名古屋市緑区に新鮮な魚が安いと評判の鮮魚店があります。旬のハマチが一本324円、高級魚として知られるキンキが一本378円など、値打ちな商品が並びます。

 「客の笑顔が店の利益」と語るこの道40年のこの店の店主の元には、遠方から多くの客が訪れます。

■開店前にすでに行列…「客第一主義」掲げて人気の激安鮮魚店

 名古屋市緑区。国道302号線、滝ノ水橋東交差点のそばに激安の鮮魚店「ナルミ杉本」はあります。看板には「超、超、超 安い」「漁師さん泣かせの店」の文字。客が絶えない人気店です。

 店主はこの道40年の杉本貞夫さん(66)。杉本さんの信条は「客第一主義」。「一番大事なことはお客さんの笑顔。それが本当の店の利益」と杉本さんは話します。

 3月13日土曜日、午前8時半。杉本さんが仕入れから戻ると、店にはすでに大勢の客が待ち構えていました。荷下ろしを済ますと、杉本さんは次々と値付けをしていきます。

杉本さん:
「モガレイ。よそに行けば一匹1300円はするわ。今日安かった、これ買って行きや」

 このカレイに付けた値段は一枚540円。他店の半額以下です。旬のハマチは一本324円。生のホタルイカが1パック410円と、高級魚から大衆魚までどれも一般的なスーパーのおよそ半値の安さです。

■コロナの影響さほど受けず…助けになればと値下げし「社会貢献」

 午前9時開店、大勢の客が店内へ。次々と魚を手にしていきます。

女性客:
「カツオとハマチを、頑張って捌こうかと。すごく安くてびっくりしました」

男子客:
「ブリとホタルイカとサバとイカ、めちゃ安かった。これだけ買えて5000円ぐらい」

 初孫のお食い初め用の豪華な船盛りを、受け取りに来た人もいました。

男性客:
「1万2000円。食べ切れないですよね」


 ちなみにこのボリューム満点の船盛りは、他の店で注文すると2万円はするといいます。事前に予約すれば、刺身の盛り合わせなどの注文も可能です。客の中には飲食店の経営者も…。

飲食店を営む男性:
「一般の半分ぐらいの値段で買えるので、その分お客さんに還元できてとても助かっています」


 プロも認める安さ。この日はあいにくの雨でしたが、それでも次々に客がやってきます。

 幸い店はコロナの影響をそれ程受けませんでした。杉本さんは少しでも客の手助けになればと、去年3月から元々安い価格から更に5分~1割値下げしました。「儲けが少なくなったけど、これは社会貢献」と杉本さんは割り切ります。

杉本さん:
「とにかくいいものを安く売る。言い換えれば高級魚を大衆魚の値段で売る」


 全てはお客さんの笑顔のためです。

■余った魚を徹底的に“値切りたくる“…独自で編み出した「仕入れノウハウ」

 19歳でこの世界に入った杉本さんは、魚を安く仕入れるノウハウを独自で編み出しました。そのテクニックが…。

杉本さん:
「(市場で)残ってるヤツ(魚)を、値切るんじゃないよ、値切りたくって買うのがウチの商売」


 余った魚を上手に見つけ、それを徹底的に値切って仕入れています。仲買人がどうしても売り切りたい魚が残ってしまった時には、付き合いで購入し、手を差し伸べます。杉本さんは「仲買さんとの連携、人間関係が大切」と話します。

 仲買人との信頼関係で、他よりも安い仕入れを続けてきた杉本さんは、いつしか「安さ」に生きがいを覚えるようになりました。「安売りのプライドがある。『ネットで日本一安い魚屋』で検索すると、ナルミ杉本と出る。最高だよ」と誇らしげに話します。

■切り落として即値付け…普段より更に値打ちの人気イベント「マグロ解体ショー」

 3月13日土曜日の午前11時。店の中央に人が集まってきました。毎週土日に開かれる人気イベント「マグロの解体ショー」です。

杉本さん:
「いくぞ、1200円。900円。1200円」

 杉本さんが解体した身の部位と量を見て、即座に値付け。手を挙げた客が、次々と購入していきます。普段でも十分お値打ちですが、この日は更に安くなるため、多くの人が詰めかけます。

 そしてもう一つ楽しみが…。500円以上買った人は、さらにマグロがもらえる「じゃんけん大会」に参加ができます。

 このショーはもともと日曜のみの開催でしたが、客が殺到しないよう規模を縮小。今は土日の2日間に開催しています。結局、この日は午後1時半に完売。閉店となりました。

 店をもう1軒出したりなど、まだまだやりたいことがあると語る66歳の杉本さん。これからも夢を追いかけます。