全国の移動自粛も解除されましたが医療現場では依然、新型コロナウイルス感染に対する緊張が続いています。

愛知県北名古屋市の済衆館病院では感染者は受け入れていませんが、2次救急病院として24時間体制で救急外来を受け入れています。

この病院では今年4月に救急搬送されてきた患者に入院後に陽性が判明、さらに対応した看護師に感染が広がり、対策の強化を迫られました。

一刻を争う救急の現場で、病院内に新型コロナウイルスを持ち込ませないため、病院は新たな対策を始めました。

■無症状だった患者が2日後に陽性判定…病院を襲った“最悪の事態”

 369の病床を持ち、2次救急病院として24時間体制で救急患者を受け入れている愛知県北名古屋市の済衆館病院。

 緊急事態宣言が出される直前の4月上旬、全身の倦怠感を訴える50代の男性が救急搬送されてきました。

この時も検温などを行いましたが、発熱など新型コロナ特有の症状は見られませんでした。医師らが普段通り治療にあたり、男性はそのまま入院。

 しかし徐々に症状が悪化し搬送から2日後、PCR検査で陽性が判明しました。

 さらにそのおよそ2週間後には、男性を担当していた50代の女性看護師にも感染を確認。院内での感染という、病院側が最も恐れていた事態になりました。

済衆館病院の川崎院長:
「(当初は)まさかコロナだというような状況じゃないので、それが短期間のうちに呼吸状態が悪化した。患者さんとナースが感染したということで、これはどうしたらいいものかと」

済衆館病院では、ほかにも40代の男性が入院翌日に陽性と判明し、その後担当した職員2人も感染。

いずれのケースでもその先の感染拡大は防いだものの、病院はおよそ2週間にわたり救急外来を含むすべての外来を休止しました。

済衆館病院で感染対策を取り仕切る勝野医師にとっても想定外の事態でした。

済衆館病院の勝野医師:
「一生懸命マニュアルを整備してやってきたにもかかわらず、非常にショッキングでした。もう一度考えざるを得なかったです」

病院側は、建物の入口に職員を配置して来院する人に検温と問診を徹底。

発熱の症状がある人は、病院の駐車場に設けたプレハブ小屋で診察するなど、新型コロナウイルスを「入れない」ための対策を強化しました。しかし…。

勝野医師:
「救急車は積極的に受け入れている病院ですので、そうしますとやはり潜在的なコロナの患者さんも一定数はいるだろうと」


■1分1秒を争う救急現場…感染拡大対策で取り入れたのは「CT検査」

 1日平均10件ほどの救急搬送がある済衆館病院。病院の使命として、受け入れを拒否するわけにはいきませんが、1分1秒を争う救急の現場で時間がかかるPCR検査で判定している猶予はありません。

そこで導入したのが、「CT検査」です。

勝野医師:
「前は一番最初からCTを撮る対策とってなかったものですから、それで(コロナの)診断の遅れとかにつながったものですから、最前線の、一番最初の関門です」


肺のCT画像は患部と合わせて撮影できるうえ、診断までわずか10分ほどで済むため、救急の現場に適しているといいます。

これは感染者と感染していない人の肺を撮影したCT画像。

勝野医師によれば、感染者には、無症状でも「すりガラス状」の独特な影が見られるということです。

勝野医師:
「自動車で来院された方で発熱を主訴として来院された方はまずはCTを撮って、その間は自動車内で待機していただきました。それでCTを撮ったところ、影があるということで」


影が確認されたこのCT画像の患者は、感染の疑いがあるとして感染者を受け入れている別の病院へ移送。その後、PCR検査で陽性と判明しました。

まずCTで調べる。この対策で新型コロナウイルスを病院内に入れないことに成功しました。

■3つの対策を強化…患者も医療従事者も安心できる病院づくり

川崎院長:
「コロナウイルスを病院の中に入れない、そしてそういう患者さんに接しても職員がうつらない、万が一、入ってしまった場合にはそれを広げないというこの3つの対策ですね。それを徹底的にやったつもりです」


済衆館病院では第2波に備え、「入れない」「うつらない」「広げない」の3つの対策を強化。CT検査は「入れない」ための対策ですが、一刻を争う容態であったり妊婦や子供などは放射線の影響があることなどから、行えない場合もあります。

そこで、「うつらない」ために職員に防護服の徹底と正しい着脱方法の訓練を実施。また、万が一の際の「広げない」対策として、気圧を低くしてウイルスが外へ拡散しないようにした「陰圧室」も設置しています。

 取材した日、股関節の痛みを訴えて80代の女性が救急搬送されましたが、この女性をCTで、患部と合わせて肺も撮影しました。

勝野医師:
「コロナのようなすりガラス状のような所見ではないと思います。まず大丈夫だと思います」


女性に感染の疑いは見られず、そのまま入院、治療することになりました。

患者も医療従事者も安心して利用できる病院へ。勝野医師は、対策の改善と徹底を続けていくと話します。

勝野医師:
「まだ第2波、第3波が予想されている中で、感染対策に対して非常に大きく見直すチャンスだととらえて、今は前向きに考えてやっております。二度とこんなこと(外来中止)はできないなと思っておりますので、病院一丸となって対応していかないといけないと思っております」