新型コロナウイルスは学校の授業にも大きな影響を与えていますが、対面指導がメインの音楽を学ぶ学生にとっては特に深刻です。大勢が密集した状態で行われるオーケストラの授業での対策を取材しました。

■名古屋芸大がオーケストラを再開…特注のつい立で感染対策

 名古屋芸術大学で行われたオーケストラの授業。新型コロナの影響でオーケストラの授業はしばらく休みとなりましたが、6月にようやく再開。みんなで音を合わせるのは、この日が3回目です。

 授業を可能にしたのが、縦1.2メートル、横1メートルのビニールの衝立。サックスやフルートなどの管楽器からは飛沫が出る可能性があるため、特注した衝立で1人1人の前後左右を遮る対策をしました。

女子学生:
「こんな衝立があって演奏することは人生で初めてだったので、『邪魔だな』というのが一番大きいです。指揮の先生を見るのがすごく遠く感じるのと、隣同士も聞こえ方が違ってきたりするので」


 音が聞きづらい、指揮者が見えづらい…。最初は戸惑いもあったそうですが、この壁があるからこそみんなで音を出せる喜びを取り戻しました。

男子学生:
「この壁があるおかげで、少人数ですけどみんなで楽器が吹けるというのはやっぱりありがたい」


 オーケストラは何人かの演奏者で譜面を共有したり、集まって演奏したほうが音のバランスが取りやすいいため、密集した状態で演奏されます。

しかし今では距離を保つため、70人ほどの学生を3グループに分けて授業を行うことにしました。管楽器以外のメンバーはフェイスシールドやマスクをつけて演奏します。

フェイスシールドをする女子学生:
「最初は『なんで?』って、1人だけ違うなって思っていたんですけど、やっているうちに『もうどうでもいいや』ってなりました。みんなで集まって、予防しているというのをちゃんと見せなきゃいけないと思うし」


■声楽の授業では部屋を隔てる大きな仕切り

 声楽の授業では、部屋を2つに隔てるように大きな仕切りが設置されました。

名古屋芸術大学の松波教授:
「やはり声楽は大きい声も出しますし、そして飛沫が遠くまで飛ぶ。1メートル少しぐらいでは小さいかなと思って」


歌のレッスンの途中、先生がなにやら指さしています。

指していたのは、天井とシートの間にある隙間。これは、この仕切りを超えるほどの大きな声で!というサインです。

女子学生:
「先生の声はすごく飛んでくるんですけど。私たちの力がそれでつくかなって思うので、良い方法だなって思っています」


 はじめは「なんだか変」と思っていた透明な壁。しかし、いつかはみんなで思い出話にできるよう、手探りではありますが前に進みます。

遠藤准教授:
「合奏するかどうか迷ったんですけど、そんな中でもこうやって工夫すれば何とかやっていけるかなということでできているので、学生たちも演奏する喜びはあると思うので、よかったと思います」