名古屋市中区の大須に去年12月にオープンした、洋菓子の「カヌレ」の店があります。この店は結婚式場やレストランを運営する会社が始めました。

 普段は式場の料理を作っているフレンチのシェフが作るそのカヌレは、去年5月から始めた移動販売で評判を呼び、多い日には1800個出るほど人気となっています。

■フレンチのシェフが作る…美味しいと評判の「至福のカヌレ」

 名古屋市中区大須。本町通沿いに「カヌレとアイス」はあります。

女性客:
「前ここを通りがかった時に試食して美味しくて、今日買いにきました」

男性客:
「いろんな所の(カヌレを)食べたんですけど、正直一番おいしかったかな」

 販売されているのは、カヌレ「至福のカヌレ」(380円)とアイス「至福のアイス」(480円)のみです。

■2年前から販売し好評だったカヌレに着目…ブライダル業界で式場以外の事業を模索

 この店は、名古屋市瑞穂区と名古屋駅でレストラン・ウエディング「エルダンジュ」を運営する会社が始めました。

ブライド・トゥー・ビー代表取締役・伊藤誠英さん:
「コロナをきっかけに、この事業が大きくなったというモノを絶対作りたいなと思って」

 コロナの影響を大きく受けたブライダル業界。「エルダンジュ」も去年4月以降の緊急事態宣言中、売上が前の年に比べ99%減という厳しい状況に。

 そこで式場以外の事業を模索。2年前から手掛けていた業務用のスイーツの中で、特に好評を得ていたカヌレに着目しました。

 去年5月から直営店のドレスショップや、新郎新婦のヘアセットを依頼する美容院の店頭、エステサロンの店頭など、多い時には市内7か所に即席の販売所を設けました。販売するのは式場のスタッフです。懸命な姿にファンが付き、多い日には1800個が出るほどになりました。

■試行錯誤の上に完成…バニラとラム酒の香りが引き立つ「至福のカヌレ」

 カヌレは、シェフ・パティシエの宮﨑龍さんが作ります。そして、元「名古屋マリオットアソシアホテル」の製菓料理長で、数々の職人を育ててきた名パティシエ松島義典さんがアドバイザーとして加わっています。

 宮﨑さんは、試作品を松島さんのところへ持っていき、甘さや焼き方など様々な助言をもらいながらカヌレを完成。

 フランスの伝統的な菓子カヌレは、作り方は至ってシンプルです。材料は、卵と牛乳と砂糖と小麦粉、そしてバターなどの香りづけです。焼き上がりが一定になるよう、計量や温度など作り方はマニュアル化されています。

 色ムラができないように30分に1度位置を変え、1時間かけて焼いていきます。すると外はカリッ、中はモッチリとした、カヌレらしい食感が生まれます。

 そこに松島シェフから「バニラの香りを立たせるように」とアドバイスを受け、バニラとラム酒の香りを引き立たせました。これが「至福のカヌレ」の大きな特徴に。

■「結婚式以外のお客様に知ってもらえるチャンス」式場スタッフ中心にカヌレ販売

 カヌレの路上販売は、式場のスタッフを中心に行っています。

担当の女性スタッフ:
「大好きな式のお手伝いが少なくなって悲しいけど、結婚式以外のお客様に私たちを知って頂けるチャンス」

 他にも、厨房でカヌレを焼いたり袋詰めしていたりするのは、レストランでフレンチを担当するシェフです。

男性シェフ:
「お菓子(作りを)、自分の料理とかに生かしていけたらいいかな」

 コロナ禍の中で結婚式は減っていますがこれまで人員カットはせず、全従業員で奮闘しています。代表の伊藤さんは、「結婚式は350万円とか400万円、一方カヌレは380円だが、社員は一丸となって頑張ってくれている」とスタッフを労います。

■チームワークと挑戦する心…全員で「至福のカヌレ」でコロナ禍を乗り越える

 打撃を受けた結婚式場がカヌレでコロナ禍を乗り越えたのには、代表の伊藤さんのある理念がありました。

 それは「10のオキテ」です。「お客様を自分の親友や兄弟と考える」、「あらゆる局面での判断において、チームワークを優先する」、「何事にも情熱を持って積極的に挑戦する」などが綴られています。

 どんな状況でもチームワークと挑戦する心を大切にする、全員がそれを体現。

ウェディングプランナーの女性:
「(結婚式の)プランナー、サービスだけでなくて、シェフも街頭に出て販売をしたり。意外とシェフたちの方が上手だったりとか」

 そして今、スタッフは総出で全国のスーパーに契約をとるべく電話をかけています。

 伊藤さんは「コロナ禍だからこそ、こんな能力が身についたという時間にしよう」とスタッフに声をかけます。