名古屋市長選挙は4月11日に告示されます。最大の争点は12年に及ぶ河村市政の評価です。

■訴えたのは「既得権益」の打破…一時的な「議員報酬の半減」と「市民税の減税」を実現

 2009年に初当選した河村市長。そのコミカルなキャラクターで名古屋市政に新たな風をもたらしました。

 訴えたのは「既得権益」の打破。市議会を既得権益の象徴と位置づけて対立の構図を作り出し、闘う姿をアピール、市民を熱狂させました。

 一時的に「議員報酬の半減」を実現。市議会の猛反対を押し切って公約の1丁目1番地とする「市民税の減税」を成立させました。

 初年度となった2010年度は10%、その後も5%の市民税減税を継続。12年間の減税額は1305億円あまりに上ります。

 そして、長年の課題だった保育園の待機児童ゼロが2期目に実現したことを契機に、教育・子育て施策にも熱心に取り組み、市内のすべての中学校に生徒の悩みを聞くスクールカウンセラーの配置を実現させました。

 これらは河村市政12年のいわば「光」の部分です。

■「失敗だったんじゃないか」…学区に予算を配分し選ばれた住民が使い道を決める「地域委員会」

 名古屋市北区西味鋺のコミュニティセンター。月に4回、地域の高齢者が集まる「ふれあいサロン」が開かれています。そのきっかけが…。

元地域委員の女性:
「地域委員会でサロンを。ポットとかコーヒーメーカーとか、購入させていただきました」

 河村市長が、減税と並ぶ2大公約として打ち出したのが「地域委員会」です。

河村市長(2009年):
「なるべく皆さんで、自分たちのことは自分たちで決めていくと」

 地域の学区に予算を配分、選挙で選ばれた住民がその使い道を決める。住民自治の新しい形として打ち出しました。

 地域委員会のモデル実施に参加した西味鋺学区には、300万円の予算が配分され、「ふれあいサロン」などに使いました。しかし市内全域での実施はならず、担当部署は2016年度にひっそりとその姿を消しました。

元地域委員の女性:
「地域委員会のモデル学区『もう一回どうですか』って言われた時に『ごめんなさい』ってなっちゃうかな」

元地域委員の別の女性:
「本当に必要だったのかと。ある意味失敗だったんじゃないかと」

■かつての盟友とも袂を分かち…大村愛知県知事のリコール運動で決別は決定的に

 10年前のトリプル選挙で「ムラムラコンビ」として圧勝した河村市長と愛知県の大村知事。しかしその後、様々なことがありました。

 河村市長:
「イッツ タイム トゥ セイ グッバイ。さよならを言う時だなあと」

大村知事:
「政治家の資質を欠くという事になるんじゃないでしょうか」

 方向性がズレ、次第に不仲に…。決定的となったのが「あいちトリエンナーレ」です。

 企画展「表現の不自由展・その後」の内容や運営を問題視した河村市長は、大村知事のリコールを支援。しかし、その後署名のほとんどが選挙管理委員会に無効と判断され、署名偽造疑惑まで浮上。愛知県警が捜査に乗り出す事態に…。

大村知事(3月19日)
「よく『政治家の資質に欠ける』という言葉がありますが、そうではないと思います。『政治家の資格に欠ける』と思います」


「ムラムラコンビ」が掲げていた中京都構想は、今や影も形もありません。

 あおなみ線での蒸気機関車の運行、1000メートルタワーを建設する計画はいずれも実現は極めて困難な状況。名古屋城天守閣の木造復元はそのリーダシップを発揮しているとは言えず、いつ着工できるか不透明。

 一方、この12年について市長選で河村市長と対峙する横井利明・元市議会議員は、「河村市長が12年前登場した時は確かに衝撃的だった」としつつ…。

横井氏(3月25日):
「議会をリコールした後からガラッと変わってしまった。名古屋はそれ以来10年間ずっとマンネリなんです」

 横井元市議は、「河村市長は、何も仕事をしない。何も関心がない。コロナに関してもほとんど何もやっていない」と指摘します。

 市長選には、この他、元会社員の太田敏光さん(72)も出馬を表明しています。

 河村市政12年、市民の判断は…。名古屋市長選挙は4月11日に告示、25日に投開票です。