『三菱スペースジェット』の事業が凍結となれば、開発を進めている愛知県、東海地方にも影響が及ぶ恐れもあります。

 こうした状況に陥ったのには「2つの誤算」がありました。

■相次いだ設計変更や生産上のトラブル

 事業化の決定は2008年でしたが、2009年には当初2013年予定だった初号機納入を1度目の延期。その後も、2012年、13年と製造工程や部品調達のトラブルで納入延期を繰り返しました。

 2015年になってようやく初飛行。しかしその後も2回延期。「MRJ」から「スペースジェット」に名前やデザインを変えてイメージ刷新を図りましたが、それでも今年2月に6度目の延期を表明する事態となっていました。

■新型コロナで飛行機を買う側に大打撃


 そしてもう1つが、新型コロナウイルスの感染拡大。スペースジェットの「客」である航空各社に新型コロナで大打撃が及んでいます。

 特に国際線で利用客は激減、運航便も激減し、客がなく飛行機も飛ばせないという状況となり、航空会社の収入は激減しました。
 ANAは今期過去最大の赤字になる見通しで、JALも4~6月期に赤字転落となる見込みです。

 航空各社は人員削減や業務効率化を迫られていて、ANAは保有する機体の1割を売却する方針だといいます。スペースジェットはANA・JAL含め、国内外で300機ほどの受注がある模様ですが、この需要環境では納品どころかキャンセルに陥る恐れもあります。

 コロナ禍からの回復見通しが立たない中、現状ではとても収益性の高い事業とはいえなくなっています。