これまで数々のステーキコンテストでチャンピオンに輝き、「ステーキ王」とも呼ばれる東大介さんは新型コロナウイルスの拡大が始まった2020年4月、愛知県南知多町の離島・篠島に移住しました。

 今は、篠島で豪華なバーベキューを振る舞う東さんが移住した理由は、旅行で訪れた際に出会った島の人との絆でした。

■今や島の有名人…キッチンカーで移動しながらステーキを焼く若き日本チャンピオン

 愛知県南知多町の師崎漁港から船で10分。人口1600人ほどの離島・篠島です。

 東大介さん(25)は、ステーキの焼き方を競い合う大会で、幾度も優勝している日本チャンピオン。

 その腕前を生かし、調理機材を積んだトラックで移動しながら、バーベキューを振る舞います。

 この日は、海の見えるカフェの駐車場を借りて、予約のあったお客さんを待ちます。すると通りがかりの島の人から…。

島の人:
「テレビ見た。今日はここで、実演やっとるのかね?うまそうな肉やったもんねぇ」

 島ではすっかり有名人です。

 すると、お客さんがやってきました。アウトドア好きのグループ。東さんの焼くステーキをぜひ食べたいと、名古屋からやってきました。

■肉の温度が57度になれば焼き上がりのサイン…チャンピオンの繊細かつ迫力満点のステーキ

 東さんの使う調理道具は、全てアメリカ製。アメリカの方が日本より、バーべキューの道具が進んでいるため、鉄板はもちろん、すべてアメリカ製にこだわります。これで焼くと仕上がりがまったく違うといいます。

東さん:
「リブロースという背中の肉です。脂と赤身が良い感じに入っているお肉です」

 鉄板に肉を置くと、すぐにふたをしめました。蒸し焼きにすることで、中まで絶妙に火が通ります。焼く時間もしっかり計測。2分ちょうどで裏返します。

 片面2分を計4回。手間をかけます。さらに肉の温度も測ります。57度になれば焼きあがりのサイン。

 この後、5分寝かせたら出来上がりです。表面はしっかり焼いているのに、断面はきれいなピンク色です。

男性客:
「めっちゃうまい。柔らかい」

別の男性客:
「チャンピオンステーキ」

■1日1組限定…篠島ならではの食材と季節のシーフードを堪能

 その他、肉汁たっぷりのハンバーガーに、篠島であがったいわしのアヒージョ。

 迫力満点の、ワタリガニが入った海鮮パエリアなどが続きます。

 もちろん焼き手は東さん1人。お客さんに付きっ切りです。そのため1日1組限定。

 つまり、その日限りはステーキのチャンピオンを独占できます。これだけの料理がついて、1人7000円です。

女性客:
「篠島ならではの食材と季節ごとのシーフードと、チャンピオンが焼くステーキ、最高の組み合わせ。今日来てよかったです」

■「新型コロナ」で訪れた人生の転機…島民の温かさに触れ移住を決めたステーキ王

 チャンピオンの腕を持つ東さん。生まれは篠島ではなく、愛知県武豊町です。

東さん:
「映画の『ワイルドスピード』の、バーべキューシーンを見て、良いなあと思って、趣味で始めたのが楽しくて」

 趣味で始めたバーベキューでしたが、その後腕を磨き、数々の大会で優勝する日本チャンピオンに。その彼が、なぜ篠島に住まいを移したのでしょうか。

東さん:
「篠島に遊びに来たら面白い人ばかりで。見た目は怖いんですけど、優しい人が多くて…」

 去年、旅行で訪れた際、島民と親しくなり、その温かみを知りました。当時は、キッチンカーでステーキやハンバーガーを販売しながら全国を回る準備中でした。

 ところが新型コロナの影響で断念。そんな時、篠島の漁師さんから「コロナで島の人も外食に行けなくなってしまったから、島でステーキやハンバーガーを販売してほしい」と頼まれたそうです。

 おいしい肉を食べて笑顔になって欲しいと、4月に島への移住を決めました。

■地元の漁師「島を愛しとるし、島にも愛されとる」…バーベキューで島への貢献を願うステーキ王

 東さんにはもうひとつの顔があります。港にやってきて、船に乗り込むとそのまま海へ。

 船を走らせること数分、見えてきたのは牡蠣の養殖をするいかだです。

 東さんは、バーべキューの予約がない日はカキの養殖やシラス漁に出て、漁師さんを手伝っていました。

 一緒に漁に出たのは、漁師の新美さん。東さんが島に来るきっかけにもなった人です。

 新美さんに漁のことを、イチから教えてもらっています。さらにバーベキューで、客に振る舞う取れたての魚介類を、新美さんが持ってくることもあります。これがお客さんにも大好評です。

 海の上では、ステーキのチャンピオンも見習いの身。そんな彼を、新美さんはどう見ているのでしょうか。

新美さん:
「島を愛しとるね、島にも愛されるしね。そういう子じゃないと島にはおれん、なかなかいねぇよ、こういうタイプは」


 すっかり、島の人たちと馴染んでいます。三河湾に浮かぶ篠島。そこには、日本一のステーキチャンピオンと、彼を愛する島民の姿がありました。

東さん:
「すごくよくしてもらっているので。牡蠣だったりいろんな食材が、バーベキューに相性が良いので、ここを拠点にバーベキューで島に何か貢献できたらと思っています」

 東さんのバーベキュー「篠島プレミアムBBQ(予約制)」は10人以上から予約が可能です。 基本は1人7000円ですが、食材をもっと豪華にしたいという相談にも応じてくれます。

 バーベキューを行う会場は、いくつか候補の中から東さんが天候などの状況によって決め、後片付けもすべてしてくれるので、手ぶらで楽しめます。