名古屋市西区の「ホテルナゴヤキャッスル」は、全国でも珍しい、お城の目の前にあるホテルとして親しまれてきました。このホテルが建物の老朽化などに伴って一時休館し、4年後の再開を目指します。

■休館まであとわずか…賑わう「ナゴヤキャッスル」

 名古屋市西区の「ホテルナゴヤキャッスル」は、目の前に、庭に見立てた名古屋城が広がり、客室からは、市内の景色を一望することができます。

 名古屋屈指の人気のホテルで最上階のレストランは、この日も賑わっていました。

女性客:
「名古屋では一番じゃないかと思っています。名古屋っていったら“キャッスル”っていう」

男性客:
「32年前に結婚式挙げて、娘も3年前に結婚式をここでやりましたので。無くなるのが寂しいわ」

 ■世界に誇るホテルをこの地に 49年の歴史…日本初の「ガラス張りエレベーター」も

 高度経済成長期真っただ中の1964年。東海道新幹線が開通。その5年後の1969年、「世界に胸を張るホテルをこの地に創る」を合言葉に、財界人が中心となり建てられました。

 日本初となるガラス張りの「展望エレベーター」や、名古屋城を眺めながら入る「屋外プール」など、当時としては斬新で画期的。一躍、脚光を浴びました。

 また上皇・上皇后さまが名古屋にお越しの際に利用されたことから、皇室御用達のホテルとしても知られます。

 最高級の「インペリアルスイートルーム」は広さ146平米、1泊33万円。

名古屋城を一望できるリビングルームとベッドルームが自慢。

これまで国内外の数々のVIPが利用してきました。

■ここで働くこと自体が私の誇り…夜の責任者として現場に立ち続ける 開業当時から働くホテルマン

 スタッフの尼子訓さん(69)。51年前の開業当時から働く1人で、9月の休館とともにホテルマンを引退します。

尼子さん:
「学生時代にアルバイトをやりまして、そのころホテルは名古屋に2つぐらいしかなくて、非常に珍しかったということもあって、ここに来ました」

 当時、ホテルは一部の富裕層しか利用できなかった特別な場所。大学生の時にキャッスルができ、憧れからアルバイトを始めたといいます。

 60歳で定年後再雇用され、今は夜の責任者「ナイトマネージャー」として働きます。午後4時半から翌朝の9時半まで、週2回泊まり込みの勤務です。

 最上階11階のレストランは、新型コロナの影響で一時客足は遠のきましたが、休館を前に常連客が訪れ、7月と8月のレストランの売上は、去年より好調だったといいます。

尼子さん:
「今日はよく入っていますね、おかげさまで。一時期はお客さんの入りも良くなかったですね。最近ちょっと戻ってきましたね」

尼子さん:
「嬉しいですね。ホテルの賑わいが戻ってきた感じで」

■コロナの影響で「非常に寂しい」休館に

 レストランの奥にある、今は物置となった場所。

尼子さん:
「ここは以前の“展望エレベーター”です。今はもう動いておりませんけど。オープン当時はスケルトンのエレベーターが11階まで直接お客様が上がれるという形になっていました」

 20年前まで動いていた、キャッスルの名物「展望エレベーターのホール」はまだありました。

 2階の宴会場、この日の宴会は全て終わっていたため、フロアは真っ暗です。

 1000人を収容することができる宴会場には、開業当時から大きなシャンデリアがかけられていますが…。

尼子さん:
「コロナの影響でほとんど4月以降、宴会場は稼働していませんので、ちょっと寂しい限りですけどね。もっと大々的に休館のイベントを行えればと思っていました。お客様に対しても、感謝の言葉を述べることもできずに終わってしまうということは非常に寂しい限りです」

■キャッスルというホテルは私の全て…ホテルマンで本当によかった

  閉館を前に、ホテルのロビーには客から寄せられたメッセージが掲示されています。

(寄せられたメッセージ)
<たくさんの夢をありがとう。たくさんの思い出をありがとう。またスタッフの皆様と会える日まで楽しみにしています>

<両親、家族の歴史とともにあったキャッスル。ここに来れば間違いなし、心穏やかになれたキャッスルありがとう>

尼子さん:
「やはりキャッスルは愛されていたと思いますね。キャッスルで働くこと自体を、誇りに思っておりましたし。キャッスルというホテルは私の全てだと思っています。ホテルマンとして非常によかったと思っていますね」

 ホテルナゴヤキャッスルは9月いっぱいで、一旦51年の歴史に幕を閉じます。宿泊は9月29日まで、レストランなどの飲食店は30日のランチタイムまでの営業となります。