駐車違反をした場合に納めなければならない反則金を支払わずに滞納する「悪質滞納者」が問題となっています。

 その滞納額は全国で32億円にも上ります。悪質滞納者から違反金を徴収する愛知県警の専門チームに密着しました。

■中古車販売店が156件の駐車違反…一体なぜ?

 街中に溢れる駐車違反。この違反金を支払わない悪質滞納者が問題になっています。愛知県内の違反金の滞納額は総額3億円以上にも上ります。

 名古屋市昭和区にある「放置駐車対策センター滞納処分係」。愛知県警の警察官らが、駐車違反金の徴収を専門に行っています。

愛知県警 放置駐車対策センター 小石雄治警部補:
「悪質性や常習性の恐れがある滞納者に対して、銀行で口座の差し押さえという強制執行をやっています。直接自宅なり会社に行って、徴収を促すケースもあります」

 駐車違反をして反則金の支払いや警察への出頭をしない場合、警察から納付命令書や督促状などが届きます。それでも応じない場合は、最終的に財産の差し押さえ、つまり強制的な徴収が行われます。

小石警部補:
「車屋さんで、全部で駐車違反が156件。督促を出しているにもかかわらず、納付がされていない」

 この日、小西警部補らが向かったのは、名古屋市の中古車販売店。

小石警部補:
「現在、未納のものが9件あるのですよ。総額7万円を、今から払うよということであれば納付の手続きを取ります」

差し押さえを受けた中古車販売会社の社長:
「ごめんなさい、確認してなかったので。もちろん(支払い)できます」


 これまでに、156件もの駐車違反、そして9件の違反金を滞納していた社長ですが、突然の警察の訪問に驚いたのか素直に応じます。

 結局、滞納金をその場で支払ったため、財産の差し押さえまでは行いませんでした。しかし、なぜ156件もの駐車違反を繰り返していたのでしょうか…。

小石警部補:
「こちらで分かるのは違反の場所と時間と車のナンバーです」

同・社長:
「これは全部、代車でお出ししているもの」

 駐車違反をしていたのは、中古車販売店から代車を借りた客。本来はその客が違反金を支払わなければいけませんが、支払われない場合、車の所有者である中古車販売店が責任を取らなければなりません。

同・社長
「(警察が来て)びっくりしましたよ。うちも100台近くあるので1台1台今まで見ていなかった。こんなことがあったから厳しくやりますよ」

■滞納金徴収のプロ…国税庁OBが大きな力に

 別の日、さらに悪質な滞納者への差し押さえを計画していました。

 1人で滞納19件、延滞金を含めた総額50万円もの違反金を滞納している男性。財産を差し押さえるため、名古屋市内の自宅に向かいます。

 すると、住民票に記載された住所に住んでいたのは、男性の両親だけで本人は雲隠れ…。その後、何度もこの家を訪れ、母親から代わりに納付する申し出がありましたが、いまだに違反金は支払われていません。

 まさに「逃げ得」となってしまっている現状もあります。

 しかし、愛知県警の専門チームには逃げ得を許さない、その道のプロがいました。

愛知県警 放置駐車対策センターの職員:
「勤務先の給与照会をかけています。現在、給与を毎月どれだけ払っていますかとか銀行の振込口座はどこですかということで」

 パソコンで、悪質滞納者の銀行口座を調べる男性。警察官ではなく、税金の滞納者から徴収を行ってきた国税庁のOB、まさに滞納金徴収のプロフェッショナルです。

 長年培った経験を活かして、滞納者の銀行口座を調べるなど、徴収の大きな力となっています。

同・職員
「口座を分析して、給与が入ってくるとか売上が入ってくるかを確認して(お金が)入ってきそうな日に伺う。その辺の情報をよんで(滞納者のところに)いつ行くかというのが警察官の腕になってくると思います」

 国税庁OBの協力もあり、愛知県の滞納違反金の徴収額は、全国1位。年間でおよそ4000万円を徴収しています。

■「飢え死にしろと言うなら払いますよ」…違反者のあきれた言い訳

 愛知県警の専門チームが、この日徴収に訪れたのは愛知県警中署。

 滞納金の支払いを求めている相手は、20代の男性。車検切れの車を運転した容疑で逮捕され、警察署に留置されていて、この日に釈放。徴収のチャンスを逃さないために、釈放の日を狙っていましたが…。

警察官:
「放置違反金として納めてもらわなきゃいけない分が、分かっている限りで6件分、違反金が9万6000円。延滞金については2万3200円。合わせて11万9200円」

滞納者:
「高っ!えっ、延滞金に2万も取るの。消費者金融みたいじゃん」

 難癖を付け支払いを拒む男性。70回以上駐車違反を繰り返していたとみられ、手には督促状の山。今回は滞納金の一部を強制的に徴収する計画でしたが…。

滞納者:
「飢え死にしろって言うのなら、今お金払いますよ」

同・警察官:
「そんなことは言っていませんけど、お金を払うって言うなら(受け取ります)」

滞納者:
「生活ができなくなるじゃん、コロナの時期だよ」


 新型コロナを言い訳に、一歩も譲らない男性。押し問答は10分以上続き。結局、警察官の粘り強い説得で、男性は支払いに応じました。

 散々、お金が無いと話していた男性ですが…。警察署からタクシーに乗って去っていきました。

小石警部補は、「駐車違反というものを軽く考えている」と指摘したうえで、「例え1件でも逃げ得は許さない」と話しています。