患者の数は半減。「オンライン診療」に踏み切ったといいます。

あわのこどもクリニックの面家院長:
「今回コロナになって、受診控えというのが起きるようになってきて、一部の方はこれで充分に診察が行えることが分かったので、これを地域の人に届けたいなと思って」

 多い日は一日10人ほどがオンラインに。

 この日、診たのは、6か月の女の子。「あせも」がおさまらないとのことで受診しました。

面家院長:
「ちょっと腰の辺見せてもらってもいいですか?」


 患者にスマートフォンのカメラを操作してもらいながら、気になるところを診ていきます。

女の子の母親:
「まだちょっと残っている感じが…」

面家院長:
「うん、本当だね、確かに確かに。どうしても月齢的にも、よだれが垂れちゃったり、指をもっていって荒れやすい場所なので…」


 見落としがないよう、丁寧におよそ10分間。通常の対面方式と時間的にはそれほど変わりません。診察の際、気を付けていることは…。

面家院長:
「画面越しですので、気持ちがうまく伝わるのかなと思って。ですので、あえてちょっと分かりやすいように言葉をはっきりしゃべることや、身振り手振りを大きくしています」

 初めてオンライン診療を利用したという、女の子のお母さんは…。

女の子の母親:
「コロナがあって、(子供が)まだ幼いのでうつったら困るなと思って。(病院に連れて行こうとすると)車に乗るのも嫌だったりとかする可能性もあったりするので、安心感があってよかったと思います」


 支払いはクレジット決済。病院から薬局に処方箋が送られるため、最寄りの薬局で薬を受け取ることができ、最後まで来院する必要はありません。

 肌のできものを診てもらった、男の子のお母さんも…。

男の子の母親:
「カメラを通じて診てもらいたいところを診てもらえるので、すごく助かっています。お薬も(自宅の)近くで受け取れるので、これからも使っていきたいです」

■診療所で“オンライン”が広がらないワケ…国の調査でも“利用者の50%以上”がその後の利用を希望も

 利便性などから活用が期待される「オンライン診療」。厚労省のとったアンケートでも、経験した人の半数以上が、今後もオンラインを希望しているという結果が出ています。

 一方で、岐阜県内におよそ1600ある「診療所」のうち、オンライン診療を実施しているのはわずか21軒。導入は進んでいません。

 そのわけは…。

岐阜県医療福祉連携推進課の担当者:
「ビデオ通話だけで診察を済ませるわけにはいかないという風に考える先生も、おみえになるところでありまして。もし重大な疾患等があって、それを見逃した場合には、医師の責任を問われるということも」


 ほかにもシステムの導入費用が高いことや、個人情報の流出といったセキュリティ面への不安などの声があがっているといいます。

 本格的な広がりはまだこれからの「オンライン診療」。「あわのこどもクリニック」の面家院長は…。

面家院長:
「困っている患者さんの受診控えとかをサポートする、これも一つの僕らのできる社会貢献かと思っています。国としても整備されていく中で、もう少し医療として、成立していく診療のスタイルになっていくのではないかと期待はしています」

 また、「診療報酬が少ない」ことをもあげられています。

 オンライン診療は、この診療報酬が低く設定されていて、場合によっては対面診療の半額程度になるため、経営面を考え、導入を控えているという病院が多いようです。