名古屋駅のJRゲートタワーに2021年3月、ラーメン激戦区の福岡で何度も人気ナンバー1に輝いたラーメン店がオープンしました。

 とんこつと魚介ダシを合わせたスープに、中細麺を絡ませた本場のとんこつラーメン。その優しい味を求め、オープン初日から多くの人が訪れ、400杯以上が出ました。

■ラーメンの激戦区・福岡から名古屋に“黒船”上陸…こだわりの『魚介とんこつラーメン』

 名古屋駅前JRゲートタワー12階。そのレストラン街に常設店としては、東海地方初出店となる『ラーメン海鳴』が開店しました。福岡市内を拠点に5店舗。ラーメン雑誌による人気投票で3年連続1位に輝くなど激戦区で屈指の人気を誇るラーメン店です。

女性客:
「濃厚なのに、すごくさっぱりしていておいしい」

別の女性客:
「ずっと食べたくて調べて来たので。おいしいです」

 
 3月18日のオープン初日。開店時間の3時間前から仕込みが始まります。ラーメン海鳴の代名詞が、魚介とんこつスープ。とんこつスープは、20時間じっくり炊き込み、とろりとしたクリーム状にして、うまみを凝縮。

 魚介スープには、煮干や節など7種類を使ってうまみと香りを抽出します。この2つを合わせることで、よりうまみとコク、香りのいいスープに仕上げます。麺はスープがよく絡む中細麺を選びました。心地よい歯切れも特徴です。

 こだわりが詰まった「魚介とんこつラーメン」(820円)。スープは最初にとんこつの味が強く来ますが、魚介がそれを上品にまとめてくれる分、意外とあっさりしています。

 それがしなやかな麺とよく絡み、すするごとに、ほのかな魚介の香りが鼻へ抜けます。

■コロナの影響で調理の練習開始は開店の1か月前…東海地方在住者がつくる「福岡の味」

 「福岡の海鳴のラーメンの味をきちんと再現する自信がある」と話すのは、山中秀夫店長です。しかし山中店長は、福岡の店からやってきたスタッフではありません。

 「らーめん海鳴JRゲートタワー店」は、JR東海フードサービスが運営するフランチャイズ店です。山中店長は、その運営企業の社員です。店のスタッフはすべて現地採用のため、ほとんどが東海地方在住者で、福岡からの応援はありません。

 「準備期間が短かすぎて不安材料ばかり」と心配そうに話す山中店長。新型コロナの影響もあり、調理の練習を始められたのは開店のわずか1か月前。中でも最も頭を悩ませているのが、名古屋限定で出すことになった「つけ麺」です。

■オープン1週間前で1杯に10分かかる…チェックに来た社長「遅いなこの店」

 鶏白湯のクリームスープに明太子を合わせた「明太クリームつけ麺」(1200円)。6年前、閉店したある店で人気だったその幻のメニューを、名古屋店の名物にしようと考えました。

 しかし練習期間はわずか2週間ほどと厳しいスケジュール。不安ばかりが募る中、オープン1週間前に海鳴の社長によるつけ麺の味と作業手順のチェックが行われました。

 麺をゆでてから水で冷やすため、スープが出来上がるタイミングをうまく合わせなければなりません。この日、麺の茹で上がりに比べ、スープの出来上がりは遅れてしまいました。急いで丼に注ぎ、チャーシューを沈めますが、山中店長は、他に何の具材を入れるか忘れてしまいました…。

ラーメン海鳴の大久保茂雄社長:
「マッシュルームにあとクルトン!遅いなこの店…」


 具材を忘れてしまい、社長に聞くハメに…。結局一杯を作るのに、10分もかかり、厳しい言葉が飛びます。それでも試食した社長から味については合格点が出ました。これには山中店長も安堵。

 調理時間について山中店長は、「様々なオーダーが一気に入ってくるので…。つけ麺が最大のキーマン」と話します。そしていよいよ開店の日。店はうまく回るのでしょうか。

■課題の調理時間は解消…オープン初日は400杯以上と順調な船出

 3月18日午前11時。「ラーメン海鳴・JRゲートタワー店」の開店です。看板の魚介とんこつラーメンの注文が次々と入ります。ここは想定通り。滞りなく提供できました。

 名古屋店限定の「明太クリームつけ麺」の注文も入りました。前回の社長のチェックから1週間。練習の成果の見せ所です。この日はスープが遅れないよう麺を茹でている間に、チャーシューを鍋に入れてそのままスープを作ります。

 麺がゆであがったら水で冷やして、明太子を乗せます。その出来上がりと同じタイミングで、スープも仕上がっていました。前回10分かかった調理時間は、7分に短縮。練習の甲斐もあり、課題の調理時間は解消されました。

 最初のつけ麺が客に届くと、山中店長も心配で調理場から出てきました。

女性客:
「バターの香りが結構して、洋風でおいしいです。女性も好きな感じです」

男性客:
「すごく濃厚でおいしいです。クリーミーな感じで」

 客のおいしいとの声に、山中店長も胸をなでおろします。

 この店を運営するJR東海フードサービスは、「なかなか旅行に出かけられない今だからこそ、名古屋で地方のおいしいものを食べてもらいたい」と新しくこの店をオープンさせました。

 初日は400杯以上が出て順調な船出に。山中店長は「コロナ禍でわざわざ足を運んでくれ感謝しかない。期待に応えられるように頑張っていきたい」と意気込みます。