愛知県の西三河地方で、彩り豊かなだんごを販売する人気のキッチンカーがあります。この店を営む農家の30代の男性が作るだんごはその見た目の楽しさだけでなく、餡に練りこまれたニンジンの優しい甘さが評判となり、人気となっています。
■話題のだんごのキッチンカー…人気は優しい甘さが特徴の『カラフル人参だんご』

花をかたどったオレンジや紫のクリームに抹茶…。

チョコバナナに、イチゴがのっただんごまで。

女性客:
「クリームがきゅっとした感じとか、めっちゃかわいいです」
別の女性客:
「まさしくスイーツって感じですよね」

愛知県碧南市で今話題のだんごのキッチンカー「ダンゴヤ ハチ」。始めたのは鈴木啓之さん(37)です。この日、1年かけて作られたという白とさわやなか青が基調のキッチンカーは、愛知県西尾市にある雑貨店の前にありました。

県内の和菓子店から取り寄せただんごは、一本一本手焼きしていきます。そして、碧南のみりんを使った特製ダレにくぐらせて完成。「みたらしだんご」(3本300円)は、甘さがすっきりしていて、しつこくないと評判です。

中でも看板メニューが、『カラフル人参だんご』(2本500円)。だんごの上に、白あんで作った餡で花をかたどり、上にはニンジンの甘露煮を乗せました。餡のオレンジ色はニンジンの、紫色には黒ニンジンの果汁を使っています。見た目のインパクトはもちろん、優しい甘さとほのかなニンジンの香りが特徴です。

鈴木さん:
「甘みの強いニンジンを使っていますので、まるでフルーツのように甘いけど、ニンジンの風味がある」
他にも、チョコレートとバナナを乗せた「チョコバナナだんご」(2本500円)や…。

西尾の抹茶を使った餡にきな粉をまぶした「西尾の抹茶だんご」(2本400円)。

だんごの上に生クリームとイチゴを盛った「あまおうだんご」(2本750円)もあります。

女性客:
「かわいいから、子供でも食べられそうだなって思いました」
男性客:
「イチゴが酸味きいていて、クリームが甘くてマッチしていて美味しい」
■本業はニンジン農家…ほどよい甘さの独自ブランドを開発し差別化図る

鈴木さんの本業は農家です。この日、碧南市で朝早くから働く鈴木さんの姿がありました。鈴木さんは「鈴盛農園」の代表です。
平均年齢は30歳と若いスタッフ8人で、点在する農地30か所9000坪を管理。特に力を注ぐのが「ニンジン」です。

差別化を図るために、三河湾の海水塩を使った独自の栽培方法で、より甘みの強い「スウィートキャロット リリィ」というブランドを開発しました。糖度は通常の倍でスイカと同じくらいあり、生で食べてもジュースにしてもほどよい甘さのニンジンです。

このフルーツ並みに甘いニンジンを餡に練りこみ、ニンジンを丸ごと味わえる、他にはない「だんごスイーツ」を生み出しました。
■農業に可能性感じ…一旦就職も農業大学校で学び直してスタート

鈴木さんは大学卒業後、一旦は企業に就職しましたが「農業はこれから面白くなる」と農業大学校で学び、25歳の時、農業を始めました。
鈴木さん:
「商品も自分で作る、販売も。加工するとか、まだやれることがたくさんある業界だと感じて」

知り合いから農作放棄地を紹介してもらい、農家の多い碧南市で独自のブランドニンジンを開発。未経験者でも農業ができるようITも取り入れ、農業に興味を持つ若者をスタッフに加えました。
■目の当たりにした自然災害のリスク…キッチンカーをもう一つの柱に

しかし、全てが順調というワケではありませんでした。数年前の大きな台風で、全体の7割のニンジンが流されてしまいました。自然災害のリスクを目の当たりにした鈴木さんは、従業員を守るためにも、もう一つ柱になる安定した事業の必要性を感じて始めたのがキッチンカーでした。
鈴木さん:
「農作業が少ない時期に、移動販売であれば…。だんごであれば、作っている農産物を生かせるんじゃないかと」

だんごの移動販売は、農作物を生かせることに加え、農家を企業に成長させるための手段です。2年前に始めたところ、そのかわいらしさとおいしさからすぐに軌道にのりました。
■「日本の農業をカッコよく」…子供達が憧れる職業に

鈴木さんは、“農業はまだまだやれることがたくさんある” と言います
鈴木さん:
「農業がまず軸足にあって、その上でキッチンカーとか、色んな可能性を探して」
農業は面白い、カッコいい、色んな可能性を若い人に伝えたいと鈴木さんは話します。

だんごのキッチンカー「ダンゴヤ ハチ」の出店情報は、公式のインスタグラムに掲載されています。