秋に食べたくなるモンブラン。本場フランス仕込みの極上の逸品が名古屋市西区にあります。洋菓子世界大会で2位の成績を収めた若きパティシエの手間暇をかけた丁寧な手仕事に迫りました。

■1日限定50個のモンブラン

 名古屋市西区。地下鉄浄心駅から徒歩5分のところにある、「パティスリー サヴール オン ドゥスール」。2019年4月のオープン以来、客が絶えない人気洋菓子店です。

女性客:
「独特の香りがあって美味しいです」

別の女性客:
「他のケーキ屋さんも買ったりしているけど、また食べたいなと思って戻ってきます。お土産で買って、ここは自分の分も買います」

 手掛けるのは、森山康さん、39歳。洋菓子世界大会に日本代表として出場し、世界2位に輝いた若きパティシエです。

 森山さんが追求するのは、軽くてやわらかな味わいでありながらも満足感があり、毎日でも食べたくなるようなお菓子。

 中でもこの時季に特に人気なのがモンブラン。栗の味わいと滑らかな口溶けにとことんこだわり、ひと際手間暇をかけて作り上げる逸品です。

森山さん:
「手間はかけた分だけ美味しくなると信じているので。みんなが大好きなお菓子なのですごくこだわって作りますし、食べてもらいたいです」

■栗一つ一つを丁寧に…素材本来の美味しさを生かしたオリジナルの味に

 もちろん味の主役は栗です。

森山さん:
「ポルトガルの栗をフランスで加工したものです。見た目も小ぶりで味が濃くて、和栗とは違った味わいになっています。素材を味わう。余計な甘みを加えずに調理してあげることが美味しさにつながる」

 あらかじめ味を整えたペーストを使う店も多いですが、森山さんはこの栗を自ら調理してオリジナルの味に仕上げます。

 まずは1粒ずつ表面に残る渋皮を取り除きます。これだけでも随分と手間がかかります。

 続いてアクをとるために牛乳を少し加え、しっかり火を入れて1時間。指でもつぶれるくらいの柔らかさにします。

 続いては味付け。水に対し40パーセントの砂糖を加え、煮ていきます。糖度は洋菓子としては甘くない30度前後。栗本来の味わいが引き立つよう、甘さはかなり控えめです。

 ひと煮立ちしたら後は、一晩かけてシロップをじっくりと中まで浸透させます。こうしてできたのが、栗のコンポート。これを使ってマロンクリームを作ります。

 まずは、目の細かいこし器で裏ごし。手の力はもちろん、体重をのせながら行います。

 かなりの力仕事ですが、目指す味わいのためには、欠かせない作業です。

 ふんわりと粉状に仕上がるとミキサーで練っていきます。この時、香り高いフランス産のマロンペーストや、無塩バター、生クリームを加えます。

森山さんは、「栗きんとんのような、あの味をフランスのモンブランのような感じで表現できたら」と話しています。

■手間をかけた分だけ美味しくなる…世界大会を境に「お菓子への思い変わった」

 大学卒業後、フランスへ渡り修業を積んだ森山さん。その後、名古屋の松島義典シェフのもとで世界大会を目指し、さらに腕を磨きます。

 そして2013年、日本代表として世界大会「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」に出場。結果は銀賞、世界2位として堂々たる成績を修めます。

森山さん:
「お菓子に対する思いは、(大会を境に)自分の中で変わったと思います。手間はかけた分だけ美味しくなるって僕は信じているので」

 手間暇かけて作り上げたマロンクリームでいよいよモンブランを仕上げます。土台となるのは、「シュクセ」というメレンゲ菓子。サクッとした食感を残すため、ホワイトチョコレートでコーティングしてあります。

 その上に硬めにホイップした生クリームを絞り山のように成形し、マロンクリームを飾り付けていきます。

森山さん:
「簡単にそうに見えるじゃないですか、でも絞ってみると全然できないんですよね。(修業時代)できないことが悔しくて」

森山さんは、体が勝手に動くようになるまで絞り続けたといいます。

森山さん:
「絞りの技術は人間の手でしかできない繊細な事ですし、絞り方1つで見え方が変わってくる。モンブランと言えば僕はこの形だと思います」

 手間暇かけて作り上げた「モンブラン」648円。口に入れるとすっと溶けるマロンクリームは濃厚ながらも軽くてあっさりとした、他にはない味わい。秋の訪れを感じる極上の逸品です。

 店頭に並べると、続々と注文が入ります。

女性客:
「(販売が)9月11日から始まっているので、早いうちにいただききたいと思って」

別の女性客:
「母が好きで。いま栗の季節でもあるので」

また別の女性客:
「SNSで栗や芋を見ることが多かったので、食べたくて頼みました」

森山さん:
「僕にとっても大切なお菓子。コロナには負けませんし、今以上にもっと多くのお客さんに食べていただけるように努力していきたいなと思います」

 「パティスリー サヴール オン ドゥスール」は、地下鉄・浄心駅から歩いて5分のところにあります。モンブランは、手間暇がかかるため1日限定50個の販売です。