愛知県西尾市に、自家製の天然酵母を使った手づくりパンが人気のベーカリーがあります。姉妹が切り盛りするこの店は、畳敷きのイートインスペースや、アレルギーを持つ子供でも安心して食べられるパンなど、親子にうれしい店として人気です。

■客「生地にめちゃめちゃ味がある」…香ばしい焼きたてのパンが並ぶベーカリー

 屋根瓦に煙突、目印は渋い緑色の壁。愛知県西尾市にある「かぞくのパン はっぱや」。店内には、焼きたてのフランスパンに、ライ麦を使ったカンパーニュなど、パン好きが好みそうなものから、子供向けのキャラクターのパンまで揃っています。

女性客:
「生地にめちゃめちゃ味がある。おいしかった」

別の女性客:
「子供の遊べるところ、食べながら遊べるのもいいし、パンが何よりおいしい」

■家族が笑顔になる店を…石窯には子どもの成長願い「麻の葉柄」をデザイン

 店を営むのは、姉妹の小林稚隼さんと櫻井麻菜さん。そして母親の和枝さんと父親の有三さんがサポートしてくれています。親子で安心して寛げるカフェを開きたかった姉の稚隼さんと、育児と両立をしたかった妹の麻菜さん。2人が目指すのは、家族みんなが笑顔になる店です。

 店内の床や石窯にデザインされているのは、「麻の葉の柄」。店名の「はっぱや」には「麻は丈夫で成長が早いため、子供の健やかな成長への願いがこめられている」と稚隼さんは話します。

■かめばかむほど麦の香ばしさが…食欲そそる約25種類のパン

 午前10時、開店。待ちわびたお客さんが続々と入店します。ショーケースにはおいしそうなパンがずらり。毎日、約25種類のパンが並びます。

 かめばかむほど麦の香ばしさを感じられる、「石窯カンパーニュ」(712円)や、マスカルポーネとクリームチーズの生クリームを生地にたっぷりと挟み、モチッとした食感を楽しめる「マリトッツォ」(259円)。

 生地の間にドライトマトを入れた「ドライトマトとバジルとチーズ」(259円)。

バジルソースとこんがりと焼けたモッツァレラの香りが食欲をそそります。

■一番早い父親は午前3時から準備…「私も何かやらないと」

 遡ること7時間前の午前3時。一番早く店にやってきた父・有三さんは、慣れた手つきで石窯に火を入れます。石釜で焼かれたパンは、遠赤外線で表面がパリパリ、中がふっくらとなります。

父・有三さん:
「嫁と娘の3人がやっているので、私が何かやらないかんやろって…」


 父もしっかりと、娘たちを支えます。

■コクを生み出すのは自家製の天然酵母…じっくり熟成させた生地はふわふわに

 午前4時になると、稚隼さん・麻菜さん姉妹もやってきました。麻菜さんは、前日に仕込んだ一次発酵が完了している生地を、1つ1つ細かく分割していきます。

 天然酵母は、糖を分解してアルコールと炭酸ガスを発生させる性質から、食べ物や飲み物を美味しくして、香りをよくすると言われています。こちらでは、レーズンを使った自家製の天然酵母を使います。天然酵母でじっくり熟成させた生地を短時間で焼く。これが深みやコクを生み出すおいしさの秘訣です。

 午前5時。釜の火入れも終わり、焼き始めます。はじめは、高い温度で焼くフランスパンなどのハード系を。温度が下がってきたら、ふわふわのパンを。釜の温度に合わせ、パンの種類をかえていきます。最後は、低温で長時間焼く食パンです。

■子供向けのパンは牛乳や卵不使用…アレルギーを持つ子供にも安心

 稚隼さんのおすすめのパンは、「三河しらすのタルティーヌ」(259円)です。碧南のしらすに、ネギとチーズを合わせました。小麦を感じながら、広がるネギとしらすの香りが絶妙です。

 また、「レーズンクリームサンド」(259円)も。豆乳とココナッツオイルを使っていて、ココナッツの風味がいいアクセントです。

 中でも、1番の人気は、「はっぱや食パン」(1斤432円)です。100%天然酵母によって生み出されたモチモチ感と、石釜で水分を逃がさず焼かれたパリパリ感は、食べ応え十分です。

 可愛いいキャラクターのパンもあります。米粒の形にした「米粉3兄弟」(3個194円)。豆乳と米粉が練りこまれ、柔らかい生地で小さな子どもでも食べやすくしました。

「ぱんだちゃんパン」(270円)は、中に自家製のツナポテトが詰まっています。シンプルで毎日食べても飽きない味です。

 中でも人気が、お店の看板犬のれいちゃんをモデルにした「れいちゃんパン」(270円)です。黒ゴマ風味の生地の中に、クリームが入っています。

姉・稚隼さん:
「(クリームは)豆乳で作っているのであっさりと。れいちゃんパンを目指して来てくれる方もみえます」


 こうした子供向けのパンには、牛乳や卵を使っていないため、アレルギーを持つ子供でも安心して食べることができます。まさに、親子にうれしいパンです。

■イートインスペースは親子に嬉しい畳敷き…子供が遊べるキッズスペースも

 この店の魅力は、パンだけではありません。親子に支持されるもう一つの理由は、店のホスピタリティです。畳敷きがうれしいイートインスペースに、絵本やおもちゃのあるキッズスペースや授乳室まで。おばあちゃんの家に来たようなホッとする和の雰囲気です。

女性客:
「こんな遊べるスペースがあるなら、よし行こうって。授乳スペースとかも」

別の女性客:
「畳っていうのがまたいいです。(家に)帰ってきた感がある」

 姉の稚隼さんは、助産師をしていた時、母親が赤ちゃんを連れて気軽に出かけられる場所が少ないと感じ、お母さんも安心して寛げる場所を自ら作りたいと考えていました。

 妹の麻菜さんは、もともとパンの店で働いていたこともあり、出産を機に去年の夏、姉妹でこの店を開きました。元助産師の姉と母親となった妹が、理想の形を求めて作ったパンの店は、親子に心地よく、おいしいお店でした。店を切り盛りする娘たちを見て、両親は…。

有三さん:
「いいですね、嫁も頑張っていますし。本当に『かぞくのパン はっぱや』です」

和枝さん:
「今後、2人が努力して仲良くやってくれるんじゃないかなって。陰ながら応援しています」

■「畳スペースでベビーヨガなども」…“かぞくのパン”の夢

 午後4時。閉店を前に、ほぼ全てのパンがなくなったところで店じまい。将来について、稚隼さんは「畳スペースで、ベビーヨガや産後ヨガをやりたい」。麻菜さんは「美味しさを追求するために、石釜や天然酵母について更に勉強したい」とそれぞれの夢を語ります。

「かぞくのパン はっぱや」は、愛知県西尾市楠村町です。日曜と木曜が休日です。