スーパーの総菜売り場に並ぶ、具がはみでそうな豪快なおにぎりや、大きな果物がのった不思議なスムージー。大手でなくても売上は他店の4倍。地元のスーパーがお客さんを呼び込む戦略に迫りました。

■デカくて美味しい夢のおにぎり

 具がはみでるほどのおにぎりに、てんこ盛りの天ぷら。ボリューム満点のお総菜は、飛ぶように売れていきます。

女性客:
「安くておいしい。デカいし」


 愛知県尾張旭市にある「生鮮館やまひこ尾張旭店」。この総菜を仕掛けているのは太田典子さん。開店前、メインとなる総菜の準備をしていました。

太田さん:
「ほぼ具の具だくさんおにぎりです。どこから食べても具。夢のおにぎりと言われています」

 半身のシャケに、いくらがたっぷり。おにぎりなのに、ほぼご飯が見えません。

 卵焼きと厚切りベーコンで巻いたものや、アナゴの半身で巻いたおにぎりなど「たくさんあってコスパも良く、他のスーパーにないもの」をコンセプトに作っているおにぎり10種類をそろえました。このボリュームで1個298円(税抜)です。

 500個の具だくさんおにぎりが店頭に並ぶ姿はまさに圧巻。

 メインとなる惣菜は、お客さんが飽きないように日替わりで出しています。

ちなみに、この取材の次の日のメインは、ダシと具がたっぷりの「いなり寿司」(198円・税抜)でした。

■人気総菜のヒントは「食べ歩き」

 午前10時に開店。客は総菜売り場に一直線。具だくさんおにぎりは飛ぶように売れて行きます。お昼前には500個が完売。これらの人気総菜は太田さんの趣味から発想されています。

太田さん:
「食べ歩きも趣味で、自分が食べておいしい、感動するというものを持ち帰って作って出しているって感じですね」

 食べ歩きからヒントを得て、商品化したものの一つが「バナナジュース」。昨年から流行っていると聞き、もっと果物を使ったものができないかとフルーツのスムージーを始めました。

 スーパーの総菜では珍しい手作りスムージー。見た目にもこだわり、豪快にまるごとフルーツを乗せました。

女性客:
「珍しいですね、かぶりつくしかない。めっちゃおいしい」

男性客:
「(知ったのは)インスタです」

 他では見られない衝撃的な見た目。当然、SNSで話題となります。

■梨田梨彦という名のスムージー

 SNSで話題のフルーツがまるごとのったスムージー、更にもう一つ仕掛けがありました。長野産のぶどうをほぼ1パック使い、牛乳、ヨーグルト、オリゴ糖を入れてスムージーに。そこに串に刺したぶどうを積み上げたのが、その名も「ナガノパー子」。

 今が旬の梨をまるごと乗せたスムージーの名前は「梨田梨彦」。

太田さん:
「ネーミングを面白くして、クスッと笑ってしまうような楽しい売り場も心がけています」

 新作は栗を使ったスムージー。どのように乗せるかというと…。

太田さん:
「栗好きにはたまらない、栗おこわが乗っています。うちは、具だくさんおにぎりということで、うちにしかできないと」

 栗おこわが乗ったスムージー、その名も「どんぐりコロコロどん栗子」(598円・税抜)。ちょっと笑えて親しみを持てる。これが、SNSでも受けています。

■スーパーなのにチラシなし…宣伝はSNSで

 インパクト大の日替わりの総菜。オープン前、太田さんがリポート付きで動画を撮影していました。

太田さん:
「インスタを見てくるお客さんがほとんどです。チラシが無くなったので、何十万円というコストダウンです」

 SNSの宣伝効果があるため、スーパーには必須の「チラシ」をやめました。コストカットした分をさらに総菜の材料に回せるため、具だくさんでも採算が取れるというワケです。

太田さん:
「小さいスーパーですけど、大きなスーパーに勝てるんだというところを、みんなで頑張っていきたいですね」

 生鮮館やまひこ尾張旭店は、尾張旭市を通る旭街道から一本入ったところにあります。総菜売り場は大変混雑します。入場制限を行っているため、入場待ちや整理券が配られることがあります。