名古屋市緑区有松にある「味福」の看板メニューは、こぼれんばかりのネタが盛られた海鮮丼です。コロナの影響で客足が遠のいた春先に、集客の目玉として考案しました。

 他にも、インパクト大のかつ丼やスイーツに、破格の食べ放題サービスなどコロナ禍でも次々に目を引くアイデアで集客を狙う和食店です。

■利益度外視の大盤振る舞いに息子「こんなに安くていいのか」…分厚い具が鮮やかに盛られた人気の海鮮丼

 名古屋市緑区有松の「味福」。店主の高橋俊武さんが、家族3人で切り盛りする、40年以上続く和食の店です。

 午前11時、開店と同時に客が入ってきました。ほとんどの客が注文するのが、多い日には100食出るという「上海鮮丼ランチ」です。

 海鮮がこぼれんばかりに盛られたそのインパクトに、多くの人が食べる前にスマホで写真撮影。

女性客:
「厚みがあっておいしい」

男性客:
「期待を全然裏切ってない。来た甲斐がありますし、相当リーズナブル」

 ランチの客の約8割が注文する海鮮丼。その魅力は、圧倒的な見た目と、分厚く切られた種類豊富な新鮮な魚介類です。

 海鮮は日替りで、この日のおすすめは本マグロ。さらにカンパチ、ヒラメ,サーモン、タイ、甘エビ、カニみそ、ウニやイクラも盛られています。その数12種類。

 それにサラダと、味噌汁、選べるうどんかそばが付いて1540円です。ちなみにボリュームで負けていない「並海鮮丼ランチ」でも990円です。

 店のインスタグラムをフォローすると、無期限で5パーセント引きに。サービス満点です。

俊武さん:
「利益はあまり出ません。お客さんが来てくれればいいです」


 利益度外視、大盤振る舞いの俊武さんですが、一緒に働く息子は…。

俊武さんの息子:
「自分も作りながら、こんな安くていいのかって。もう少し高くてもいいんじゃないって」

 俊武さんは、「海鮮丼は最初“入れ過ぎ”と家族から反対されたけど、新しいメニューは思いついたらすぐやっちゃう」と話します。

■「見た目華やかで、どこにもないものを」…コロナ禍で生まれた様々なメニュー

 この入れ過ぎの海鮮丼、春先から提供を始めました。

 新型コロナの影響で客が減ってしまったため、店のインスタグラムを担当していた知人に相談。「刺身は抜群に美味しいから、それを使って見た目で引く海鮮丼を作ってみたら」とアドバイスをもらいました。

 “見た目華やかで、どこにもないものを”、と試行錯誤を繰り返し、この海鮮丼を生み出しました。

 始めると狙い通り見た目のインパクトから、瞬く間にSNSで話題に。海鮮丼を目当てに店に客が戻ってきました。

 見た目で引き付ける手法から、他にも考案したものが、白と黒のコントラストが斬新なソフトクリーム「ありまつソフト」(450円)。

 そして、カラリと揚げた巨大なとんかつを3枚使った「トリプルかつ丼」(1870円)です。どちらも注目を集めました。

俊武さん:
「常に何か発信していかないとだめだなと。ずっと一緒じゃお客さんも飽きますからね」

俊武さんの母親:
「お客が喜んでいるんだから、いいんじゃない。困難を乗り越えたから十分ですよ、今のところは」

 創業当時から店に立つ俊武さんの母親も、厳しい中、こうして手を打つしかないと感じています。

■突然の大人数キャンセルにも店主「気持ちだけはめげずに」…次は手羽先食べ放題

 午後5時。夜の営業が始まります。夜にも新しく始めたサービスがありました。店の全メニューの「食べ放題飲み放題」(120分)です。

 枝豆や手羽先などのつまみはもちろん、あの海鮮丼も食べ放題です。

 しかも値段は破格の大人3850円。小学生は1925円ですが、小学生未満は無料です。これも新型コロナの影響で減った客を、取り戻すために始めました。

俊武さん:
「前までは2~3000円とかのコースをやっていたんですよ。こっちが出したもの、全員同じものを食べますよね。(客が)かわいそうで」


 その様な思いもあり、客には「好きなものを好きなだけ食べてほしい」と、全メニューの食べ放題に踏み切りました。

 様々な発想でコロナを乗り切る。店に客が戻ってきたところでしたが、この日に思わぬ事態が…。

俊武さん:
「十何人キャンセルになっちゃった。5人・5人・7人かな。仕方ないですね…」

 ここ最近の新型コロナ感染者の急増により、この日、夜の予約のキャンセルが相次ぎました。再び厳しい状況に陥ります。それでも…。

俊武さん:
「考えているのが手羽先食べ放題ですね。1000円くらいでやろうかなと。気持ちだけはめげずに、信じてやるだけですね」

 コロナ禍で予断が許されない中ですが、これからも独自のアイデアで集客を目指します。