公共の場所に置いてあり、自由に弾くことができるストリートピアノ。7月には中部国際空港に設置されました。新型コロナウイルスの影響で人通りが寂しい中ですが、一体どんな人が演奏に訪れるのでしょうか。一日観察してみました。

■閑散とした空港に響く音色…誰でも弾けるグランドピアノ

 愛知県常滑市にある、中部国際空港。この夏は、新型コロナウイルスの影響で閑散としています。そこにピアノの音色が響きます…。

男性客:
「見ていて気持ちが和むというか、見られてうれしい」

別の男性客:
「すごいキレイだと思います。心が洗われる。生で(ピアノの)音が聞けるのは、本当に素晴らしい事だと」

 7月23日から第1ターミナル4階にグランドピアノが置かれました。誰でも自由に弾くことができるストリートピアノです。

アイボリーホワイトのボディを青空に浮かぶ雲に見立て、空港のキャラクターたちがメロディーに合わせて楽しそうに踊っている姿が描かれています。飛行機とピアノを弾こうをかけ合わせ、「ひこうピ」と名付けられました。

中部国際空港の担当者:
「最後に(音楽)イベントを開催したのが2月の15周年のイベント。それ以降は全くイベントが出来ない状況になってしまい。(その中で)いらなくなったピアノを寄贈したいというお話をいただいて、今回置くことになりました」

■楽しい気持ちを少しでも…こんな時だからこそ弾く人たちの思い

 8月8日土曜日午前10時。搭乗を待つ人が徐々に増えてきました。すると一人の男性が「自由に弾いて下さい」という看板をじっと見てからピアノの方へ。この日最初の演奏者です。

演奏した会社員の男性:
「ニュースでこの“ひこうピ”が、設置されているというのを見て、これから地元の札幌に帰るんですけど、触ってみたいなと。最初は『旅立ちの日』。空港なので、ちょっと旅の感じを出そうかなと。例年だと1番混んでる時間帯ですけど、全然人がいないので寂しいですね。帰省とかで皆さん楽しい気持ちでいると思うので、片耳で聴いてもらって、楽しい気持ちを共有出来たら」

 続いて現れたのは、母親と京都から来たという中学生。3月まで愛知に住んでいたそうですが、進学を機に京都へ。久しぶりに愛知に帰ってきました。

演奏した中学生:
「空港ピアノやストリートピアノがあったら行こうと思って。中部国際空港にあるということだったので。鉄道が好きで、名鉄に乗りに来るついでに、ここにも来ようと思って」

中学生の母親:
「前みたいに、たくさん人が空港に来られるように早くなるといいですね」

■空港で働く人たちに元気を・・・その音色が閑散とした空間に癒し

 中部国際空港に設置されたストレートピアノ。多い日には50人ほどが弾きに来るそうです。

 午後、空港がある常滑市内に住むという女性がやってきました。

演奏した女性:
「今からバイトです。3時からバイトです。この空港の中で、飲食店です。ちょっと時間があったので、バイトの前に」

 ピアノがあるフロアには飲食店が並びます。しかし新型コロナの影響で休業を余儀なくされる店も少なくありません。

中部国際空港の担当者:
「コロナが始まってから閑散としている雰囲気だったので、こういう音楽が流れることによって、テナントで働く方にとっても癒しの空間になったりして、いいなと」

飲食店で働く男性:
「ピアノ弾いてる人がいたりすると、変わりますね。上手い人が弾いていると、店の前まで来て見たりしますね」


 ピアノの音色は、空港で働くスタッフも癒やしていました。

演奏した女性:
「寂しさはありますよ。せっかくイベントみたいな感じで(空港ピアノが)できたけど、人がそもそもいないっていうのは、ちょっと寂しいかなと思います」

■広い空間で弾けるのがただ楽しくて…遠くは奈良までストリートピアノを求めて

 そしてまた一人、ピアノの元へ。

演奏した女性:
「ネットでここが開かれたということを聞いて、来てみようと思って。パート保育士をしながら合唱団で伴奏の仕事もしていて。今は趣味で自分がピアノを弾くのが楽しくて、あちこちストリートピアノを訪ねて」

 愛西市に住む彼女。ここ数ヶ月、人が行き交う場所に置かれたピアノを演奏して回っていました。豊橋市や岐阜県、遠くは奈良県まで向かったこともあったそうです。

演奏した女性:
「家でただ弾いているよりは練習しようっていう気になるし、ちょっとうまくなると楽しい、ただ弾くのがうれしくて。グランドピアノだとすぐ飛んできたくなるっていうくらい、今ハマっていて、この広い空間で弾けるっていうのは。まだピアノ仲間がいなくて、誰かとやれるといいんですけど、今は1人で訪ねています」

 中部国際空港に置かれたグランドピアノ。今日も誰かが弾いているかもしれません。

※この動画にナレーションはありません