道路の車線規制されている場所で見かける、一生懸命腕を振る人形、その名も「安全太郎」。ドライバーと交通作業員の安全を守るこの安全太郎は、1970年に当時交通誘導員が車にはねられる事故が相次いだため導入されました。

 そして今、およそ半世紀にわたりドライバーを見守ってきた安全太郎の初の後継機が登場。安全太郎より大きく、光り輝く可愛らしい“太郎”でした

■「安全太郎」を作り続けて50年…これまでに2500体以上を全国の現場へ

 名古屋市港区にある「トクデンコスモ」。配電盤や交通規制標識の製造をするかたわら、ガードマンロボットの安全太郎を製造しています。

 昭和50年代から半世紀近く生産、これまでに2500体以上を全国に送り出しています。

トクデンコスモの常務取締役:
「(製造期間は)1か月半くらいですね。塗装と中の動く部分(駆動部)」

 製作に1か月半かかる安全太郎。身長185センチ、体重約40キロ。胴体は、頑丈な強化プラスチック製で、大量生産ではなく、全て社員の手作業で作っています。

 修理中の安全太郎もありました。工事現場の最前線に立っているため、常に危険と隣り合わせで傷が絶えません。

 修理完了。電源を入れるとモーターで円盤を回転させ、腕を上げ下げさせるシンプルな仕組み。しかしシンプルがゆえのメリットも…。

同・常務取締役:
「例えばこれでも2001年(製造)ですから、ほぼ20年前ですね」

 こちらの太郎は、20年目にしての初修理。単純構造のため頑丈で、故障しにくいのがメリットです。

■一つとして同じ表情の太郎はいない・・‥白目、熱血、ホラー 年代ごとに特徴のある“先輩”たち

 工場の外には、太郎の歴代の先輩たちがいました。ズラリと並んだ12体の色鮮やかな歴代モデルたち。よく見ると、作られた年代によって微妙な違いがあります。

 約30年前のモデルは、今の太郎と比べると作りがリアル。作業着ズボンのシワやヘルメットの紐など、人間のガードマンを忠実に再現されていました。

 何と言っても歴代モデルの一番の特徴は人形ごとに、その表情が違うこと。少し「白目の太郎」。そして、目力のある「熱血太郎」。

 さらに、若干シリアスな「ホラー太郎」とバリエーションが豊富です。各時代のトレンドなどがあるのでしょうか…。

同・常務取締役:
「メイクする人によって変わるんですね。化粧みたいなものですよ」

 顔も全て社員の手書きのため、表情は各担当者のセンス、同じ表情の太郎は一体としてありません。描く時の統一のルールなどはあるのでしょうか。

同・常務取締役:
「受け入れられるように、優しさだけは欲しいなと思っていますけどね」

 ドライバーを見つめる優しい表情。確かに、少し微笑んでいるようにも見えます。

■最新の交通事情に合わせて進化…「ニュー太郎」はLEDで輝く可愛いキャラクター系

 ドライバーの安全を守る安全太郎。最新の交通事情に合わせ、進化した「ニュー太郎」がいるという話を聞き、東海地区の高速道路を管理する「NEXCO中日本」を訪ねました。

 倉庫の中には、NEXCO中日本のシンボルカラーであるオレンジの安全太郎がずらり。名古屋支社の管内だけでも、50体以上が活躍しています。

NEXCO中日本の担当者:
「愛嬌があって、仲間の一人かなと思います」

別の担当者:
「愛称で『太郎!太郎!』と呼んでいますね。『太郎、積め忘れてないか』とかですね」


 しかしこの太郎は、これまでのモノと変わりありません。後継者の太郎が入っているというジュラルミンケースを開けてもらうと、人形が一気に膨らみました。

 空気で膨らむ、バルーン型の人形でした。2等身の可愛い顔をした人形は、2種類。一つが男の子の「i光太郎くん」、もう一つが女の子の「i花子ちゃん」です。i(アイ)は「“愛”を込めて交通安全を」という意味からつけられました。

 安全太郎と並ぶと大きさから印象が全く違います。そして、i光太郎とi花子の一番の特徴は光ることです。

NEXCO中日本の担当者:
「夜間工事の時は大きいし光るので、遠くからお客様に規制していますよっていうことが、分かるようになっています」

■5秒で膨らみコンパクトで便利…主に夜間に活躍「ニュー太郎」が急増中

 進化した光るバルーン型のi光太郎くんとi花子ちゃん。実際に活躍している姿を見るために、夜の高速道路へ。

(リポート)
「いるいる、遠くからでも分かりやすい!輝いてますね」

 i光太郎くんとi花子ちゃんの大きさは、安全太郎の倍以上。さらにLEDライトで光っているため、夜間でもはっきりとわかります。

 さらにもう一つのメリットは、バルーン型のため軟らかいことです。スマホなどの普及で「ながら運転」による交通事故が多くなったことにも考慮。万が一、車両と衝突しても、ドライバーや作業員へのリスクが軽減されるよう工夫がされています。

 コンパクトで持ち運びにも便利、しかもわずか5秒で膨らむ手軽さから、名古屋支社管内では去年から導入が始まり、既に約30体が活躍。安全太郎に迫る勢いで急増中です。

 後継者が増えた中、近い将来、安全太郎は引退してしまうのでしょうか。

NEXCO中日本の担当者:
「長年一緒に規制をはってきた仲間という位置付けで、必ずトラックに1台積んでいくという感じで、大事に扱っています」

 安全太郎は、昼間を中心にまだまだ現役バリバリです。「安全太郎」と進化系「i光太郎くんとi花子ちゃん」、3人がこれからの日本の道路を守っていきます。